3冊目『精霊の木』上橋菜穂子(偕成社)
〇あらすじ
〔序章 ふしぎな光〕、〔1 超能力、目ざめる〕〔2 精霊の道の伝説〕〔3 夢の語り部〕〔4 追手からのがれて〕〔5 闇にひめられた歴史〕〔6 精霊の歌の秘密〕〔7 暗号の解読〕〔8 精霊の木〕〔9 最後の賭け〕〔終章 そして、未来へ〕の全十一章。
地球が滅亡し、宇宙に移り住んだ人類。その中でも辺境の惑星と呼ばれるナイラ星が舞台となります。
かつては鉱山で栄えたものの、それらのほとんどの自動化が進み、今では人より鉱山の方が多いと言われるような星です。そんな星の鉱山の一つに、奇妙な光が現れました。
ナイラ星には先住異星人「ロシュナール」がいましたが、彼らはすでに滅んでしまっています。
人間とほぼ同じ見た目で、唯一額にある第三の目という特徴があった「ロシュナール」。彼らの滅亡の理由に主人公のシンは興味を持ちます。
そんなシンのいとこであるリシアは、母が幼い日の夢を見たと打ち明けました。
シンとリシアは「ロシュナール」の血を引き、その中でもリシアだけが先祖たちの記憶を夢に見る〈時の夢見師〉の能力を開花させたのでした。
「ロシュナール」滅亡の原因が人間にあり、自分たちは意図的に人間と「ロシュナール」を混血された者たちの子孫であると知ってしまい、そのことが原因で国の移民局に追われることとなった二人。
リシアは夢によって精霊の木の種を求め、間もなく〈母たち〉があの奇妙な光の道を通ってやってくることを知ります。
二人は無事、種を届けることができるのでしょうか。
〇感想
私が一番好きな小説、『精霊の守り人』。その作者の上橋菜穂子さんのデビュー作です。
『獣の奏者』や『鹿の王』などハイファンタジーのイメージが強いですが、処女作はSF作品だったようですね。
背表紙に書かれたあらすじには「中学生から」とも添えられています。
文章は中学生以上向けの児童〜ヤングアダルト向けということもあって難しい字や言い回しが少なく読みやすいです。
ただ、処女作ということもあってか稀に地の文に口語体が混ざっていたりするので気になる人は気になってしまうかも。
あと、カタカナの人名が多く、登場人物もそこそこ多いので混乱しやすいかもしれません。
「精霊」という単語に「リンガラー」とルビが降ってあるように独自の言語がある辺りは現在の作品にも通じていますね。
精霊の力を借り、精霊と共に生きていくという設定は民族学者としての知識によって補強され、違和感なく読み進めることができます。
主人公のお母さんが研究者、という点では獣の奏者を想起させられました。
大人たちの政治的な目論見に翻弄される子供たち、という構図も他の作品と共通しているように思えますね。
1989年に書かれた小説での未来の暮らしの想像図というのも面白かったです。
完全睡眠装置をつけて寝ることが基本になっていたり、固定電話に映像を送る機能がついていたり。
電話機そのものが携帯できるようになるとは想像していなかったのかな? とか考えてしまいました。
SF作品はあまり得意ではないのですが、ファンタジー風味ということもあってか読みやすかったです。
みなさんも機会がありましたら手に取ってみてくださいね!




