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『最弱ダンジョンの配合士 ~誰も知らない配合で最強ダンジョンを目指します~』  作者: もかどら


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208/223

第208話 幸運が呼んだもの

夜狼王を奪われて二日目。


忘れられた洞窟は異様な熱気に包まれていた。


残り五日。


冥府回廊へ再挑戦するまでの猶予。


その間に戦力を引き上げなければならない。


今のままでは勝てない。


それは全員が理解していた。


だからこそ。


研究施設。


召喚石保管庫。


終号。


全てを使う。


夜狼王を取り返すためなら、出し惜しみはしない。



地下保管庫。


棚一面に並ぶ召喚石を前に、アルベルトは静かに頷いた。


「始めるか」


終号が反応する。



召喚石使用推奨


五十個



リリスが額を押さえた。


何度見ても多い。


だが今回は誰も反対しない。


夜狼王がいない。


それだけで十分だった。



最初の召喚石が起動する。


黒鋼熊。


登録。


次。


毒沼大蛇。


登録。


飛行種。


昆虫種。


甲殻種。


次々に召喚される。


忘れられた洞窟の広間は、半日もしないうちに魔物で埋まっていた。



終号が解析を続ける。


新規配合候補。


百二十件。


百七十件。


二百件。


数字が増え続ける。


アルベルトの機嫌は良い。


リリスの頭痛も増えていた。



その時だった。


「ぷに!」


嫌な予感しかしない声が響く。


全員が振り向く。


プニシャドウだった。



最近は王冠宰相や影王の陰に隠れていたが、忘れてはいけない。


忘れられた洞窟最大の事故要因である。



プニシャドウは召喚石の山へ飛び込んだ。


ころん。


ぽよん。


ごろん。


召喚石が崩れる。


リリスが叫ぶ。


「待ちなさい!」


遅い。



終号が警告を出した。



複数召喚石


異常共鳴



中央広間が静まり返る。



次の瞬間だった。


研究施設全体が光った。


召喚石が反応する。


一個ではない。


十個。


二十個。


三十個。


同時だった。



アダプトキングが止まる。


ヴァルグランも止まる。


王冠宰相ですら固まった。



巨大な魔法陣が出現する。


今まで見たことがない。


研究施設全体を覆う規模だった。



終号が解析を試みる。


だが。


途中で止まる。



解析不能



特殊召喚変異


発生



中央広間が凍りついた。



アルベルトだけが笑っていた。


「面白いな」


リリスは頭を抱えた。


こういう時だけ本当に楽しそうだった。



光が収束する。


そして。


中央に一つの影が現れた。



全員が止まる。



今までと違った。


熊ではない。


狼でもない。


竜でもない。



人型だった。



長い銀髪。


白い肌。


黒と青を基調とした衣装。


そして背中には半透明の光翼。


人間に近い。


だが違う。


瞳の奥に宿る光が、人ではないことを示していた。



リリスが固まる。


ミレイも固まる。


アダプトキングですら言葉を失った。



終号が表示を続ける。



特殊召喚個体



名称不明



研究施設記録照合中



中央広間が静まり返る。



少女は周囲を見回した。


少し不安そうだった。


まるで長い眠りから目覚めたばかりのような表情。



そして。


視線が止まる。



プニシャドウだった。



「ぷに!」


本人は得意げだった。


何故か胸を張っている。



少女は数秒見つめる。


そして。


小さく頭を下げた。


「……召喚者」


中央広間が止まった。


喋った。



王冠宰相が飛び上がる。


ヴァルグランが目を見開く。


影王も珍しく反応している。



終号が急速に解析を進める。


数秒後。


表示が変わった。



個体名


星導妖姫



研究施設保管個体



補助特化個体



中央広間が静まり返る。



ミレイが息を呑む。


「研究施設の個体……?」


終号が頷く。



研究者作成個体



保存状態


休眠



三十年間維持



全員が固まった。



研究施設の魔物。


しかも三十年前。


王喰計画と同時代。



アルベルトの目が細くなる。


面白い。


本当に面白い。



終号が能力を表示する。



戦闘適性:低


解析適性:極高


育成補助:極高


記録解読:極高



特殊能力


進化観測


素材解析


記録再構築



リリスが息を呑む。


戦闘向きではない。


だが。


今の忘れられた洞窟に最も必要な能力だった。



第四記録。


王喰。


研究者。


研究施設。


全てに関わる。



少女――星導妖姫は周囲を見回した。


そして静かに言う。


「夜狼王が……いませんね」


中央広間が凍りつく。



全員が見る。


星導妖姫は少しだけ悲しそうだった。


「私は知っています」


静かな声だった。


「冥府回廊も」


「王候補融合も」


「王喰計画も」



誰も動けない。



そして。


星導妖姫はアルベルトを見る。


真っ直ぐ。


迷いなく。



「急いでください」


その一言で空気が変わる。



「残り五日なら」


「まだ間に合います」



夜狼王奪還。


王喰。


研究者の真相。


三十年前の秘密。



忘れられた洞窟は。


新たな仲間と共に。


ついに核心へ踏み込み始めていた。

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