4.てんやわんやな一悶着
成人の儀の朝がやってきた。
この日は王国の各教会に地域の15歳 "新成人" が集まる。
私にとっては、前世で言う成人式を思い出させる光景だ。
貴族や平民が関係なく集まり、順番で祭壇に祈りを捧げる。
ヴァイト辺境伯領は広い、一代限りの騎士爵も併せたら、
貴族の数もそこそこ居たりする。
そうなると当然……
「無礼な!僕を誰だと思っている!この平民が!!」
「お……お許しくださいぃ……」
当然、このような貴族の子共も存在する。
貴族と鼻にかける行為を私の父上は心底嫌っていた。
領民が居るからこその貴族が支えられている。
その考えを徹底しているのだ。
「ねぇそこの君、止めなよ」
「なんだと!僕が誰かわからないのか!名前を名乗れ!」
「私が誰かはどうでも良いでしょ?
今日は女神様から天啓を賜る日だ、揉め事は止めようよ」
私の名前を出せば一発で収まる。
しかしそれは、私が辺境伯子息である事を鼻にかける行為だ。
出来るだけ名前を出さずに穏便に済ませたい。
「黙れ!平民風情が頭が高い!
僕はヴァイト辺境伯より統治を任されている貴族!
フォール子爵家ぞ!お父様に言えば貴様なんぞ処罰される」
「あのフォール様のご子息ですか。
素晴らしいお父様の名に恥じぬよう、ここは寛大な……」
「だめだ!そこへ直れ!僕が罰してやる!」
流石に騒ぎが大きくなってきた。
フォール君に目をつけられた娘は怯えて動けそうもない。
ここで物理的に反撃するのも大人気ない……困った。
そう考えていると、フォール子爵の姿が見える。
いつも通り真面目そうな人だ。はてさてふっふーん……
「あ!お父様!聞いてください、この者たちが僕に……」
フォール子爵、何回か社交界で顔を合わせてますね。
お加減は宜しいでしょうか?なんか顔が青くなっていますよ?
と言う間もなく。
「こ……こ……この大バカ者がぁ!!!」
バチコーンと平手が飛んだ。
あ痛ったぁ……フォール君吹っ飛んだ……
「この方はエフォリア=ヴァイト様だ!辺境伯のご子息だぞ!
そもそもお前は領民に何をやっとる!貴族として情けない!
エフォリア様!申し訳ありません!」
「いつも通りのフォール様で良かったです。
私の知らないフォール様かと思っちゃいました」
そう言うと、私はフォール子爵に耳打ちを行う。
「ここは衆人の目があります……
子供はこのような場で叱責すると心に傷が残るやもしれません。
どうか、これ以上はお止め下さい。」
「これは……お恥ずかしい……息子はしかと教育しますので……」
フォール子爵はそう言うと、自分の息子が転ばしたであろう娘に近寄る。
その手を取って引き起こした。
「私の息子が申し訳なかった、せっかくの成人の儀なのに服が……
後ほどお詫びをさせてもらうから許してほしい」
やっぱり良い人だ、ちょっとお子さんを甘やかしすぎたのだね。
あの娘も大丈夫ですと健気に言っているし、とりあえず私は。
「フォール君、大丈夫かい?」
吹っ飛んだフォール君に手を差し出す。
「ひっ!?お許しください!知らなかったんです!」
「怒ってないけど一つだけ言うよ。
貴族は領民が支えて初めて立つことができるんだ。
思った以上に貴族という立場は弱いのを知ってほしい。
だから、領民に支えてもらうため貴族は領民を守るんだ」
「領民を守る……」
「君は今、失敗しちゃったけど……これからまだ取り戻せる」
「……」
うんうん、この顔は反省しているな。
この世界では15歳は成人でも、前世の感覚だと子供だからなぁ。
ここは精神的に大人な第三者の私がちゃんと話さないとな。
当事者意識?ないない、そんなものは無い。
「共に貴族としての矜持を持ち、王国のため民のため歩もう!」
「は……はっ!このエイドリック=フォール目が覚めました!
エフォリア様の従士として共に歩んで参ります!」
「あれ?」
「娘よ……すまなかった!僕が悪かった!どうか許してほしい!
今後は僕が君たちを守る!いや守れる貴族になる!」
「おや?」
いや、周りの人?何を拍手してるの?
ん?フォール子爵様?何を泣いてうんうんと頷いてるの?
「エフォリア様!どうか!どうか息子の忠義を受け取って下され!」
「ひぃ!?」
フォール子爵に脱兎のごとく詰め寄られ両手で手を握られる。
あぁ!そんな所で膝を付かないで!
「お、お立ち下さいフォール様!?
で……ではエイドリック君とは友人からということで……」
「なんと寛大な……不肖の息子ですがよろしくお頼みします!
エイドリック!しかと励めよ!」
「はっ!このエイドリック=フォール!身命に代えましても!」
成人の儀の前に妙な悪目立ちをしてしまった。
しかし、学院に行く前に友人ができるのは悪くない。
悪たれ坊主だった分、反省し改心したなら頼れるだろう。
ほら、鉄は熱いうちに叩け?叩いた後は研がないとな。
それはそうと……
「ナーリャ、見ているならあの娘の服を何とかしてあげて。
いや、君もなんで涙目で拍手しているのさ……」
この場に父様と母様が居たらなんと言われるか。
居なくてよかった……
誤字報告ありがとうございます!
多感なお年頃は叩いて修正!




