硬化
解散後、いつも通りに眠りにつきまた早朝に目覚めて訓練に向かう。
今日は昨日とは違い、アイラさんとランはいなかったのでそのまま砂浜に出る。
朝4時だというのにすでに太陽はてっぺんに到達しており昼間のようである。
残念ながらダンジョン内は基本的に時間の概念がないので基本的にはずっと太陽はあの位置である。
日焼けするには持って来いかもしれないが残念ながらダンジョンの太陽では日焼けが出来ない。
どういう原理なのかは不明だがダンジョン内では日焼けの心配はないのだ。
まぁそれでも暑い事には変わりはないのだがよくわからない。
さてそんな事はどうでもいいのだが、昨日は試せなかった届いたスキルを仕様する。
『硬化』
・自身の身体を硬化する。
というシンプルなスキルなのだが単純に防御力も上がるので人気のあるスキルだ。
問題点としては全身硬化すると動けなくなる点と位なもので非常に使い勝手の良いスキル。
なぜこのスキルを得たかというといい加減に『電気操作』を使ってダメージを受けるのが嫌になったからである。
これを使えば大丈夫ではないかと考えたのだ。
「でもこれ一緒に発動出来るの?」
俺が『硬化』してる様子を見て訝しそうに話しかけてくるシトリー。
「そこが問題なんだよ」
さっきもいった通り全身を硬化すると動けないなる。
つまり電気を纏っている段階では硬化することは出来ない。
足で踏み込んだ瞬間に硬化を発動する必要がある。
「昨日から練習してるんだが硬化するのも時間かかるんだよな」
まだレベルが低いせいなのかもしれないが硬度、硬化速度にまだ難があった。
まず硬度なのだがしっかり測定したわけではないが鉄よりも柔らかい。
そして硬化するのにまだ5秒位掛かってしまう。
5秒と言えば大した事は無さそうに聞こえるが電気を纏って突進している状態では5秒では間に合わないのだ。
電気纏の状態で触手を動かせているのは『思考加速』による恩恵が大きく、このままではぶつかったあとに硬化する間抜けな状態になってしまう。
「練習といってもこれは恐らくレベル上げるしかないんだよな」
「まぁそうでしょうね…あなたの適正が高ければいいけれど」
「むぅ…」
そしてもう一つの問題だがこのスキル結構魔力を食う。
全身硬化をするとレールガン1発の半分くらいの消費だった。
あまり無闇に練習することも出来ず、今は片手を硬化させて地面に叩きつけるという感じで使用している。
触手と同じように一度硬化させてしまえば使っている間の消費はない。
ちなみに触手も硬化することが出来たのは朗報だった。
これで攻撃力が格段に上がる。
まぁ何にせよしばらくは使ってスキルレベルを上げるしかなかった。
「そのまま発射する奴ならやれそうなんだけどな」
「そんな無茶はしてほしくないのだけど?」
「俺だって射出されるのは怖いからな…できれば使いたくない」
全身硬化状態でレールガンの弾のように射出することは恐らく問題はない。
問題はないが…受け身も何も取れず発射されるのは恐怖でしかないのでこれはできればやりたくなかった。
「そうは言ってもあなたは普通にやりそうだけどね」
「信用ないなぁ…」
シトリーに突っ込まれるが、確かに普通に誰かが危ないという状況であれば普通に使っていそうなので予想は合っているかもしれない。
昨日もずっと硬化スキルを使用していたのだがスキルレベルは実践で使った方が上がりやすいと思っているので訓練も兼ねて使用している。
そんな訓練を続けているとソフィアに続いてアイラさんとランもやってきた。
「朝早いですねぇ」
「習慣みたいなもんなんで、そちらも無理しないでいいんですよ。昨日は疲れたでしょうし」
「いえいえ、早くスキルを使いこなさないといけないので」
「私もまだまだ実験中なので!」
2人は昨日覚えたスキルの実践に来たようだ。
あの後、アイラさんは沙月から大剣を渡されており今日はそれを担いできていた。
「こう見ると凄いですね」
某ゲームでもハンターが大剣を振り回していたがそれに負けず劣らずのデカさがあった。
「以前はもう一回り小さかったんですけど『軽量化』のおかげで重さがほとんど気にならなくなったので…」
恥ずかしそうにいっていたが片手で自身の身の丈ほどの剣を持っているのはなかなかに迫力があった。
「しかも全部ミスリルで作ったんですね…」
「そうらしいです。詳しい事はわからないのですけどとても凄い鉱石なんですよね?」
刀身がきれいな青みを帯びている両刃の剣となっていた。
一部別の鉱石も使っていると思われるが刃部分は完全にミスリルで作ってあるようだった。
「俺のつけてるガントレットもミスリルは使ってあるんですけどね。残念ながらあまり活かせてないんですが」
魔法ととても相性の良い鉱石なのだが残念ながら俺は魔法を使う事が出来ない。
サキに色々教わってみたのだがどの魔法も適正値が低いみたいで覚えられていない。
「まぁ早速なんで試しますか」
「お願いします」
昨日と同じように二手に分かれて訓練を行う。
『軽量化』と『重量化』の使い分けがまだ上手くできないみたいで途中で剣をふっとばしていた。
対面練習をしていなくて本当に良かった。
型自体は使っていた期間もあってかそれなりに様になっているようなので途中からはスキルを使わずにまずは立ち回りが可能かどうかやってもらった。
「難しいですね」
「スキルは基本的に反復して覚えるしかないので仕方ないかと」
「そうなんですが…娘の動きを見てしまうと…」
「いやぁあれは気にしたら負けかと…」
ランの方はというとすでにソフィアと組み手を行っていた。
昨日は型稽古をしてたはずなのだがすでに体得してしまいそのままソフィアと立ち会っていた。
しかもすでに『液化』を使いこなしているようで身体をムチのようにしてソフィアに攻撃をしかけていたりしていた。
「天性の運動センスを持つっていわれてただけありますね…」
「我が娘ながら凄いですよね…」
女性に似合わぬ長身を持っている上にあの身体のバネ…まぁ今はスライムだけど、自分の身体を使いこなしていると言わざるを得ない。
「まぁこっちはこっちで地道にやりましょう」
「わかりました…」
その後はとりあえず、色々やってとりあえずスキル無しで振り回す位は出来るようになっていた。
『飛刃』スキルを使ってみたのだが現状使うと自爆しそうだったのでしばらくは使用せずにという事になった。
「ポンコツですみません…」
わかりやすく落ち込んでいたが…
「始めたばかりですし気にしないで良いですよ。明日も付き合いますから」
「ありがとうございます」
そういって大剣を手に取り戻ろうとするがスキルの使用を誤ったのか体勢を崩し転びそうになったアイラさんを支える。
「大丈夫ですか?アイラ」
「えっ…ああ大丈夫です。ごめんなさいね…まだスキルの感覚が慣れて無くて」
そういって起き上がるアイラさん。
「最初は片方だけにした方がよかったかもしれないですね」
『軽量化』と『重量化』の相反するスキルを一気に覚えたので扱いが大変なのかもしれない。
「いえ…頑張ります」
2人の方に目をやるとソフィア側はすでに本気で模擬戦闘してるように見える。
その証拠にソフィアはすでに『鬼化』を使用していた。
なるほど腕に質量を集めてデカくして殴ってるのか…使いこなしすぎでは?
対空も含めて対処しているのを見てしまい短時間ですでにソフィアレベルにまでなっていた。
「いやいや、やばすぎだろ」
自身の身体に空気を送りこんで風船のようにしてソフィアの打撃を防いでいた。
距離をとったソフィアにも中距離位までなら伸びる腕をムチのように使っている。
遠心力も加わって砂浜をえぐるレベルの攻撃を仕掛けていた。
「私もあそこまでやれるようになるんでしょうか?」
「実際、あのレベルは相当ですね…レベル差もあるのに若干押してる気がします」
現状ソフィアの方が遥かにレベルが高いはずなのだが…。
夢中になっている2人を放置していると朝食に遅刻しそうなのだが声をかけても2人とも集中しており全く反応がなかった。
「仕方ないなぁ」
両手を硬化状態にして2人の間に入り双方の攻撃を受け止める。
「2人ともそろそろ朝食だからストップだ」
攻撃を止められた事で落ち着いたようで2人とも驚いた顔をしていた。
「えっ!?あっはい。わかりました」
「すみません。気付きませんでした」
「ヤバイくらい白熱してたな」
「そうなんですよ!ランは凄いです!」
「いえいえソフィアさんのおかげですよ」
2人とも興奮した様子だったので話を聞きながらホテルに戻ったのだが…。
「あそこになんで割り込めるの…?」
遠く離れて聞こえてはいなかったがアイラが何か呟いていた。




