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甲賀忍者、甲子園へ行く[地方大会編]  作者: 山城木緑
4. キャッチャー 滝音鏡水
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2

 父が演習を行うと言い、山へ出向いた。


 装束に身を包んで山へ入ると、金属が木を穿つ音が聞こえている。


「白烏家の結人だ。お前と同じ歳だぞ」


 父はそう言って指を指した。指した先には小さな的がある。枝にぶら下がっている。その中央に、トンッと音を立てて八方手裏剣が刺さった。放たれた先を見るが、人の姿はない。


「もっと向こうの大木の陰だ。曲げながら投げている」


 父はにやりと笑った。その笑顔は鏡水に向かっていない。? 鏡水が首を捻ると、その笑顔の目の前に男が現れた。


「久しぶりだな、滝音よ」


 父とその男はがっちりと握手を交わした。


「ああ、せがれは成長しているようだな」


「いや、全然だ。やっと投げられる指にはなった。これからだな。鏡水くんはどうだ?」


 ふふ、父は笑みを浮かべて、鏡水を見た。


 鏡水は辺りをじっくりと見渡していた。


「どうだかな。今日で分かる」


 遠くで木が数本倒れる音が響いた。鏡水、結人、そして二人の父がそちらに目をやる。


桐葉(きりは)家も来たようだ。勝手に斬りおって……」



 鏡水、結人、刀貴(とうき)が並べられる。


「これより甲賀三家、合同演習を行う」


 お互いに挨拶もない。


 鏡水は腰にくないを差し、白烏家は手裏剣を幾つも腰籠に入れているようだ。桐葉家は刀を差し、目をずっと閉じている。


 演習とは何をするのだろうか。まさか、お互いこの武器で戦うというのか。下手をすれば、死んでしまう。


「三人とも、齢十五を越えた故、己の力の限りを見せるが良い。白烏家は北へ、桐葉家は南東へ、滝音家は南西へ。三者、法螺貝を吹いた刻より演習を開始とする」


 本当にやるのか……。鏡水の額に汗がつたう。


「鏡水、何をぼさっとしている。行くぞ」


 父が枝を蹴りながら、先に森の南西へと向かう。急いで後を追う。


「鏡水、深く呼吸せよ。そして、いつも通りだ。さすれば、手裏剣と刀はお前を穿つことも斬り裂くこともできまい」


 果たして、そうだろうか。鏡水はひとつ、大きく息を吸い、吐き、いつものように前後左右、上下を見渡した。

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