文化祭編 その1
文化祭が始まります
10話です
「おーい。こっちだ、こっちー」
夏休み終了直後、早々に始まる校内テストに生徒達が四苦八苦しながら、この山場をなんとか乗り越えた。そして学生一丸となっての年中行事である文化祭『ミナミ祭』が始まり、学校はいつもと違った活気のつき方をするのであった。
そしてその頃、優大・藍・萌三人のクラスでは劇の演目について議論しあっていた。
「おい、ここは藍さんがいるんだから、王道の『シンデレラ』だろう!?」
「なに言ってんだ!? 藍様だからこそ『眠りの森の美女』に決まっているだろうが?!」
藍の配役がどうなるかで主役をはりそうにないクラスの男子達が激論を繰り広げていた。彼らは一縷の望みをかけて、藍の相手役になりたいのである。そんな見え見えの男子達の下心を分かっている女子達は呆れかえって互いに言い合う。
「本当男子って馬鹿なんだからー」
「本当ー。自分がその顔で良い役になれると思ってるのかしらー?」
「ねーー」
そして熟考に熟考を重ねて議論をした結果、クラスの出し物は『白雪姫』となるのであった。演劇の演目が決まれば、次は役割分担だ。優大は舞台演出をし、脚本は萌。そして主役の白雪姫は藍になり、クラスの生徒もそれぞれの役割が決まった。そして藍が教壇に上がり、座っている仲間にかけ声をかける。
「じゃあーみんな。気合いれて行くわよー! 2-3ー! えいえいおーー!」
「えいえいおー!」
わーと皆で一丸となってだし物の練習に取りかかるのであった。
しばらくはテストもないので授業はあまり身に入らず、ほとんどの生徒達はもっぱら放課後での準備に気合をいれて、部活の合間を縫いながら仲間たちとわいわいする。
「でさー瞬がねー? 私の後輩と仲良く話してるの見てさー……」
「えー!? まじでー!?」
とまあこんな感じの色々と込み入った話がさも他人に聞かすような声で耳に入ってくるが、優大はあまりそう言った痴話話に興味がなく、いつも聞き流している。それよりも萌が作ってくれた脚本の修正を彼女と一緒にする。
「どうかしら?」
「うーん、ここがもう少し柔らかい表現の方が良いんじゃないか?」
「うーん、……じゃあこんなのは?」
「あー、なるほど。それなら悪くないな」
「なるほど。じゃー他に……こことかはどうかしら?」
「ここはー、うーん」
「何話しているの?」
「藍」
二人が近くで話し合っているから、藍は気になって傍に来る。
「おい、出演者は見るなっ」
「良いじゃーん。減るもんでもなし~」
「ダメだ! 芝居に影響されたら困るからな」
「えー、ケチー」
「おい、揺らすなー」
「……」
「じゃああらすじだけ教えてよ」
「それは有名だから分かるだろ?」
「脚色したところで良いからさ」
「……教えない」
「ケチー」
「あ、おい。そう言いながら上にもたれかかるなって!」
藍は優大の首と肩辺りに自身の体重を載せるから、そこに豊満な胸が当たる。そして彼は顔を赤らめながらあたふたする。
「姉さん……」
「何よ?」
「優君が困っているじゃない……。その辺でやめたら?」
「……ふーん、萌、言うようになったじゃない」
「……」
「……」
二人はバチバチとにらみ合う。
「おい、なんでそんなに機嫌悪そうに見合ってんだ!? 少し落ち着けって!?」
「……ほんと馬鹿ね、このでくの坊……」
「……」
「まあ良いわ。しっかりと台本整えといてね。でないと役に入れ込められないから。それじゃあ宜しく~」
「……何だったんだあいつ?」
「…………バカ」
そして脚本もできあがり、『白雪姫』の稽古が始まった。しかし……、
「うーん、違うなー……」
「えー…」
どうしても白雪姫の敵役である女王(魔女)の適任者がいなかったのだ。主人公のライバル関係だから主役に負けないほどのインパクトのある演技者が欲しかった。
「そんなの演劇部じゃない限りいねーよ」
「うーん、それはそうなんだがー……。できるだけ藍の白雪姫に対抗できる女王を作りたい」
「だから藍ちゃんに敵う相手なんていないだろーよ」
「……」
「どうかしたの?」
「萌」
脚本作業を終え、別の仕事をしていた萌がこっちに来た。
「そっちの仕事はどうした?」
「今休憩……」
「そうか」
「なにか脚本に不備があった?」
眉を下げながら、彼女は優大に不安そうに小声で訊く。
「いや、脚本自体に不備はないのだがー……」
「あ、そうだっ!」
彼の近くにいたある女子が大声を出しながら、パンと手を叩く。
「どうかしたか?」
「そうよ、どうして気付かなかったのかしら!」
「?」
「萌ちゃんが女王様役やれば良いんじゃない!?」
「…………え?」
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