2饗宴 魔王学校の探索1
さわやかな朝。
我は朝食の片付けを終えて、出かける準備をしていた。
そこに小さな同居人の一人が通り過ぎる。
「おや、ジャスティナ。今日は早いのであるな」
「うん。ちょっとお腹を空かした鳥さんに、ご飯を持っていこうと思って!」
家の玄関で制服姿のジャスティナは、片手に朝食のパンを半分持っていた。
10歳という難しい年頃で、ダイエットとかいうもので残したのかと思っていたのだが、どうやらスズメにでもやる餌らしい。
「そうなのであるか。よし、お腹が減ったらコレで買い食いでもしなさい」
「オウマ、今は校長先生なのにいいの? 生徒に買い食いって……」
「バレなければ大丈夫なのである。なに、我はとても悪い校長先生なのだ」
ジャスティナはクスッと笑うと、我から小銭を受け取った。
「悪い校長先生は“希望の勇者”が退治しちゃうぞー! なーんてね。
ありがと、オウマ。
──それじゃ、行ってきまーす。また学校でね!」
「いってらっしゃいなのである」
手を振り見送る。
そしてふと思い出した。
お昼の弁当をまだ持たせていないということに。
* * * * * * * *
──魔王学校。
それは四年前に建設された、王都中央から少し離れた場所にある頑強な建物。
鉄筋……いや、ミスリル筋製の五階建てという、どう見てもオーバーテクノロジー。
人魔将軍イフィゲニアに任せていたのだが、あまりにもやりすぎである。
人間たちへの説明としては、獣人脅威のメカニズム! というので納得させたらしい。
本当は魔王軍の技術である……。
ちなみに魔王学校というアウトな名前も、“魔法学校”とかつけようとしたのに誤字りましたテヘペロ☆ と言い切っていた。
明らかに魔王の我のために名付けたとしか思えぬのだが……。
いや、そこらへんは百歩ゆずるとしても、建物におどろおどろしい角とか付いている。
……どう見ても新生魔王城です、本当にありがとうございました。
「おっと、もうお昼時か。ジャスティナを探して弁当を届けてやるのである」
問題児達へのクレーム報告書の山をかき分けながら、我は玉座のある校長室から這い出る。
光沢あるリノリウムの床、コンクリートの壁。
うん、この学校だけ技術水準がおかしいよね。
そうイフィゲニアのやばさを実感しながら、ジャスティナがいるはずの教室へと向かった。
たしか魔術・魔法学の授業が終わったところのはずだ。
人間の世界では魔術学でさえ、師弟の関係を結ぶか、王侯貴族が個人を雇い入れるくらいしか手段がない。
だが、我が魔王学校はもっと効率よく、生徒たち全員に教えている。
魔術の素質がないとしても、知識の差異によって対処できる範囲が変わってくるからだ。
それに優秀な“魔法使い”が教師としてきてくれているので、色々と助かっている。
「あ、オウマ様だ!」
「オウマ様、あなたのために立派な勇者になります!」
教室に足を踏み入れると、ジャスティナと同じくらいの年頃の子供たちが出迎えてくれた。
この子らは、4年前にバギエルの元に捕らわれていた、勇者の素質があった者たちである。
最初はバギエルからの仕打ちのトラウマで口数も少なく暗かったが、今では元気にやっている。
本当は人間社会の“教会”で学ぶべきなのだが、本人たちの不信感から、我の元に集っているのだ。
教会側が猛反発してくると覚悟していたが、割と普通に教皇“禁忌聖女”が書簡にて許可をしてくれた。
どうしてかは我にもわからない。
「こらこら、今の我はただの校長である」
「はい! オウマさ……いえ、校長先生!」
「えーっと、それでジャスティナに弁当を渡したいのであるが、どこにいるか知らない?」
「授業が終わったら、すぐにハーシアと一緒にどこか行っちゃいました!」
……ハーシアかぁ。
色々と目立つ娘だから探しやすいかもしれない。
「そうか、ありがとうなのである」
「どういたしまして! あ、みんなでサッカーしようぜー!」
「いいね! サッカー! イフィーが教えてくれたけど、すっごいおもしろい!」
子供達の無邪気な顔を見て、我は思わずほっこりしてしまう。
「それじゃ、ボールになる岩を探そうぜ!」
「うん、でっかいのがいい!」
ちなみに一人一人の強さは、国の軍隊規模と同じくらいである。
元々、勇者の才能があったところに、魔王学校の教師たちの教えをスポンジのように吸収して、恐ろしいほどの才能を開花させている。
「も、もう王都を囲んでいる城壁に向けて蹴らぬようにな……」
「はーい! 気を付けまーす!」
王都城壁に巨人が進撃したかのような大穴があいて、かなりのクレームが書類となって襲ってきたりもしている。
だが、それくらいで済んでいるのは、きっと裏でイフィゲニアが手を回しているからだろう。
王都のためにならない悪徳貴族は大半が没し、残りの国に必要な貴族たちも四年の内に掌握済みだとか。
我が魔将軍ながら恐ろしいやつである……。
さて、次は手がかりとなるハーシアを探さなければならないのだが、この子は血筋が特殊なのである。
「うわっ!? 窓の外を見ろよ!? 空に向かって赤い炎が!?」
「……やはりハーシアは目立つのであるな」
──ハーシア・アム・トイトブルガー・ヴァルト。
あの竜魔将軍ドゥルシアと、ハゲ筋肉人間ハーゲンの娘である。
前回の後書きで言ってた新連載の方は、うまく設定が噛み合っていなかったので書き直している最中です。
構成やキャラ、すべて新しくしているので、また書き上がったときは読んで頂けると嬉しいです!
ホムパ魔王様の次話は既にできているので、割と早めに投稿すると思います。




