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第2話 とりつきできるかな?(1)

 ある朝の事だ。先日の強盗の話も落ち着いてきて、へんげ屋はいつも通りの日々を迎えている。令太も文也も花子もいつも通りの朝を迎えている。


 令太は野良犬を見ている。自分がお化けに変身できると知ってから、気になっている事がある。お化けの能力に、動物にとりつくというのがある。とすると、僕はこの野良犬にとりつき、操る事ができるんだろうか? 自分としては、よくない事だと思っている。でも、もしできるのなら、試してみたい。


「うーん・・・」

「どないしたん、野良犬見て」


 令太は振り向いた。そこには花子がいる。ここ最近、令太の様子がおかしい。よく野良犬や野良猫を見ている事が多い。どうしたんだろうか?


「い、いや。何もないて」


 令太は焦っている。お化けに変身して、とりつけるんじゃないかと思っているんだと言ったら、みんなびっくりするだろう。お化けに変身できるのは、誰にも言わないようにしよう。それだけでも、大事件になるだろうから。


「ふーん・・・。変やね」

「ごめんごめん・・・」


 そろそろ通学団が小学校へ向かう時間だ。


「ほな、行くで!」


 通学団は小学校に向かって出発した。令太はいつも通りの表情で登校していた。だが、心の中では思っている。僕は本当に動物にとりつけるんだろうか?


「先日、へんげ屋さんに入った泥棒、今も変な妄想しとるし、しまいにはお化けの仕業やと言い始めたんやて。令ちゃん、どう思っとる?」


 元子は、先日へんげ屋に入った泥棒が変な妄想をしている事が気になった。いまだに泥棒は、お化けの仕業と言っているのだ。そのお化けが目の前にいるのに、元子は全く気付いていない。


「アホらしいわ! お化けなんてこの世におらへんやろ! アホアホしくて、たまらんわ! ♪お化けなんてないさ お化けなんてうそさ」


 令太は高笑いした。あまりにもアホらしい妄想だからだ。まるで、自分がお化けじゃないのを高らかに言っているかのようだ。それを見て、元子も笑った。あまりにもアホらしい妄想だと思っていた。


「そうやよね! 令ちゃん着メロにしとるやん!」


 確かにそうだ。令太はスマホを持っていて、その着メロを『お化けなんてないさ』にしている。お化けに変身できるというのに。




 正午ごろ、ここはへんげ屋。ランチタイムを迎え、今日もいつものように近所の人が来ている。いつも通りのお昼の光景だ。


 と、そこに1人の女性がやって来た。その女性は美人で、美しい服を着ている。


「いらっしゃい!」

「すじこんネギ焼ちょうだい!」

「かしこまりました!」


 女性は椅子に座った。と、そこに1人の男がやって来て、女性の隣に座る。男はサングラスをかけていて、どこか怪しい雰囲気だ。そして、女性をじっと見ている。


「うーん・・・」


 船木は首をかしげている。あの男を不審に思っているようだ。どうしたんだろうか?


「どないした?」


 達郎は船木の表情が気になった。あの男が気になるんだろうか?


「あの人、令ちゃんが通っとる学習塾の先生やよね。いっつもあの人が横におるんやけど、なんなん? なんか怪しい思わん?」


 この女性、江村洋子えむらようこは令太が通っている南海なんば駅近くの学習塾の先生で、この近くに住んでいる。令太もその事をよく知っている。船木は横にいる男が気になっていた。ここ数か月、ずっと江村の横にいる。一体誰だろう。とても気になる。


「うーん、わからんなぁ・・・」


 達郎は気になった。どうしていつも江村の隣に座るんだろうか? 江村はすでに結婚していて、娘が1人いる。あの男は夫ではない。達郎も怪しく思っていた。




 午後4時になり、下校時刻になった。令太と文也は普通だったら一緒に帰る。だが、今日は道が違う。北天下茶屋停留場の方向に向かうのだ。


「じゃあねー、バイバーイ!」

「バイバーイ!」


 と、元子は不思議に思った。今日は令太の帰る道が違う。どこかに立ち寄っていくんだろうか?


「あれっ、令ちゃん道ちゃうよ」

「いやいや、今日は難波の塾に行くんや」


 令太は週に1回、学習塾に通っていて、この時は北天下茶屋停留場の踏切を抜けて、天下茶屋駅に向かう。そこから南海電車に乗って、南海なんば駅へ向かう。


「あー、塾か。南海電車に乗るん?」

「うん」


 やっぱりそのようだ。令太は本当に勉強熱心だな。そう思うと、自分も頑張らないとと思えてくる。


「気ぃつけてね」

「おう。まぁ、帰りは天下茶屋からおじさんが送ってくれるんやけどね」


 帰りは遅くなるので、天下茶屋駅から実家までは達郎が送る事になっている。安全のためだ。


「じゃあ、バイバーイ!」


 令太は天下茶屋駅に向かっていく。この辺りは松田町停留場の周辺と同じく、細い道が多く、建物が密集している。そして、古い建物が多い。令太は周りに気を付けながら歩いていく。お化けに変身すれば、まっすぐ南海なんば駅に行けるが、その力を使うとみんなが大騒ぎになる。なので、歩いて天下茶屋駅に向かおう。


 と、北天下茶屋停留場の踏切の前で、1人の小学生を見つけた。同じく難波の学習塾に通っている坂上大輔さかうえだいすけだ。2人は幼馴染で、お互いの事をよく知っている。


「あっ、大ちゃん!」

「おう」


 2人は一緒に歩き始めた。2人は学年は違うけれど、塾に通う時はこうして一緒に向かう。


 しばらく歩いていると、大きな高架駅が見えてきた。天下茶屋駅だ。明治18年に開業したという歴史ある駅だ。地上駅だった頃にはここから天王寺駅まで天王寺支線が延びていた。だが、新今宮駅の開業で乗客が減少し、さらに高架化工事の影響もあって、天王寺支線は1984年に天下茶屋駅と今池町駅の間が、残った今池町駅と天王寺駅間も1993年に廃止になったという。全線廃止になった翌日、地下鉄堺筋線が天下茶屋駅まで延びたという。


 天下茶屋駅には多くの人が来ている。ここは南海本線と高野線の事実上の分岐駅で、全ての電車が停まる。2人はIC乗車券PiTaPaを使って、改札機を通った。タッチすると、ひよこの鳴き声が聞こえる。子供のIC乗車券の特徴だ。


 南海本線のホームにやって来ると、様々な電車がやって来る。最初にやって来たのは、なんば駅に向かうラピートβだ。この電車には特急券がいる。別料金がかかるので2人は乗らない。


 次にやって来たのは普通電車だ。2人は普通電車に乗った。普通電車は南海なんば駅に向かって走り出した。南海本線の次の駅は新今宮駅だ。途中には萩ノ茶屋駅があるが、その駅は高野線だけにホームがあり、各駅停車しか停まらない。それに、新今宮駅の先には今宮戎駅があるが、その駅も高野線だけにホームがあり、ここも各駅停車しか停まらない。


 電車は南海なんば駅に着いた。なんば駅は9面8線の広いホームで、南海本線と高野線がそれぞれ4線ずつ使っている。南海本線の一番端のホームはラピート専用のホームになっている。


「さて、着いた」


 2人はなんば駅に降り立った。その時、坂上のスマホが鳴った。どうしたんだろうか?


「あれっ!?」


 坂上はスマホを出し、画面を見た。母からだ。どうしたんだろうか? 坂上は電話に出た。


「もしもし」

「あっ、大ちゃん、そこに令ちゃんもおるよね」


 令太の事だ。令太は北天下茶屋停留場の辺りから一緒にいる。それがどうしたんだろう。


「うん。どないした?」

「父さん、急に残業が入って、帰る頃に天下茶屋に来れなくなったん。だから、令ちゃんのおじちゃんの車で送ってもらって。おじちゃんにはもう言っといたからね」


 坂上は驚いた。いつも天下茶屋駅から送ってもらっているけど、今日は達郎の車で送ってもらう事になったからだ。達郎の車は知っていて、何度か乗った事がある。電飾が印象的な黒のヴェルファイアだ。


「うん! じゃあね」


 電話が切れると、坂上は電話を切り、スマホをしまった。


「どないした?」


 令太は気になった。坂上の父に何かあったんだろうか?


「令ちゃんのおじちゃんの車で送ってもらってって。父ちゃん、残業が入ったらしくて、帰る頃に天下茶屋に来れなくなったんやて」


 残業で天下茶屋駅に着く時間に来れなくなったのか。これは仕方ないな。達郎の車で送ってもらうしかないのか。


「そうなんや・・・。まぁ、ええやん」

「さて、塾行こか」


 2人は学習塾に向かった。

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