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ヴィタリスト =命と闇の合従= <ミングル編>  作者: 柳刃公平
第九章 仲間(コムレイズ)
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第98話  罠にかかった者たち

 

 助けたい本人の拒否発言に困惑する、レイがいる。

 そんな少女に応えるために、座る姿勢を変え、両足首を見せた光。正確には、両足首にある輪型の装飾品だった。直径5ミリ程度の高価とは言い難いシルバー色のアクセサリー、が違和感なく付いていた。


「……これは? 」


「これね、……爆弾らしいの」


「!? 」


 耳を疑った。


「ばく、だん? ……! 爆弾! 」


 部屋入口に立ったままの碧たちに向けられた少女の、大きく見開いた眼は何かを訴えている様子。彼女同様、男たちも驚きの表情を露にした。

 爆弾を身に付けているらしい彼女に近づく、碧と須佐野。その足輪を凝視した。が、見た目には分からなかった。


「ゴメン、触っても大丈夫かなぁ」


「はい」


 静かにその爆弾らしきシルバー物に触れる、碧。さらに足首に沿って回す。

 それには、小さなLEDランプが三つ。二つは消えているが、一つはグリーン色に輝いている。そして、内側に対面して二つの小さな穴を見つけた。さらに回しながら観察すると、二ヶ所の接続部分のようなライン。ここを無理矢理外そうとすると作動するのだろう、と予測出来る。両足とも同じタイプ、だということは分かった。


「どうすれば作動するのかなぁ? 」


「この家を離れたら……正確には半径20メートルを超えたらって聞いてます。あとは、切断したり分解したりしても爆発するそうです。ただ、爆発力は大したことないと……。両足を切断する程度のようです」


「ひっ、ひどい! 何でそんなことが出来るの!? 誰が、こんなこと……」


 吃驚きっきょうしたレイは、力み閉瞼し、うつむいた。


「監視していた警官たちがいなくなる時に、スーツを着た男たちに付けられたの。刑事って感じはしなかったわ」


 NSネスだと疑うことが出来るだろう。ただ碧だけは、冷静に分析していた。


「予想だとこれは、爆弾とは少し違う代物……でも、似たようなもんかな。実物を見たことないから、何とも言えないけど、ね。

 ……ロシアで開発されている囚人脱走防止のための足枷、じゃないかと考えてる。一定距離を離れると作動するのは同じ。でも爆発ではなく内側の穴から針のような物が出て、麻酔などの液体を体内に注入するんだ。気を失った後に即捕獲ってなるわけ。……爆薬で足を吹っ飛ばすと、労働者として利用出来ないからね。

 ただ、今この中にどんな液体が入っているのかは分からない。毒薬であれば勿論死に至るだろうし……ある意味爆弾と一緒、かなぁ」


「どちらにしても光さんは、脱出することは不可能、ということか!? 」


 須佐野が口を開く。


「そういうことになりますね。本物であれば、ですけど……」


 あっさりした返事。そのまま視線は腕時計へ。


「おばあちゃんに頼んで、エンジニアを呼ぶ時間がないわけじゃないけど、陽くんたちをヘリでここに来てもらう方が、確実かもしれない」




 敷地外では不穏な動き。緊張感が増す見張る、柳刃ら。

 彼の左方面から、友人の右方面から、小枝を踏み折る足音が聞こえ始め、微動たりせず様子を伺う。レイたちのいる建物へ近づく数多くの黒い影を、察知。自らの安全ポジションを理解した後、カメラのナイトビジョンで視察。

 SATサットと武装警官隊である。北側道路からも二列に並んだ部隊が、小走りで敷地を囲む。所々の数人は背負っていた機材を下ろし、準備を始めた。

 彼女たちに危険が及んでいることを知りながら、ありのままを撮影するしかなかった。




 タイムリミットまで16時間を切っていた。腕時計を見ながら大男も同意。指揮官がアイコンタクトで確認すると、頷く少女。それを見て立ち上がり、ポケットから携帯電話を取り出した。が、動きを急止。


「茉莉那さん! 外で動きがあります」


 一階から聞こえて来た、男の声。


「チッ! 」


 舌打ちする、碧がいた。建毘師一派も緊迫した表情で、壁に隠れながら、おいおい外を覗き舐める。


「ジンさん! シールド! 」


 家中に広がる茉莉那の声。


「あいよ」


 建物全体を覆う薄緑っぽい半球体の膜を張る、一階にいた建毘師。


 座り込んでいる彼女たちにその場を動かないようジェスチャーで指示する、リーダー。身を屈めながら、大きな窓枠の裾へと身体をくっ付け、外を見渡す。大男は逆の窓裾へ、移動した。

 19時頃の薄暗い外には、肉眼でもハッキリ分かるように黒尽くめの、人の列。


「やっべぇー、こっちに気を取られて気づかなかったぁ〜……また婆ちゃんに怒られちまうよ」


 小声で後悔する伊武騎グループ会長の孫。両手の平を広げ、戦闘態勢を取った。


 刹那、これから暗闇に融け込むはずだった島の一部が、舞台と化す。散らばる複数のスポットライトが、白い二階建ての建物をメイン会場に、仕立て上げた。


「あぁ、あぁ、犯人に告ぐ! 犯人に告ぐ! 建物は完全に包囲した! 抵抗を止めて出てきなさい! 」


 小さな島に鳴り響く、拡声機の汚い声。テレビドラマで聞いたことのある、あのセリフを浴びせられたのだ。さらに、北東と北西から警察ヘリの騒音とスポットライトが、演出に厚みを増す。

 須佐野と碧、建毘師一派は、眩し過ぎる外を薄目で、睨む。予想もしてなかったその騒動に驚く女性2人は、その場に立ち上がり、外への興味を示した。

 各ライトの間を埋め尽くす黒ずくめの、人影。「なぜ私たちが……信じられない」と刑事ドラマのように、包囲された事実を受け入れることに時間は、掛からなかった。




 林中にいる柳刃。

 予想以上の規模に少々戸惑いながら、ジャーナリストとしての血が騒ぐ。咄嗟にバッグから小型ホームビデオカメラを取り出し、動画撮影。スポットライトで十分撮影可能な明るさが確保出来ていた。薄暗く足場の悪い場所を気にせず、北東から東側へと一歩一歩移動。正門付近にいる私服警官たちを捉えておきたかった、のだ。




 後頭部を掻きながら部屋中央に戻る、リーダー碧。


「50人以上はいるなぁ。どうしようかなぁ〜……持ってきたの30くらいしかないし……」


 幽禍かすかの数である。


「おまけに気になってはいたけど、この島に浮遊するみょうが少ないんだよねぇ。多分、奴らの仕業だと思うけど……」


 沈黙し、思案し始める。

 それを邪魔するように再び、拡声機の声。


「5分以内に人質を解放し、武器を捨て、出てきなさい! 」


「碧さん、どうなるんですか、私たち? 」


 不安そうに訊ねる、女子高生。


「そうねぇ〜……全員逮捕、かなぁ。陽くんの蘇生よみがえりふせげるからね。でも……奴らのやり方だと、ここにいる全員あの世行き、だろうね。光さんも含めて」


 光と目を合わせる、レイ。


「なぜ、お姉さんまで? 」



 

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