宣言
その内容については現状の高魔力値を持つ者たちについてである。
現状は魔力値の有用性はダンジョン外では魔石へのエネルギー充電、ダンジョン内でのスキルや魔法の使用する上限回数が増えるというメリットがあるが、高魔力値であっても現状は代用が効くというのが世間一般での認識だ。
一人で発電機の燃料を補充できるっていうのは、確かにすごいことではあるがそれは魔力値の低い人間を集めても補充することはできる。
ダンジョン内のスキル使用についても回数が使えることはメリットではあるが代えが効かないというほどではない。
そんな状況ではあるものの当事者の彼女にはある問題が伝えられていた。
「発見されたスクロールの中に高魔力値持ちじゃないと使えない物が発見されているとのことで高魔力値持ちの価値が世界中で見直され始めているって聞きました」
そんなことは聞いたことがなかったが恐らくまだ世間には降りてきていない情報なんだなと認識した。
「そう、まだ一部でしか知られてないんだけどそういうスクロールが発見されたの。そのスクロールは魔力値Bじゃないと使用することができないスクロールだったんだけどまぁって事はってことになるわよね」
今後、魔力値Aしか使えないスクロールが発見されることが予想されるそのスキルによっては、高魔力値持ちの価値は跳ね上がることになるだろう。
「ちなみにそのスキル名は超回復ってスキルでね、死んでなければ傷でも病気でも魔力を消費すれば自身を回復するスキルだったんだけど、これを聞いただけでも魔力値制限の掛かったスキルの強力さがわかってもらえたかしら」
聞いただけでもとんでもないスキルだということがわかる、つまり制限のかかったスキルは恐らくそういった有用なスキルが多い可能性が高い。
「前提として国はダンジョンを探索することを推奨しているということをわかっている?」
「そうですね、探索者への支援の話を聞いてそれはわかります」
探索者への支援は国を挙げてという言葉が相応しく探索者になれば恐らく生活する分には何不自由ない生活ができるということがわかった。ダンジョンが出現してからホームレス等が激減したというのは、このあたりが要因になっているのだろうということが今日わかった。
じゃあ、なぜそれが国民に浸透していないのかということが疑問点である。
ダンジョンに関する情報を仕入れていなかった暁ではあったが世間にはそういった情報が降りてきておらず、一般人はそういった施策があること自体しらない人が多いのが現状だということだった。
「国が推奨しているとは言ってもダンジョンでは命を落とすことがある。いわば危険地帯に国民を向かわせる訳だから、国としては支援はするけどそれを国を挙げて宣伝することはできないのよ」
なるほどと納得がいった答えだった。ダンジョンは法の力が及ばない無法地帯といっても過言ではなく、けがをしたり死んだりしても自己責任となる。そんな場所に国を挙げていかせようとしたら国民からの反発は免れないだろう。だからなりたい人が調べれば支援等がわかるようにしているのが国としてできる最大限のことなのだろう。
「なぜ、ダンジョンの探索を推奨しているのかは、ダンジョンの有用性を考えればわかるわよね?」
その問いかけに二人で頷く。
すでに人類はダンジョン資源にかなり依存している、まぁそれも当然で際限なく使えるクリーンエネルギー、しかもそれは誰の土地でもなく自国内で供給が可能。ダンジョンからとれるのはそれだけではなく、一部ではすでに流通しているそうだが、モンスターが食材を落とすこともあるそうで、食料自給率の低い我が国ではその恩恵は計り知れないだろう。
「高魔力を持ってる人はできる限りダンジョン探索者になることを現場で勧めることになってるの、もちろん拒否権もあるし絶対にならないといけない訳ではないんだけど彼女の場合はちょっと特殊でね」
それは彼女が日本に二人しかいないAランクの魔力持ちだからだろう。
「あなたと同じ魔力値持ちは日本には一人しかいないんだけどこの方はかなり高齢の方でね。探索者になるのは無理だったの、だけどあなたはまだ若いし、さらにいえばあなたの固有スキルもあなたを探索者にさせたい理由の一つね」
「もしかして俺は席を外してたほうがいいですか?」
かなりデリケートな個人情報である固有スキルの話になったので席を外そうとしたが
「いえ、暁さんはいてください、正直不安なので」
そういって沙月は暁の袖を掴んでいた。
「小林さんがそういうなら話しちゃうけど、ちなみに、あなたの固有スキルについても知ってるのは私と氷川部長だけだから心配しないで。あなたの固有スキル【叡智】は今まで見つかったことがない超レアスキル。そしてその効果は明らかに規格外の性能。あなたの魔力値でしか扱えないそのスキルの成長性は計り知れない。だからこそあなたには探索者になってもらいたいっていうのが国としての考えね」
それを聞いて沙月が考え込んでいた。
まだ高校3年生に命の危険がある探索者になれという選択は重い、しかし一点気になってることがあった。
「親御さんには相談したの?」
この状況になっても親御さんの姿がないのが気掛かりだった。
そう聞くと言いにくそうに沙月は答えた。
「あっ、えーと、親は3年前の災害で亡くなりました」
それが答えだった。3年前の災害は俺も被害者の一人だ、いや日本で被害にあってない人間はいないだろう。大なり小なりで被害は受けている。
沙月には相談できる人がいなかった。だからこそ今日あったばかりの赤の他人である暁でもいいから今回の話を聞いてほしかったんだと思った。
「それは悪いことを聞いた、すまない・・・」
沙月に向かい頭を下げる。
「いえ、3年前の災害は世界中のみんなに降り掛かったことですから・・・」
恐らく世界中であの災害の被害にあってない人間の方が少ないのでは無いだろうか、眼の前に日和も思い当たる節があるようで表情に影が出来ていた。
しばしの沈黙が流れるが
「私、探索者になります」
沙月は沈黙を破るように宣言した。




