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異世界にとばされた社畜OLですが、ツンデレエルフと行商ライフを満喫中です!  作者: しらたき 茶々麻呂
04_VS 魅了の魔女 ハル編

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45/246

45_恋バナは突然に

「うぅん、おはようございます……」


「ん」


 ダンジョンで仮眠を取ることになり、女性陣は毛布を分け合って眠っていた。私は最初に目を覚まして、のそのそと這い出と、火の番をしていたビョルンに挨拶した。

 ビョルンさんは短く返事をするだけだったけれど、火にかけた鍋からお茶をいれてくれた。(こう)ばしいハーブティーに、甘い蜜を垂らしたもの。とても温かくて、ほっとする。


「帰り道も気を抜くな。ヌシ攻略した後、魔物たちは大人しいが襲ってこないとも限らん」


「わかりました」


 ビョルンさんの言った通り、行きとは違って帰りはとても穏やかな道のりだった。時々私の鼻先に黄色い蝶々が止まって、少しくすぐったい。


「ビョルンさん。この虫ってなんですか?」


「フライバタフライ。油で()ると美味い」


「えぇっ!? 食べるの!?」


「森の貴重な栄養源だ」


「食いでが無さそうに見えますけど……」


 ふっと笑って差し出される、蝶の羽の素揚げ。透き通るような黄金色に、私はもはや驚かない。受け取って齧ってみると、小魚チップスみたいなコクと塩気があった。


「悪くないだろ」


 少し得意げなビョルンさん。


「んー、悔しいけどおいしいです。オヤツにいいかも」


「軽いから、つい食いすぎる。気をつけろ」


「はぁーい」


 私とビョルンさんの道中は、いつもこんな感じだ。私が質問して、彼は気まぐれに教えてくれる。そんな呑気な珍道中を、レイドさん達パーティは後ろから見守ってくれていた。


「よし、この湖で少し休憩しよう」


 第三階層に来たところで、レイドさんが小さな泉を見つけた。私たちは水辺に腰を落ち着けて、しばしの休憩を楽しむことにする。


「こんな所に湖なんてあったんだ」


 行きは魔物におわれて気づかなかったけれど、このダンジョンは本当に自然が豊富だ。ビョルンさんも色んな素材を集めることができてご満悦(まんえつ)だし、来てよかったと思える。


 私が湖面を見つめていると、シンシアさんが後ろから近寄ってきて、するりと腕を絡めてきた。    


「ねーえ、ルナちゃんは好きな人いないの?」


「へ!?」


 シンシアさんの急な恋バナにひっくり返りそうになった。これまでの道中、雑談めいたことしかしていなかったのに、どうしてそんなことを聞くのか。


「だってぇ、気になるじゃない? ね、リーナ?」


「たしかに気になる」


 リーナさんは私とビョルンさんの顔を見比べて、深く(うなず)いた。まさか、まさか。


「私とビョルンさんのことを(おっしゃ)ってます?」


「いーえ? 私はただルナちゃんの事を聞いただけよぉ」


 心底楽しそうにくすくす笑うシンシアさんだが、目線は完全にビョルンさんに向いている。ビョルンさんと目があった瞬間、わざとらしく視線を逸らされた。耳がぴょこんと動いているので、多分会話は聞こえてる。


 やっぱりシンシアさんは、同族としてビョルンさんに気があるのでは!?


「わ、私たちはビジネス上の関係ですので!プライベートなことは全く! ございません! まだビジネスパートナーとすら呼べるかも怪しいくらいですし!」


 ハンズアップしながら叫ぶと、シンシアさんとリーナさんは顔を見合せてため息をついた。


「なぁんだ、ぜーったい面白いことがあると思ったのにぃ」


 そうは言われましても、という言葉は飲み込む。こういう話題は振られてこなかったから、どう答えたらいいかわからないのだ。

 

「私、これまでそういう経験がなくて…… 」


「もったいない! 人間の寿命は短いんだから、もっと楽しまなきゃ!」


 後方で話を聞いていたレイドさんが困った私を見かねて、シンシアさんを諭してくれる。


「シンシア、なんかその言い方だとお節介なおばさんみたいだよ」


「おばさんですってぇ!? なんて悪いお口なのかしら! そんな悪い子にはファイアボールよ!」


「ちょっと! 本当に撃たないでね!?」


 シンシアさんとレイドさんが(たわむ)れ、リーナさんがきゃらきゃらと笑い、ドゥーガンさんが呆れたようにため息をつく。そんなレイドさんパーティのおかげで、道中の空気が明るいのはとても喜ばしいことだ。


「おい」


「なんですか、ビョルンさん?」


 シンシアさんたちのやり取りを見ていたら、背後からビョルンさんが話しかけてきた。彼から話を振るのは珍しい。


「我々は、ビジネス上の関係だと言ったな」


「そうですね。一応、共に商売をしている間柄ですし……」


 もしかして、嫌だったのかな……?

 不機嫌そうな顔をしているので、なんだか自信がなくなってしまった。謝ろうとして口を開きかけた時、ビョルンさんが息を吸った気配がしたので黙る。彼の言葉は、できる限り聴き逃したくなかったから。


 少しの沈黙の後、ぼそりとつぶやきが聞こえた。


「……で、いい」


 蚊の鳴くような声。あまりにも気が抜けていて、思わず聞き返した。


「え? すみません、よく聞こえなくて」 


「ビジネスパートナー、で……いい」


 それだけぶっきらぼうに言うと、私の返事も待たずに立ち上がって、草をかき分けてスタスタと歩いていってしまった。 


「ちょ、ビョルンさん!? それって、私をビジネスパートナーとして認めてくれたってことですよね!?」


「やかましい」


「もう、待ってくださいよー!」


 私は(ゆる)む口角を抑えられないまま、ビョルンさんの大きな背中を追いかけた。ビョルンさんは心底鬱陶しそうにしていたが、その歩みがいつもより遅いことに私は気づいている。 


 素直じゃないにも程があるでしょう、このツンデレエルフ! 

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