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二学期早々

さて優大の反応は……?


9話です

「……」

「……」


 萌の部屋で優大と萌二人の静寂が流れる中、萌は自分の発言にいたく後悔した。

 (言っ……言っちゃった~~~~。どうしよどうしよっ!? ついに優君に言っちゃったー。今の告白してるも同然っぽくなかった!? 節操のない女と思って引いてないかな~、引いてないかなー。けどもう後には引けない……)


 彼女はどきまぎしながら、彼の表情を見る。


「…………い」


(い……?)


「…いいよ別に?」


 優大はケロッとした表情で至って普通に言った。萌は彼のいつも通りの対応に逆に驚いてしまう。

(あ、あれー!? 至っていつも通り! 通常営業! なんで、どうし……)


「はっ!」


 そして彼女はあることに気づく。

(……そっか。あの言葉じゃあ結局いつもの私達と変わりがないじゃない。そうじゃん! あーん、もーー! 私のバカバカバカ~~~~!)

 そう萌が自分一人で悶えていると、優大がデリカシーなさそうに言う。


「萌、あのさー次にこの問題を教えてほし……」

「もう知らない!!」

「あれー??」


 彼女はムーとほっぺを膨らまし、彼の方とは逆方向にぷいっとソッポを向いたのだった。しかし彼の本当の気持ちは、

(萌があんな可愛い顔してあんなこと言ってくるんだから……。幼馴染だからってあれは卑怯だよ……)

 と今でも止まらない鼓動を気づかれないように自分の心臓を押さえながらそう思ったが、彼女の知るよしもないのであった。

 そして日があいて、気づけばもう夏休み一週間前にさしかかる時、上城家からどこからともなく悲鳴が聞こえてくる。


「ひーーーーーーーーっ!!!!」


 声の主は藍であった。仕事を終え、久しぶりに家へ帰ってきた彼女は溜まりに溜まった夏休みの宿題を頑張って消化している最中だった。


「終・わ・ら・な・い~~」

「姉さん、ここはこう解くのよ」

「頑張れ藍! 今日までに終わらせる宿題はもう少しだ」

「わーん!!」


 藍は半泣きで練習問題にいやいや齧り付いている。そして立って上から言ってくる優大に不服そうな目を向けながら彼に問う。


「それより優大こそ宿題しない訳ー!?」

「もう優君はもう終わってるわ」

「えーー!? いつも私と夏休み終わるぎりぎりまで張り合っているのにーー! この裏切り者ーー!!」

「はっはっはーー! 藍よ参ったかーー!?」

「…いや別に参った訳じゃないけど」


 ただただ冷めたテンションで言う藍であった。


「それより見たか~、萌のイメチェン? 驚いたなっ」

「えぇ、そうね」

「クラスのやつらが萌の変わりようを見たらさぞビックリするだろうな! 腰抜かすなこれは!!」

「言い過ぎよ。私と双子だもの。そこまで驚かなんじゃない? けどまあそうね、初めぐらいは周りの脚光を浴びるんじゃない?」

「……///」


 そして夏休みを終えて、新たな学期が幕を開ける。そしたら彼ら三人のクラスで、わーーっと賑わいだ。


「えーー?! この娘本当に萌ちゃん!!?」

「きゃーー!! めっちゃカワイーー!!」

「藍ちゃんそっくりねーー!」


 藍の予想通りクラスのみんながこれでもかと言うぐらい騒ぎ始めた。わーわー騒いでいる萌の方を傍目に優大は傍観者の如く眺めていた。

(……良かったな萌、周りから喜んでもらえて)


「ようっ」

「おう、村上……!」


 彼の無二の親友である村上がてくてくと彼の傍に歩く。


「いやー、君の幼馴染は大層人気者ですな~」

「いやー、それほどでも///」

「お前のことを褒めたんじゃないぞ?」

「けど幼馴染のことを褒めてくれるのも嬉しいものだよ」

「ふ~ん……」


 朝からコーヒーを飲んで、降ろしたその缶を指でカンカンと鳴らし始める。


「……? どうかしたか?」

「ん? あー。いや、萌ちゃんは今まさに男子からの注目度が爆上がりだな~と思って」

「そりゃそうだろっ。幼馴染の僕が言うのもなんだが、元からめちゃくちゃ可愛いからな。顔を見せるようになったから、やっとその真の姿に周りが気づいた訳だ!」

「うんまあ、そうだな……」

「うんうんっ」

「これからは学校の男子から注目を浴びるわけだ」

「うんうんっ」

「それじゃあ、男子から告白もたくさんされるわけだ」

「うんうん…………え?」

「だってそうだろ? あんなに可愛い子男子がほっとく訳ないだろ? 寂しいなー、彼女が我々の元を去って行くのが……」

「ま、まさか……っ。萌は単に髪を切っただけだぞ? 性格まで変わった訳ではー……」

「男は外見で結構女子を判断するからなー。あんだけ変われば告白をする輩も増えてくるだろうなーー」

「…………」


 村上はちらっと優大の方を見る。彼はいたく戸惑った表情をしていた。


「で、どうして髪型変えたの?! 好きな人出来た??」

「きゃーー! 本当ーー!?」

「えとー……」

「誰だれーー!? このクラスの男子ー?」

「山本君、それとも川内君??」

「……」


 萌が周りからの質問責めに対応しかねていると、


「はいはーい。萌が困っているので、ここで質問ストーープッ!」


 優大が彼らから彼女の前を遮るように立つ。

(え? 優君……?)


「えー!?」

「居村のケチー!」


 彼は周りからのブーイングを浴びせられながら、ちらっと萌の方を向き彼女へ軽く微笑むのであった。そして彼女は不覚にもドキッとした。


「……」

「どうしたの藍? 険しい顔して?」

「ううん、別に……!?」


 その一連の優大の行動を見て、モヤモヤッとする藍であった。そして彼ら三人の行動を眺めた村上はニヤリとしながら小さく独り言を言うのであった。


「これはなんか一波乱起きそうだ」

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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