↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
218/223

第218話 完成した怪物

王喰が崩れ始めていた。


だが。


終わってはいない。


むしろここからだった。


王喰領域全体に走った亀裂は確かに広がっている。鉄槍将軍や白銀飛竜といった再現個体は次々と崩壊し、空間を満たしていた異常な圧力も僅かに弱まっていた。


しかし。


王喰本体だけは違った。


巨大な黒い核は無数の亀裂に覆われながらも、なお脈動を続けている。


終号が警告を表示する。



構造崩壊進行


47%



自己修復開始



全員が固まる。


リリスが青ざめる。


「修復してます!」


「だろうな」


アルベルトは冷静だった。


むしろ予想通りだった。


完成した構造なら。


完成したまま維持しようとする。


それが自然だ。



その時だった。


王喰の中心。


黒い核の奥。


夜狼王が苦しそうに顔を上げた。


「……アルベルト」


かすれた声。


だが。


確かに本人だった。


全員の顔が変わる。


生きている。


まだ消えていない。



その隣。


リリスもいた。


しかし状態が違う。


彼女の身体には黒い紋様が広がっている。


まるで王喰そのものと接続されているようだった。


リリスは必死に何かへ抗っていた。


「来ないでください!」


突然叫ぶ。


全員が止まる。



「リリス?」


「近付いたら駄目です!」


声が震えている。


苦しそうだった。


そして。


次の言葉で全員が凍り付いた。


「私達が核です!」



沈黙。


王喰。


夜狼王。


リリス。


全てが繋がる。



アルベルトが理解する。


王喰は夜狼王を吸収したのではない。


リリスを吸収したのでもない。


夜狼王とリリスを中心に完成している。


だから。


王喰を普通に破壊すれば。


二人ごと壊れる。



ヴァルグランが舌打ちする。


「最悪じゃねぇか」


その通りだった。


ようやく辿り着いた答えがそれだった。



アダプト皇王が前へ出る。


王喰を見る。


夜狼王を見る。


リリスを見る。


そして。


静かに言った。


「壊す場所を選ぶ」


アルベルトが頷く。


それしかない。



その瞬間だった。


王喰が反応する。


初めてだった。


今までただの構造だった存在が。


明確な意思を持った。



黒い核が脈動する。


周囲の空間が揺れる。


そして。


声が響いた。



「何故」


全員が止まる。


王喰が喋った。



「何故拒絶する」


低い声だった。


男でもない。


女でもない。


生物ですらない。


ただ。


巨大だった。



「完成している」


王喰が言う。


「全て揃った」


「王も」


「記録も」


「器も」



リリスが苦しそうに顔を上げる。


「違う!」


王喰が止まる。


初めてだった。


リリスの意思が王喰へ干渉した。



「それは完成じゃない!」


黒い紋様が広がる。


苦しい。


それでも叫ぶ。



「勝手に決めないでください!」



沈黙。


その言葉は。


王喰にとって初めての否定だった。



終号が反応する。



記録干渉確認



リリス


優先度上昇




ミレイが息を呑む。


「そうか……」


ようやく分かった。



記録妖精。


それはただ記録する存在ではない。


記録を管理する存在だ。


つまり。


王喰の構造へ最も干渉できる存在。



フェルナー・アルトが残した言葉。


『記録妖精を信じろ』



全部繋がった。



アルベルトも理解する。


だからフェルナーはリリスを残した。


王喰を止めるために。



その時だった。


王喰が怒った。


初めてだった。


空間が震える。


黒い波動が広がる。



「不要」


王喰が言う。


「不要」


「不要」



夜狼王の身体が沈む。


リリスの身体も沈む。


二人が王喰へ完全に取り込まれようとしていた。



「まずい!」


ミレイが叫ぶ。


終号も警告を出す。



統合率上昇



92%




あと少し。


あと少しで終わる。


夜狼王も。


リリスも。


完全に消える。



その瞬間だった。


宝冠宰相が飛び出した。


「キュウ!」


全員が止まる。



またか。


そう思った。


だが違った。



宝冠宰相は胸元から何かを取り出す。


黒い結晶。


あの記録外媒体だった。



王喰が反応する。


初めて明確に。



恐怖した。



終号が表示する。



記録外媒体



フェルナー・アルト


最終権限鍵



中央広間が静まり返る。



フェルナーが残した最後の鍵。


それが今。


王喰の前にある。



宝冠宰相は結晶を掲げる。


誇らしげだった。


何も分かっていない顔だった。


だが。


持ってきた物は正しかった。



王喰が後退する。


初めてだった。


完成した怪物が。


恐怖している。



アルベルトは笑った。


「見つけたな」



王喰を倒す方法。


いや。


夜狼王とリリスを取り戻す方法。



それは力ではない。


配合でもない。


戦闘でもない。



三十年前の研究者が残した。


最後の答えだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。