襲撃 沙月side
本日は物資の搬入日なので昼前には探索を切り上げ戻ってきた。
頼んだ物資が届くのは嬉しいがこちらとしては頼まれていたミスリル武器の納品日でもある。
数の用意は完了しているがこれに関しては色々と説明もあるので渡す人に話す必要がある。
そんな時、索敵範囲に氷川部長の反応が入る。
生命感知のレベルが10になり『索敵』スキルに進化をした。
そのおかげで感知範囲も広がり個人の特定まで可能になった。
まぁ生命感知の時から正確とは言い切れないがそれなりに個人の判別はつけていたので今更かもしれないが…
しかし、氷川部長の少し後ろに知らない存在が3人ついてきていた。
「誰だろう?距離的には関係者じゃなさそうだけど…」
アメリカの納品は基地に直接行っているので担当者と顔をあわせる事はあまりない。
前回の転移石などやばそうな話は直接話しているのだが納品の受け渡しだけの場合はこちらに接触せずに物資の受け渡しだけで終わる。
日本はそういった体制が整っていないので氷川部長が直接受け渡しを担当しているのだが…
「警戒しといた方がいいかもですね…」
リビングに出て全員にその事を伝える。
それほど索敵範囲を広げてなかった事もあって氷川部長が到着する。
「なんか以前より疲れてますね…」
「業務が山積みでして、今日も受け取ったらすぐに帰らないといけません」
「1日位ゆっくりしていっても…」
「1日休むと仕事が2日分になって襲ってくるのでなんとも…」
「ハハハ…」
そんな雑談をしていると目視出来る範囲まで反応が近づいてきた。
しかしその姿は確認出来ない。
つまりなんらかのスキルで隠れている事が確定…つまり敵。
「全員戦闘態勢に移ってください!あそこに隠れてます」
私が氷川部長の後方を指を差し指示を出す。
すぐにカナタとミレイが飛び出す。
ダンジョン外なのでまともにスキルは使えないが物理であれば問題ない。
大きめに作成した槍2本を姿は見えないが目標に向けて2人で投擲する。
そしてその槍は恐ろしい勢いで目標に向かって着弾するはずだったのだがその槍は透明な何かに阻まれ弾かれた。
しかし目的は果たされたようで透明な何かが壊れ3人の姿が現れる。
「おいおい、まさか気付かれるとはな」
「どうやら高レベルの探知スキル持ちみたいだ」
「ちっ仕方ない実力行使に移行する、頼むぞ」
「仕方ないな…」
翻訳スキルのおかげで違和感なく聞こえるが恐らくロシア語だろうか明らかに髪色も含め日本人はなかった。
ここで喋っているロシア語もフェイクかもしれないが…。
大柄の男が前にでてくるがすぐにスキルの確認を行う。
そこに表示されたスキルに驚く。
「嫉妬持ち…」
これで完全に相手がロシアだと確信が持てた。
そう呟いた時に私に向かってその男が突っ込んでくる。
私は反応することが出来ず前にいた氷川さんが身体を張って庇ってくれた。
「大丈夫ですか!?」
「けっ!めんどくせえな」
氷川さんの2倍はありそうな巨体を受け止めたせいで氷川さんはかなりのダメージを受けたようで口から血がでていた。
どうやら衝撃で内臓が傷ついたようだ。
「障壁!!!」
もうなりふり構っていられる状況でもないため障壁を張った。その男との間に張られた障壁に男は不快な表情を浮かべているが…そこに向かって思い切り拳を叩きつけた。
ダンジョン外の為、ダンジョン内と同じような強度が無いことは覚悟していたが障壁はあっさりと破壊された。
「うそ…」
そしてその拳は、勢いは多少抑えられたがこちらに向かってくる。
「これくらいなら!」
そういって氷川さんがその拳を受け流す。
受け流されたせいでバランスを崩し相手は前のめりに転がった。
何が起きたかわからず固まっていたミレイとカナタもこの事態にようやく我に返りこちらに向かって走ってくる。
私と氷川さんはその男から距離を取り新たに障壁を貼り直す。
そして私とその男との間にミレイとカナタが駆けつけ守るような陣形となる。
ソフィアがいればあちらの2人を確保してもらうように動けたのだが残念ながらソフィアはここにはいない。
(ソフィアさん!すぐにこっちにこれますか?ロシアの襲撃です)
(わかりました!?すぐに向かいます!)
先ほど警戒した時にすぐに連絡しておくべきだったと後悔する。
こちらの戦力を過信して完全に油断していた。
まさかこんな奴を投入してくるとは予想外だった。
先ほど突っ込んできた男は、アレクサンドル。
レベルは56レベル。
固有スキルは嫉妬、他のスキルに関してはステータスアップ系位なもので警戒する必要は無さそうだった。
その男はこの一合でこちらの戦力を把握したようでゆっくりと起き上がりこちらを威圧する。
「先手必勝のつもりだったが今の感じなら大したこと無さそうだな」
こちらを完全に見下しゆっくりと近づいてくる。
残りの2人に気を配りたい所だがそんな余裕はない。
そこにミレイさんとカナタさんが突っ込むがダンジョン内なら色々と出来るかもしれないがダンジョン外では搦め手が使えない。
ミレイさんの魔眼もレベル差のせいか効かなかったようだ。
「魔眼持ちか…残念だけど効かねーな!!」
そういってミレイさんを槍ごと腕で吹き飛ばす。
さすがに15レベル以上差があると力がとんでもないようでミレイさんも踏ん張れずそのまま吹き飛び以前、住んでいた宿舎に飛んでいってしまった。
無情にも折れてしまった槍がその場に転がる
「ミレイ!!」
ミレイさんの様子を見てカナタさんも竜化を発動させて突っ込む。
しかし相手はその様子を見ても動じる様子はない。
今度は、腕を振り上げそのままカナタさんに叩きつけた。
腕でガードはしたが受け止めきれずそのまま地面に倒れ込んでしまった。
「しかし、綺麗所が多いな…どれが目的の人物かしらないが全員連れていけば文句ないんだろ?」
アレクサンドルが仲間の2人に話しかける。
「ああ、対象者を確保しろとの命令だからな誰かわからない以上全員連行する」
「ってことは帰りはむさ苦しい男だけじゃなくてお楽しみできるって訳だ」
下卑た表情を浮かべこちらを見てくる男に不快な感情を抱くが現状どうにか出来る策が思いつかない。
ソフィアさんが来たとしても太刀打ちできるとは思えない。
そんな事を考えているうちに私の眼の前まで迫る。
こうなったら…アイテムボックスから私はあるものを取り出し手に握り覚悟を決める。
「まぁそれなりに高レベルみたいだし死にゃしないだろ」
そういって先ほどみたいに受け流されるのを警戒してかアッパーのようにこちらに殴りかかってきた。
巻き込まないように氷川さんを突き飛ばしその攻撃をモロに受ける。
意識が飛びそうになるがかろうじて残った意識をフル動員し握りしめていたポーションをつかい身体の傷を回復する。
そして障害物がなかったせいもあるが身体は地面へと打ち付けられた。
衝撃と共にダメージを受けたが回復中のダメージはそのまま一緒に回復される特性を見越していたので傷に関しては大丈夫だ。
ダメージを受けたのは服くらい。
お気に入りだったのだけど仕方ない。
こうなったら下手に抵抗せずに連行されて脱出方法を探った方が良いと計画を変えた。
(ソフィア…やっぱり来ないで勝てる相手じゃない…とりあえず追跡に留めといて)
(そんな…でも…)
(いいから…私達じゃ勝てない)
(わかりました…)
ソフィアからは悔しい気持ちが伝わってきたがここは我慢してもらうしかない。
連れて行かれる過程で何かされるかもしれないが…はぁ…早く上げておけばよかったか…そう思い目を閉じた。




