英雄はお断り
トーガは悔しそうにミラ・ジュンを睨み付けて言った。
「ちくしょう、お前と出会わなければうまくいったのに」
「いえ、おそらく、それはないでしょう、ボクよりもすごい人に捕まっているかもしれないわ」
その言葉にトーガの仲間達は頷く。
「それは、そうだな、トーガ、お前はそれを恐れて、委員会の方には顔を見せない様にしてたのだろう」
「そうだよ。委員会の事務所には強い魔法がかけられている場所があるから入ったら捕まるから」
そのことを聞いたトーガは肩を落とした。
「ミラ・ジュン、これから、我々はどうしたらいいのですか」
トーガの仲間が訊ねると、彼女は言う。
「そうですね、あなた達は、此処から近い委員会の事務所へ行って、彼と共に犯した罪を告白して下さい」
「わかりました」
彼らはミラ・ジュンに頭を下げて、トーガが逃げない様に取り囲み、そこから離れ様とする。
「ちょっと、待って」
仲間に囲まれているトーガはミラ・ジュンを見た。
「どうしたのですか、トーガさん」
「誰が、レガルタの魂を天昇させたか、説明が必要だろ」
そのトーガの言葉にミラ・ジュンは焦りだす。
「どうしよう、お父さん達に知られると、記憶封じが解けていることがわかってしまう」
「どうして、焦るのだ。ミラ・ジュン」
アックスが気になったので訊ねると、少し落ち着いているジュンがミラに変わって説明した。
「僕達が勇者様と賢者様の間に産まれた子供だと、世間に知られれば、多くの王侯貴族がミラを狙うから、それを防ぐ為に記憶封じをしていたの、だから、この事が世間に知られたら、ミラは」
「それは、なんとかなると思うよ」
トーガの仲間の一人が言った。
《あ、そうだった》
ミラが呟くと、ジュンもある事を思い出す。
「そうか、彼女は、断る事が可能だった」
アックスもその事に気がついた。
「あなたも知っているのですか」
「あぁ、金の称号を持っているから、ある程度の地位を与えられているから、王侯貴族もそう簡単に手をだせない事だろ」
訊ねられたアックスは笑う。
「そうですね」
その仲間も笑った。
「でも、僕達が、いえ、ミラが魔王を天昇させた事をうまく誤魔化さないと」
ジュンが言うと、トーガは叫ぶ。
「お前達、英雄になりたくないのか」
「どのみち、知られたら、困るので」
ミラ・ジュンは苦笑した。
「英雄になりたくないのか、どうしてだ」
トーガは彼女を睨んだ。
「此処を探していたのは、封印をさらに強化するのがワタシタチの本来の目的だったのだから」
落ち着きを取り戻したミラが言う。
「それが、本来の目的か」
トーガは肩を落とす。
「だから、彼女達は封印強化にこだわっていたのか」
仲間達も苦笑した。
「さぁ、行こうか、トーガ、罰を受けに」
彼らはトーガの腕を掴み彼女を見る。
「それでは、名も知れない天才魔導師が魔王の悪き霊体を昇天させたって言っておくよ」
「ありがとうございます」
ミラ・ジュンは頭を下げる。その様子を見て、彼らは委員会の事務所へ向かう。
「さて、メリメさんの所へ行きましょう」
ミラ・ジュンはアックスの顔を見た。
「そうだな、ミラ・ジュン」
アックスとミラ・ジュンは笑い合って、その場を離れる。




