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第4話 ナンバープレート(2)

 その夜、令太はお化けの姿で外を見ていた。1人でいる時は、お化けの姿でいるようにしている。自分はこの姿が好きだ。だって、かわいいし、いろんな力があるから。令太はその力を徐々に好きだと思い始めていた。だが、それを悪い事には使いたくない。誰かのために使いたいと思っている。


「ここに事務所があるんか・・・。どうやったら行けるんやろ・・・」


 令太は思っていた。桜沢がどこに住んでいるのか、知りたいな。そして、ひき逃げ事件の犯人としてスクープしたいな。その為には、事務所に行かなければならない。お化けの姿なら、誰にも気づかれないだろうから、簡単に入れる。だけど、そこに行くにはどうすればいいんだろうか?


 と、令太は思いついた。事務所は御堂筋線の西中島南方駅が最寄だ。そこに行った事がある。地下鉄で行けばいいんだな。


「そや! 御堂筋線や!」


 令太は家を飛び出し、阪堺電車の新今宮駅の方向に向かった。名前は違えど、実質新今宮駅と動物園前駅は同じ駅だと思ったらいい。なぜならば、隣接しているからだ。乗換案内でも言っているし。


 令太は恵美須町停留場に向かう阪堺電車を追い越した。だが、誰も気づいていない。今船停留場を過ぎると、築堤に入る。その先で少し築堤が開けている部分がある。これは南海平野線が分岐していた痕跡だ。平野線は地下鉄谷町線の開業によって廃止になった。分岐してすぐの所には飛田停留場があったが、今船停留場はその代替として設けられたそうだ。


 今池停留場は築堤上にあり、構内踏切がある。この辺りが築堤になっているのは、今池停留場付近で南海電鉄天王寺支線が下を通っていたからで、乗換駅だった。その先で下り坂になり、新今宮駅前停留場に着いた。その横には、動物園前駅につながる地下通路がある。


 令太は改札を素通りして、箕面萱野方面のホームにやって来た。ホームには多くの人が電車を待っている。すぐに、10両編成の電車がやって来た。乗り入れ先の北大阪急行の電車だ。だが、令太は全く気にせず、箕面萱野方面に向かってトンネルを進んでいく。トンネルを電車以外で通るのは、初めてだ。


「こんなトンネルを飛んで通るって、すげーわ」


 進んでいくと、電車が近づいてきた。だが、電車に乗っている運転士や客は、全く令太に気付いていない。令太は逃げるように進んでいく。なかなか面白いな。これも普通ではできない体験だ。


 大国町駅にやって来ると、右から青い帯の電車がやって来た。四つ橋線だ。御堂筋線の赤の帯が大動脈を表しているのに対して、四つ橋線は静脈、そして御堂筋線より海寄りを走っている事から青だ。電車が減速したのに対して、令太はその後も猛スピードで進んでいく。やがて電車は見えなくなった。


 なんば駅、心斎橋駅、本町駅と次々と進んでいき、令太は淀屋橋駅にやって来た。ここが市役所の最寄り駅だ。京阪電車の大阪側のターミナルでもある。心斎橋もそうだが、ここのシャンデリアも立派だ。そして、ドーム型の天井が素晴らしい。


 その先に向かおうとしたら、その先を御堂筋線の電車が走っている。電車は右に左にカーブしながら梅田駅を目指していく。令太はそれを追いかけるように後ろを飛んでいく。だが、誰もそれに気づいていない。こうやって電車を追いかけられるのも、姿を消しているからできる。なかなか面白いな。


 梅田駅、中津駅を過ぎると、地上に出て、淀川を越えていく。左右には道路があり、その真ん中を御堂筋線は走っていく。だが、通っている人は全くお化けに気付いていない。


 淀川を渡ると、そこは西中島南方駅だ。西中島南方駅は高架駅で、その下には阪急電車の南方駅がある。


「ここが西中島南方やったな」


 令太は改札を素通りして、事務所へ向かった。


 令太は事務所の前にやって来た。事務所はすでに営業を終了していて、とても暗い。ここに行けば、桜沢の事がよくわかるかもしれないな。


「ここが事務所か」


 令太は事務所に入った。事務所は静まり返っている。明かりは非常口のランプを除いて消えている。昼間の騒然とした雰囲気がまるで嘘のようだ。


 令太はいろんなものを物色した。だが、桜沢の住所がわかる紙は見つからない。どこだろう。


「どこやろ」


 しばらく探していると、桜沢の住所の書いてある紙を見つけた。


「これや! ここに住んどんか・・・」


 やっと住所がわかった。だが、もう遅い。明日も学校があるから、もう寝よう。住所をメモして、明日から考えよう。




 翌日、令太はいつものように起きた。達郎はテレビを見ているが、どこか真剣な表情だ。


「おはよう」

「おはよう」


 令太は達郎の表情が気になった。いつもはテレビにあんまり注目しないのに、どうしたんだろうか?


「どないしたん?」

「大変やな。芸能人のスキャンダルやて。車いっぱいにスキャンダルの事が書かれてんねん」

「えっ!? マジ?」


 テレビでは、芸能人のスキャンダルがニュースでやっている。よく見ると、車いっぱいに落書きがされていて、スキャンダルの内容が書かれている。とてもひどいなと令太は思った。


「うわぁ・・・」

「ひどいやろ。でもそれが事実なんやで」


 それを見て、令太は思った。桜沢のアルファードにひき逃げの事をいっぱい書いたら、スキャンダルが発覚するのでは? そして、ひき逃げの事がばれるのでは?




 その日の夜の深夜、令太は桜沢の家にやって来た。家は立派な豪邸だ。まさかこんな家の主人がアルファードでひき逃げを起こしたとわかると、とんでもないスクープになるだろうな。


「よし! やってやろう!」


 令太はマジックペンに化けて、様々な落書きをした。その内容は、ひき逃げの事ばかりだ。


「イヒヒ・・・」


 令太は想像していた。翌朝、桜沢はとんでもない事になるだろうな。




 翌朝、令太は何事もなかったかのように目を覚ました。今日は休みだ。のんびりしていよう。だけど、自分には勉強しかない。自分は私立中学校を目指す未来しかないんだ。そこを目指して、偉い人になるんだ。


「おはよう」

「おはよう」


 令太はテレビを見た。そこには、桜沢が映っている。ひき逃げに関するスキャンダルのようだ。まさか、自分がやった事でこんな事になるとは? いけない事だが、ひき逃げを隠すのはもっといけない事だ。


「えっ!?」

「市議会議員さん、大変やな。ひき逃げの犯人やと疑われたんやて。もしそれ事実なら、とんでもない事やね。退職とか、逮捕とか。ほんまなら、雑誌とか回収されるんかな?」


 達郎は心配していた。桜沢はカスタムカーのミーティングでよく会っていたし、とても仲が良かった。まさか、桜沢があのアルファードでひき逃げをしたとは。とても信じられないな。


「きっとそうやろな」


 令太は何も知らないかのような態度で朝食を食べ始めた。達郎は真剣にそのニュースを見ている。




 昼下がり、勉強の合間の休憩とおやつでリビングにやって来た。すると、達郎が見ている。この時間帯は非番のようで、2階に来ているようだ。達郎はワイドショーを見ている。まさか、市議会議員の事だろうか?


「あれっ、朝、ニュースで見たあの市議会議員」

「ひき逃げが事実やったんやて」


 調べた結果、桜沢のひき逃げ疑惑は本当のようだ。令太は驚いた。こんな偉い人が、ひき逃げをするとは。とても信じられないな。


「せやったんか・・・」

「退職やて。こりゃ、警察に捕まるな」


 達郎は思っていた。これほど悪い事をしたんだから、退職だろうな。そして、逮捕されるだろうな。もうミーティングで見られないのは残念だが、こんな事件を起こしたんだからしょうがないな。




 その夜、令太は葬儀屋にやって来た。あの洋子さんは今でも葬儀屋にいるんだろうか? もしいたら、桜沢がやった事実を知って、どう思うだろうか?


「あの人、今もおるんかな?」


 令太は葬儀屋をうろうろした。だが、洋子はいない。どこに行ったんだろうか?


「あれっ、おらへん・・・」


 出ようとしたその時、入口の前に洋子がいる。やっと見つけた。


「あっ・・・」


 令太は洋子の後ろにやって来た。だが、洋子は気づいていない。


「ねぇ」


 洋子はその声に反応して、振り向いた。そこには先日あったお化けがいる。


「あら、あんたあの時の」

「ひき逃げした人、わかったで。市議会議員やったんやて」


 それを聞いて、洋子は驚いた。こんなすごい人がひき逃げをするなんて、信じられない。


「そんな人が?」

「うん。で、その人、退職したで。近々捕まる思うけど」


 それを聞いて、洋子はほっとした。やっと犯人が見つかったからだ。


「そうなんや。おおきに。これで心置きなく天国に戻れるわ」


 そして、洋子は天国に帰っていった。令太はその様子をじっと見ている。僕もいつか、ああいう風に天国に行くんだろうか? それはいつになるんだろう。その時まで、人生を一生懸命生きよう。そして、天寿を全うしたら、両親と再会しよう。

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