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父が演習を行うと言い、山へ出向いた。
装束に身を包んで山へ入ると、金属が木を穿つ音が聞こえている。
「白烏家の結人だ。お前と同じ歳だぞ」
父はそう言って指を指した。指した先には小さな的がある。枝にぶら下がっている。その中央に、トンッと音を立てて八方手裏剣が刺さった。放たれた先を見るが、人の姿はない。
「もっと向こうの大木の陰だ。曲げながら投げている」
父はにやりと笑った。その笑顔は鏡水に向かっていない。? 鏡水が首を捻ると、その笑顔の目の前に男が現れた。
「久しぶりだな、滝音よ」
父とその男はがっちりと握手を交わした。
「ああ、せがれは成長しているようだな」
「いや、全然だ。やっと投げられる指にはなった。これからだな。鏡水くんはどうだ?」
ふふ、父は笑みを浮かべて、鏡水を見た。
鏡水は辺りをじっくりと見渡していた。
「どうだかな。今日で分かる」
遠くで木が数本倒れる音が響いた。鏡水、結人、そして二人の父がそちらに目をやる。
「桐葉家も来たようだ。勝手に斬りおって……」
鏡水、結人、刀貴が並べられる。
「これより甲賀三家、合同演習を行う」
お互いに挨拶もない。
鏡水は腰にくないを差し、白烏家は手裏剣を幾つも腰籠に入れているようだ。桐葉家は刀を差し、目をずっと閉じている。
演習とは何をするのだろうか。まさか、お互いこの武器で戦うというのか。下手をすれば、死んでしまう。
「三人とも、齢十五を越えた故、己の力の限りを見せるが良い。白烏家は北へ、桐葉家は南東へ、滝音家は南西へ。三者、法螺貝を吹いた刻より演習を開始とする」
本当にやるのか……。鏡水の額に汗がつたう。
「鏡水、何をぼさっとしている。行くぞ」
父が枝を蹴りながら、先に森の南西へと向かう。急いで後を追う。
「鏡水、深く呼吸せよ。そして、いつも通りだ。さすれば、手裏剣と刀はお前を穿つことも斬り裂くこともできまい」
果たして、そうだろうか。鏡水はひとつ、大きく息を吸い、吐き、いつものように前後左右、上下を見渡した。