天命の鼓動
「その条件で構わない!頼む──早くこいつを、再生してやってくれ……!」
叫ぶようにそう言った瞬間、ノクトの左肩に鋭い衝撃が走った。
何が起きたのか、とっさにはわからない。
熱い──
赤くなるまで熱した焼きごてを左肩に押し付けられたような、凄まじい熱。
覚悟はしていた。しかしその熱さは、数多の痛みを受けてきた彼でさえ経験したことがないものだった。
一瞬、全てが空白になったような喪失感が、彼を襲う。
状況を把握するため、猛烈な熱を訴えてくる左腕を押さえようとした手が、空を切る。そこに、自分の左腕がない。
左腕は、肩口から切断されていた。
息が詰まる。
自分を中心にして、床に無限の赤が広がっていく。
広がる赤を見た瞬間、先ほどまで左肩があれほど熱かったのに、急激に力が抜け、体が冷たくなっていく。
目の前には──
彼の左腕を切断して奪い取った、黄金に輝く孔雀のような、巨大な幻獣。
孔雀の羽根や尻尾の合間には数多の琥珀がキラキラと輝き、この世のものとは思えないほど美しい──ノクトは一瞬、自分の腕の喪失さえ忘れて、その輝きに見惚れてしまった。
だが遅れて、焼けつくような熱とはまた違う、意識を飲むほどの圧倒的な痛みが容赦なく押し寄せた。
ノクトは思わず歯を食い縛るが、喉の奥から長い苦痛の呻きが漏れるのは留めようもなく──
脈打つ鼓動が、一気に血を押し出し、一打ごとにその命を失わせる。
凄まじい激痛に、冷たい汗が背中を伝い、唇が震えた。
意識だけは手放すまいとした。
だが、すでにそれは混濁し、視界の端が急速に暗くなりはじめていた。
遠くのほうで、穏やかだが厳しく、どこか傷ついているような声が響いていく。
『供物は受け取った。人間よ──貴様が、再び立ち上がるに値する存在だと、証明してみせろ』
これは、幻獣調査団の戦闘エキスパートである《ナイトキラー》、ノクト・アシュベルの物語。
その始まりは、今より前に大きく遡る──




