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【連載版】ホームパーティーに誰も来なくて、冷めた手作り料理を孤独にモソモソ食べる魔王様『……そうだ! 王国軍に一般入隊して魔族を滅ぼそう!』  作者: タック
3章 10歳に育った勇者、魔王学校に通っています

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5饗宴 魔王学校の探索4

 我は屋上でミスティと別れ、弁当を無くした落ち込みと共に校長室へ戻ろうとしていた。

 その途中の廊下──。


「お、マギウィル。ごきげんようなのである」


「ほう、お前か」


 長身痩躯、仕立ての良いグレーのスーツを着た男──マギウィル・マクドゥガルとはち合わせた。

 年齢24歳、長い金髪を後ろで束ねていて、前髪は神経質に切りそろえられている。

 この世界に少数存在する人間の“魔法使い”で、あのキザイルの兄である。

 正直、正反対の性格でまったく似ていないとも言える。


 四年前にミスティの護衛としてやってきて、今では居候のような感じで家に住み着いている。

 礼儀正しいのだが、硬すぎるというか、謎の距離感があるというか……。

 だが、非常に優秀な人間で、この魔王学校の教師を安心して任せられている。


「かなり魔術を使える生徒も増えてきたし、その上位である魔法に手が届きそうな生徒も現れそうな勢い。立ち振る舞いも紳士的で、評判もとてもいいのである!」


「ふっ、お前の元に集った者たちが、最初から仙才鬼才(せんさいきさい)だっただけだ──」


「フゥーハハハ、謙遜(けんそん)するなマギウィル! お主は大した奴だ!」


 自らの才能を過信せず、他の者を認める気持ちの良い奴でもある。


「お前もな──オウラ・ブルワーカー」


 我の呵々大笑に合わせて、少しだけ口元に笑みを浮かべるスーツの魔法使い。


「──いや、オウマ・ブラオカだからね、我……。なんか“オウラ・ブルワーカー”だとパワー系っぽいのである……」


「すまん、名前を間違えてしまったか……」


 普段はパリッとした完璧人間なのだが、どうも名前を覚えるのだけは苦手なようだ。

 この不思議な雰囲気、主従関係にあるらしいミスティと似ているといえば似ている。

 どこかの浮き世離れした姫君と、宮廷魔法使いとかそんなところだろうか。

 実力的には宮仕えより、あの“枢機卿”にすらなれそうな実力と評価しているのだが。


「ところでマギウィル。同居人の小さな勇者を見なかったであるか?」


「小さな勇者……ああ、ジャスティスか」


「おしい、ジャスティナなのである!」


「すまん……本当にすまん。だが、何かを抱えて、校長室の方へ向かっていったな」


「ふぅ、やっと見つけられそうであるな」


 何かを抱えて、というのが気になるが……。

 我はさっそく校長室に向かおうとしたのだが、ところで──とマギウィルの方も問いかけをしてきた。


「私もミスティック様を探しているのだが、どこかで見なかったか?」


 ……ミスティック。

 あの“禁忌聖女ミスティック・セイント”でもあるまいし。

 また名前を間違えたのだろう。


「ミスティなら、屋上で雲を見ながら、我から弁当を盗み食いしたのである」


「……すまん、色々とすまん」


 マギウィルは一見すると完璧人間だが、割とそうでもないような気がしてきた。

 内心、魔将軍に欲しいなーと思いつつ、早足で去って行く彼を見送った。




* * * * * * * *




 校長室の扉をガラッと開けると、そこにはジャスティナがいた。

 やっと見つけたのである。

 出発地点にいるとは、まさに急がば回れ。


「あ、オウマだ。この椅子の座り心地いいね!」


 校長室にある、魔王城から持ってきた椅子──つまり魔王の玉座に、ポスポスとお尻で叩くように跳ねているジャスティナ。

 魔王的には、勇者がそれでいいのかなーと思ってしまう。


「フゥーハハハ! って笑いたくなる感じがしないオウマ? こう、ワイン片手に! フワフワ毛並みの猫をはべらせて!」


「アルコール類はもうちょっと大人になってからなのである。フワフワの猫はー……イフィーの毛が生えそろってからにしなさいね」


「ちぇー、オウマのケチー」


 我の言葉に、口を尖らせるジャスティナ。

 これはきっと反抗期なのである……。

 勝手に一人で夢魔を退治しようとしたり、お風呂に一緒に入るのを拒否したり、下着を一緒に洗おうとすると怒ったり……。

 我、悲しい……! これが魔王と勇者という悲しい関係……!

 きっとそんな感じなのである……!


「そ、その……ジャスティナ……。べ、弁当を忘れていったのであるな……」


 我は喋るとまた嫌われそうなので、ビクビクしながら……。


「あ、うん。気が付いたらお弁当なかった」


「も、持ってきたのであるが……。

 なんというか……油断したらミスティに食べられていたのである……。

 不甲斐ない保護者で……すまぬ……すまぬ!」


「あ~……、確かにミスティならやりそう。

 今日、家での朝食もすっごい美味しそうに食べてたし、その横で必死に体調管理の食事調整をうながすマギウィルさんも……」


 ジャスティナにお腹を空かせる事態になってしまうとは、姉のステラになんと言えばいいのだろうか……!

 かくなる上は、部下の魔物を呼び寄せて、その身を刻んで料理とすべきか!?

 ぐぬぅぅぅ!!


「あ、なんかオウマが難しそうな顔をしてる。お腹空いてると考えも上手くまとまらないよ? まったく~、オウマはしょうがないな~」


 ジャスティナは机の上を片付けて、何かを広げだした。


「はい、これ一緒に買い食いしよっ! ……あ、その場で食べてないから、ただのお持ち帰りかな……?」


「ジャスティナ……」


 そこにあったのは色とりどりの料理。

 食べ歩くように作られた、屋台などの食べ物だ。

 串に刺さった肉や、野菜と卵がタップリ挟まれたパン、デザートのクレープなど。


「悪い校長先生と、悪い勇者のお昼ご飯!」


「ま、まぁ今日くらいは特別なのである。ただし普段は──」


「そう言ってもオウマ嬉しそう~」


 胸の内を見透かされ、溜め息を吐く我。

 きっと昼に抜け出して、王都まで行って買ってきたのだろう。

 ……いや、でもジャスティナの目撃証言と食い違うような。


「ジャスティナ、いつの間に王都まで買いに行ったのであるか?」


「あ~……。えへへ、先生対策でハーシアと口裏合わせってやつ。最後にマギウィル先生に見つかっちゃったけど」


「我、ハーシアに(たばか)られたのであるか!?」


「ごめーん、先生に聞かれたらーって頼んでおいたから、校長先生のオウマにも言っちゃったみたい」


「むむむ……。しかし、おいしそうだから許すのである!」


 一緒に笑い合ってから、校長室で“悪い魔王”と“悪い勇者”は昼食を食べ始めた。

 竜殺しの枢機卿や、グゴリオンの襲来から四年。

 ご覧の通り、平和な日々が続いている。


「あ、そうだ。鳥さんって家に置いてあげてもいい~?」


「早朝、出掛ける時に言ってたアレであるな?

 ふーむ、ペットか~。教育としては必要なことかもしれぬな。

 ……ちなみにどんな鳥であるか?」


「ちょっと大きめかなー。茶色と白の羽毛で、すっごく弱いの」


「うむ、守るべきものができるというのは勉強になる。飼ってもいいのである!」


「わーい、オウマありがとうー! 説得したら今度連れてくるね~」


 ……説得? まるで鳥が喋るかのように言うのであるな。

 まだまだジャスティナは子供ということか。

 微笑ましいことなのである。

 ついつい、ほっこりしてしまう。


 これがもしボーイフレンドとかだったら、魔将軍全員との“死の勝ち抜き(トーナメント)戦”を開催するところだったのである。


「はい、あーんである」


「もー、子供じゃないんだからー!」


「フゥーハハハハ!」


 今日も魔王学園は平和である。

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新連載を開始しました。
国を救うことに疲れてしまった強すぎる竜装騎士が、相棒の竜と共に田舎に移り住むスローライフ(?)なお話です。
どうぞ、こちらもよろしくお願いします。


『伝説の竜装騎士は田舎で普通に暮らしたい ~SSSランク依頼の下請け辞めます!~』
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