制圧 沙月side
目を閉じ気絶したフリをしている私にどんどんと足音が近づく。
これから起こる事を想像しないようにしてもやはり怖い…身体が震える…。
でも私には皆を巻き込んだ責任がある。
正直、全世界に公開してしまった情報の為にここまでするのは予想外であった。
確かにミスリル武器の生産については後塵を期すかもしれないがそれだけの事。
戦争中でも無いのだから自国が危機に瀕することもなく一歩先をいかれるだけの事だ。
しかもドロップ数から考えてもそこまで影響が出るのは大分先になるのは目に見えている。
それなのに出遅れる訳にはいかないからと相手の生産拠点を潰そうなんて物騒な手を取ってくるとは完全に読めなかった。
なによりも実力行使に出るまでの判断の早さが異常だった。
まだ公開して10日である。
外交ルートでの交渉をした結果というのなら話はわかるがロシアはまだ一切そういったことをしていない。
脳筋過ぎて読みきれなかった自分に腹が立つ。
スキルによる制作がバレている以上、後は誰がスキル持ちかという話になる。
ここの基地にいる全員を連れて逃げるのは不可能だ。
氷川さんを尾けていた以上何かしら掴んでいたには違いない。
さっきの話を聞くに目的はスキル持ちの確保が目的のようだった。
しかし、私が目的の人物だったとしても彼らには判別はつかない。
確実にミレイさんとカナタさんも一緒につれていかれるだろう。
船、飛行機などの逃走手段を取ったとしても最悪アイテムボックスの中身を吐き出せば逃げる事は出来る。
その時にカナタさんがいれば空でも海でも脱出することは可能だ。
だから私は意識だけは飛ばさないようにしなければいけない。
どんな目にあったとしても生き残ることだけは諦めない。
「おい!何してんだぁ?」
その声を聞いた瞬間に身体を起こし目を開けその声のする方を見る。
本当になんてタイミングで帰ってくるんですか…まだ帰宅までは時間がかかると踏んで諦めていたのにこんなタイミングで…ほんとに…私の王子様は…。
「どういう理由かは知らないが手を出した以上は覚悟してもらうぞ」
今まで見たことがないほどに怒気を露わにしているアキラさんがそこには立っていた。
「なんだ?お前は?」
アレクサンドルは、アキラさんを威圧するように声をあげた。
「サキあっちの2人は頼んだ。カレンはミレイとカナタを頼む」
それを無視してカレンとサキさんに指示を飛ばす。
一度喧嘩を売ってきたのに自分の方を見ようともしない、その態度に苛ついたのかアキラさんへと距離を詰めるアレクサンドル。
そして拳をアキラさんへと振り下ろす。
「アキラ!!そいつのレベルはごじゅ…」
はっと思い慌てて叫ぶが…アキラさんはアレクサンドルの攻撃を軽く躱していた。
「沙月大丈夫か?いま片付けるからちょっと待ってな」
私の方を向いて優しく微笑むアキラさん…。
それだけで涙が溢れてしまうほどの安心感があった。
完全に虚仮にされた事に腹を立てたのか顔を真っ赤にして今度は蹴りを繰り出す。
しかしそれも後ろに下がって躱すアキラさん。
私には蹴りを繰り出した結果しか見えないのだがアキラさんは完全に躱していた。
「さっきから何がしたいんだ?木偶の坊」
「貴様!!!!」
煽りに煽ったせいかさらに怒って今度はアキラさんの腕を掴みにかかる。
しかしそれも躱す。
「それを待っていた…」
アキラさんはその腕を掴み返し自身の身体を持ち上げ頭上へと飛ぶ。
何が起こったのかわからず呆けているアレクサンドルの頭を両手で掴むと耳に親指を突っ込む。
「死ね…」
声は聞こえない…でも小さく呟いたその表情と口の動きから察する事が出来た。
アキラさんの言葉と共にアレクサンドルは目を見開きそのままその場に倒れた。
「普通の人間だったら死んでるだろうに…まだ生きてんのか」
まだ身体がピクピクと動いていたアレクサンドルを器用に頭上に蹴り上げる。近くに転がっていたミレイさんの折れた槍を手に取り地面に突き立てる。
「じゃあな」
そしてその槍に向かってアレクサンドルの身体が落ちてくる。
普通は頭から落ちてくるものだがどう調整したのか槍は正確にアレクサンドルの心臓を貫いた。
そしてアレクサンドルは血を吐き動かなくなった。
その光景にサキさんと相対していていた相手は信じられない物を見たように目を見開き状況を受け入れられずにいた。
「我が国の最高レベルの探索者だぞ…」
「こんなレベルだけのゴミに用はねぇよ、次はお前たちだ」
「おい!逃げるぞ!」
一人がもう一人に声をかけるが…
「おせえって…お前たちはレベル低いんだな」
一人が呼びかけた時にはもうひとりは先程の私のように地面に転がっていた。
そしてそのまま裏拳を喰らいもう一人も同じ運命となった。
そのまま私の方に近づいてくる。
「大丈夫か…」
「ええ、ポーションを飲んだので被害は服位です」
「そうか…よかった…無事で…」
敵がいなくなり私の無事が確認出来た事で張っていた気持ちが切れたのかその場で呼吸が乱れるアキラさん。
「はぁ…はぁ…悪い…あいつは加減できなかった…」
先ほどまでの様子とは異なり顔色がかなり悪い…。
そしてそのまま倒れてしまった。




