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『キリトリセカイ』Vol.02(101~200)  作者: 百字八重(ももじやえ)


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148 / 猟区の内側で


猟友会に入って、かなりの年月が経とうとしている。


本州で狩猟が始まるのは11月15日以降だが、ここ北海道では10月1日と、その開始時期は一か月以上早い。

この時期は、冬を前に食欲旺盛となり旨い肉をつけつつあるエゾジカを撃つ。

そんなわけで先日、猟友会の仲間と示し合わせて、二つある猟区の一つである占冠村に行ってきた。


狩猟は、日の出とともに開始する。

まず仲間内で、誰が撃つかを決める。

撃つ人のことを「タツマ」と呼び、その他の、獲物を追い立てるメンバーのことを「セコ」と呼ぶ。

タツマはセコと別れ、ひとり獲物が逃げるルートに陣取って待つ。

セコは、タツマが位置についた報告を無線で受けると、そこから犬などを使って獲物を追い立てる。

見事、獲物がタツマの待つルートへと逃げ込んでくれたらしめたもの、あとはタツマの腕次第というわけだ。


獲物を撃つ場合には、首か頭、心臓を狙う。

この日、タツマであった僕は、迷わず首を狙った。

ちなみに、弾が他の場所に当たったらどうなるか。

一番避けたいのは、骨への被弾。仮に太い骨に被弾してしまうと、骨が砕け散り肉へと入り込み、肉が使い物にならなくなってしまうのだ。

次が、「ハラ撃ち」と呼ばれる内臓系への被弾。もしハラ撃ちをしてしまうと、内容物が飛び散ることになる。そうなると、肉が細菌などに汚染され、糞尿臭くもなり、やはり使い物にならなくなってしまう。

ロースなどの人間が食べる部位に被弾した場合には、その部分に急速に血がまわり、その部位だけ切り離す必要が出て来てしまう。


とにもかくにも、僕の銃の先で、堂々とした雄のエゾジカが一頭、のけぞった。

右手から、セコが放った犬たちが、傷を負い「半矢」となった獲物に食らいつく。

遅れてやってきたセコが、慎重に獲物に近づき、止めを刺す。

すぐさま、セコにより、獲物の頸動脈にナイフがあてられる。

これを「血抜き」という。

ジビエ料理は、この血抜きが9割とも言われ、もしうまく出来ていない場合には、非常に獣臭い肉になるか、最悪、食べられないしろものになってしまうのだ。


そうして今夜、食卓に僕が撃った鹿肉が並んでいるわけだが、年頃の姪っ子や甥っ子などは、「人を撃ったことある?」「殺す瞬間って楽しい?」といった質問で僕を困らせる。

もう何千回と聞いたその手の質問に、僕は生返事をしつつ、改めて狩猟の奥深さに感じ入るのだった。







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