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『キリトリセカイ』Vol.02(101~200)  作者: 百字八重のブログ


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101 / チルチル桜


今年も桜の季節を迎えた。

とはいえ、満開を迎えた四月一日、私はちょうど風邪をひいて寝込んでいたので、桜を見ることは叶わなかった。


床に臥せっているあいだにも、桜はどんどん成長していき、テレビでは連日その様子が報道されていた。

熱さえ出なければ、例年のように、誰よりも先に近くの土手の桜並木を歩いたろうに。

なぜこの時期に限って風邪を引いてしまったのか、心底悔やまれた。


熱がだいぶ引き、そろそろ体力も戻って来たかなという頃、友人の知世さんから電話が入った。

「明日、いつものメンバーで土手まで桜を見に行くのだけど、吉江さんも来ない?あなた風邪で今年まだ見てないでしょう?」

とのこと。

うれしい誘いである。


私は勿論、二つ返事でオーケーを出した。

翌朝、私は朝5時に目が覚めた。

いそいそとキッチンに立つ。

いつものメンバーで集まる時、それが外食などではない場合、大体私か明子さんが手料理を振る舞うことになっているのだ。


そうね、桜の木の下で、散らし寿司なんてどうかしら。

もう桜の散る頃だから、まさに「散る」花と「散らし」寿司とをかけて。

ふふ。

自分の考えたおやじギャグに笑いながら、それを友人たちに今日披露しようと考えて、更に笑いが込み上げてくる。


時計の針が十時をまわった頃、再び知世さんから電話が入った。

「十一時に、お堀近くの東屋で待ち合わせね。今日は私、おにぎり作ったから食べてね」

とのことだった。

聞くと、いつものように明子さんも唐揚げなどを作ってくるらしい。

明子さんらしい、手の込んだ料理だ。

私は「分かったわ、じゃあね」と言って、電話を切った。


外出するためにベランダの鍵を締めようと思い、窓際に近づいたときにふと窓を開けてみると、あたたかな日差しながらも、肌寒さを感じさせる冷たい風が頬をなでた。

「あらやだわ。散らし寿司なんて、冷たいもの、作っちゃった」

私がそうつぶやいた時、近くの枝にとまっているのであろうウグイスが、ホーホケキョと奇麗な声で鳴いた。


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