パーティ結成
それは学生に決断するには重い選択だったと思う。
俺のように日々をいきる為だけになる探索者とは違い、日本を代表する探索者になることを彼女は求められていた。
「暁さんも探索者になるんですよね?」
事前に軽く話していたが、彼女から念を押されるかのように尋ねられた。
「まぁ君と違って大層なもんでもないけど探索者をやってみようと思ってるよ」
「なら一緒にやりませんか?」
「えっ!?」
突然の提案にこっちは固まってしまう。
「小林さんそれは・・・」
日和さんも驚いているようだった。
「暁さんも探索者になるなら一緒に組んで潜ってもいいですよね」
「俺は構わないけど俺のペースでは君に追いつけないと思う・・・」
「そんなことないですよ!」
彼女は自身満々に応える。彼女の固有スキルの詳細はわからないが、俺のスキルは明らかなハズレスキルである確実に足を引っ張ること請け合いである。
「俺のスキルは特攻スキル、しかもスライム特攻だ。スライムには10倍の攻撃力はあるが、それ以外への攻撃力は10分の1になるハズレスキルって言われてるスキルだよ」
「えっ!?」
「そんなスキルでは君の足を引っ張り兼ねないというより確実に引っ張るだろう。だから君は俺と組むべきではないと思う」
諦めさせるように沙月に伝えた。しかし返事は予想外のものだった。
「固有スキルなんて関係なく私はあなたと組みたいんです」
もう聞く人が聞けば告白と言われても仕方がない位の答えだった。
その勢いに負けて
(まぁ最初の頃だけなら問題ないだろう)
「一時的ということなら、組もうか」
了承してしまった。
「一時的でも構いません!こちらこそよろしくお願いします」
そういって沙月は頭を下げた。
黙って成り行きを見守っていた日和だったが
「まぁ当人同士が良いって言うならいいかぁ・・・」
やはり国が推す有力者をハズレスキル持ちと組ませたくなかったよな。
「問題なかったでしょうか?ハズレスキルなんかと組んでも・・・」
少し表情が曇っていた日和に対してこちらから問いかける。
「まぁ私はそもそもハズレスキルとかそういう括りは嫌いだったしそこは気にしてないわ。あなた達がもしかしたら、この停滞したダンジョン探索に一石を投じる存在になるかもね」
「ちなみに組むにしても、ある程度レベルが低い同士で組まないとレベル上がらないから、うちから出す探索者は今選定中だったんだけどね、どちらかと言うとそっちのが問題でね・・・まぁそっちに関しては今から断っておくわね」
そういって日和さんは自分の部屋なのに電話をしながら出ていってしまった。恐らくを気を利かせてくれたんじゃないかと思う。
二人になったこともあって沙月に話かけた。
「ほんとに良かったの?」
やはり世界でも有数の探索者になる可能性のある人物をハズレスキルと組ませるのは思う所があった。
「問題ないです!私はあなたと組んだ方がうまくいくって感じたので絶対に大丈夫です!」
自信たっぷりに言ってる様子に、まぁしばらく組んで無理そうならこちらからお断りしよう。そう思ってここは了承しておくことにした。
「ごめんね、おまたせ」
そういって日和が戻ってきた。日和は席に戻ると
「あなた達二人で組むことで了承もらったけど、しばらくは試用期間ってことで、もしかしたらこちらから誰か派遣することになるかもだからその時はよろしくね」
説得しきれなかったか、もしくはとりあえず実験的に組ませておこうってなったんだろうなってことが表情から察せられた。
「大丈夫です、絶対にうまくいきます」
その自信の正体がわからないが、そこまで言われて頑張らないといけないと思えてきた。
「じゃあ次は暁くんの方のかな?聴きたいことがあったんでしょ?」
「俺の聴きたいことはかなり現実的なことなので、さっきまでの話から落差がひどいかもしれませんけど」
「全然OKだよ、ってかほんとはそういう相談だと思ってたんだけどね」
「じゃあ遠慮なく、ダンジョン内のモンスターなんですけど・・・」
そこからは基本的なダンジョンの立ち回りやモンスターの出現、その他ダンジョンに関する基礎的な事を二人で教わることになった。
座学で学んだことはあくまで机の上のことで、やはり現場の研究者である日和の説明は比べ物にならないほど詳しい情報が含まれていた。
「まぁ私は、好きで現場で直に探索者と関わってるからね。色々と入ってくる情報があるんだ」
「色々わかりました。本当にありがとうございました」
二人で頭を下げ礼を言う。
「いいっていいって、これも仕事ってか趣味みたいなもんだから。これも私の研究につながるからね」
「日和さんってなんの研究をしてるんですか?」
ここまで聞いておいてなんだが、日和の研究していることに興味が湧いた。
「私の研究テーマは探索者そのもの。ダンジョンやドロップ品を研究してる人もいるけどね。私はこの世界にダンジョンが現れ、そして変化していく人類そのものに興味があるの。だからあなた達みたいなレアケースは、私にとっては極上の研究材料ってこと」
その時の日和の顔は今までの緩い感じの女性ではなく、獲物を狙うハンターのような顔になった。
何かを見透かされたような感覚に陥り二人で身震いすると、すぐに元の緩い表情に戻り
「まぁそういう訳だから、気にしなくていいよー。後、明日は9時にまたあの会議室に集合でお願い。色々とやることがあるから」
そういって今日は解散となった。
色々あった事もあって、そこからはお互いに部屋に案内された。
日和の部屋と同じ作りのようで必要な設備はすべて揃っていた。
洗濯機等も備え付けされておりここでしばらく過ごすのも問題なさそうだった。
色々考えながらも身支度を済ませ明日に備えて早めに就寝することにした。




