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【連載版】ホームパーティーに誰も来なくて、冷めた手作り料理を孤独にモソモソ食べる魔王様『……そうだ! 王国軍に一般入隊して魔族を滅ぼそう!』  作者: タック
3章 10歳に育った勇者、魔王学校に通っています

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1饗宴 行ってみたいと思いませんか?

※視点変更あり

 六歳の幼女──ジャスティナは歩いていた。

 まだ寝ぼけているのか視界はぼんやりとしていて、あまり現実感がない。

 気が付くと、家の廊下。


「あれ、ステラお姉ちゃん……?」


「ん? ジャス、不思議そうな顔をしているがどうしたんだ?」


「い、いや……なんでもないよ」


 なにか違和感があったのだが、それがなにか分からない。

 自らの小さすぎる手をじっと見る。


「なんだろう……」


 モヤモヤした気持ちを抱えながらジャスティナは歩く。

 数秒後には、見慣れた訓練場に着いていた。


「あ、そうだ。あたしは一人前の勇者になるために剣の訓練をしなくちゃ」


 木人が立ち並び、顔の無い兵士たちが一糸乱れぬ動きで木剣を振っていた。

 それはまるでおとぎ話のトランプの兵士たちのようだ。


「やぁ、ジャスティナちゃん」


「おはようございます、キザイルさん」


 今日もキザイルが剣の訓練をしている。

 ジャスティナは首をひねった。

 ……やはりおかしい、と。

 なんだろう、なにが変なのだろうか。


「あ、ジャスティナちゃんどうしたの? 僕のことをじっと見て。もしかして惚れちゃった? でもごめんねー、もう何年か経ってからじゃないと。なはは」


「いえ、それは絶対に違いますから。ステラお姉ちゃんに譲ります」


 たぶんあのキザイルさんが、マジメに訓練をしていたのがおかしく感じられたのだろう。

 そう思う事にした。

 また数歩だけ歩く。


 ──すると再び風景が変わった。

 今度はどこかわからない、真っ白い神殿。

 淡いブルーの花びらが舞っていた。

 知らない風景、花、だけどこれを好きだと魂が言っているように心が高鳴る。


「おぉ、ジャスティナ。どこに行っていたのであるか」


「オウマ……」


 大切な存在が立っていた。

 偉丈夫と呼べるくらい大きくガッシリとした身体だが、表情は優しい中年。

 その黒い髪も、黒い眼も、大好きだった。

 ジャスティナはそう想い、引き寄せられるように歩く。


 左右には【 】達がひざまづき、【  】とジャスティナを崇め……。


「なにこれ……欠けていて見え……ない……?」


 ジャスティナは認識できない存在が怖くなり、この世界に不安を覚え、オウマを求めた。

 オウマまで目の前から消えて、違う存在になってしまうのではという焦り。

 ──既視感。


「オウマ、オウマ……。もうどこにも行かないでオウマ……。オウマがいなかったら、たぶんあたしは……」


 微笑み続けるオウマに指先が触れた。

 瞬間──ビシッと痛みが走った。


「ったぁーッ!?」


 それは静電気にも似た感覚。

 ジャスティナは後ずさり、キョロキョロと周囲を見回した。

 オウマが不審がって問い掛ける。


「ど、どうしたのであるか? ジャスティナ──」


「その名を呼ぶな……」


 ジャスティナは人が変わったかのように怒りの形相を見せていた。

 いや──それは本来の精神に戻っただけなのだ。


「その偽物の顔で、あたしの名前を呼ぶな。虫酸が走る! この夢魔(・・)が!」


「おや、おやおやおやぁ……。バレましたか」


 オウマだった外観は崩れ去り、中からピエロのような翼持つ存在が現れた。




* * * * * * * *




 やっとあたしは状況を把握した。

 ここは現実では無い。

 夢の中、しかもあたしの未熟な身体や、ステラお姉ちゃん、キザイルさんがまだ王都にいたということは“四年前の記憶”を使っているらしい。


「こんなの──」


「ほう……」


 自らの身体を思い出す。

 現状認識さえすれば元の年齢に戻れるはず。


 四年前より長くなった金色のツインテール。

 手脚はスラリと伸び、胸もほんの少しは成長した。……ほんの少しはだが。

 身体を包むのは白と紺色(こんいろ)の学生服。

 もう6歳の幼女ではなく、今は10歳の少女──それがあたし。ジャスティナである。


 剣も以前よりはマシに扱える。

 イメージする、いつも肌身離さず持っている神剣を。

 たとえ夢の中であろうと守護してくれる、託されし力を。


「夢の中でも、どうってことないんだから!」


「なっ!? 夢に武器を持ち込むだと!?」


 あたしの手の中に出現した、神気(エーテル)を放つ刃。

 一振りするだけで、夢の幻想はカーテンを裂くように消えてゆく。


「くそ、なぜだ……。夢の中なら、夢魔(おれ)は無敵のはず……」


「それ、対策も何もしてない人間相手なら、でしょ?」


「なに、まさか!?」


「そう、(ちまた)で噂の夢魔をおびき寄せ、夢の中で懲らしめようって待ち構えていたのよ」


 あたしは夢魔に対して、ビシッと人差し指。


「まず夢魔というモンスターは習性からして、夢の中に現れ、対象を油断させて現実の身体に触れてくる。

 そこであたしの身体に聖水を振りかけておいたの。

 おぉっと、逃げようとしてもムダよ。

 既に結界で入ってきた窓は封鎖してあるもの」


「お、おれは知る者の少ない上級モンスターなんだぞ……。その知識どこから……。何者だお前!?」


「あたしは、ただの魔王学校の生徒。これは魔族に詳しい“校長”から教えてもらったのよ。んふふ、正攻法でどうにかしたいのなら魔将軍でも連れて来なさい」


 あたしは勝ち誇った顔で神剣を構えた。


「さぁ、あなたの負けよ! 希望の勇者の名を刻みながら、五十発くらいグーで殴られて後悔しなさ──」


「ば、ばーか! おれが夢の中から出ちまえば、お前は追ってこられない。

 それに、おれが部屋から逃げられなくても、お前の実体に直接触れられなくても、どうにだってできる!」


「え?」


 正直、そこまでは考えていなかった。

 いや、だけど、直接触れないでできる嫌がらせなんてあるのだろうか?


「なにをするっぽい……?」


「希望の勇者に指一本振れず、倒す方法。なに、すばらしく論理的な方法だ!」


「ま、まさかエッチな……」


「窒息死させてやる、方法はおれのションベ──」


「い、いやぁー!? 最後まで聞きたくないッ!! 本当にいやぁー!!」


 想像を絶する答えに、思考が停止してしまう。

 ありえない、ありえない。

 希望の勇者がお小水に殺されるというのだ。

 本当はここでかっこよく夢魔を倒して、オウマや、クラスメイトのハーシアに自慢するという計画が……。


「ハッハッハ! ざまぁ! ざまぁー!!」


 夢魔は翼を広げてバッサバッサ飛んで、消えてしまった……。

 あ、あぁ……どうしよう。

 まだ戦いの中で命を落とすとかなら納得できなくもないけど、さすがに。さすがにちょっと死に方がひどすぎる。


「うぅー……オウマの言うことを聞いておけばよかったぁ……」


 オウマは対策と同時に、夢魔は一人で戦うと危険とも言っていたのだ。


「……あぁ、なんか意識が遠のいて……」


 今、もうおぼれているのだろうか。

 現実の方を想像したくない。

 きっと、このまま自分の珍百景な死体を見下ろす、幽霊バッドエンドになるのだろう。

 希望の勇者ジャスティナ、享年10歳。夢魔のおしっこで溺死。


 こんなことになるんだったら、美少女勇者という通り名にしておくんだった……。

 ガクッ。




* * * * * * * *




「……うっ、うぅ。やっぱり戸棚に隠したマカロンも死ぬ前に食べたかった。

 ──って、あれ? オウマ……おはよう」


 死んだかと思ってビクビクしながら起きたあたしを、オウマが出迎えてくれていた。

 その手には気絶している夢魔。

 頭を鷲掴みにされて、メキメキとここまで音が聞こえてきている。


「ジャスティナ、補習確定なのである」


「えー!?」


 ピンチは救われたけど、魔王学校の方ではさらにピンチになってしまったようだ……。

ネット小説大賞の一次通過しました! ひゃっほい!

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新連載を開始しました。
国を救うことに疲れてしまった強すぎる竜装騎士が、相棒の竜と共に田舎に移り住むスローライフ(?)なお話です。
どうぞ、こちらもよろしくお願いします。


『伝説の竜装騎士は田舎で普通に暮らしたい ~SSSランク依頼の下請け辞めます!~』
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