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第10話 遅刻にお仕置き!(1)

 ある土曜日のお昼の事だ。へんげ屋はランチタイムで、多くの客がやって来ている。この日は学校が休みという事で、令太が皿洗いをしていた。だが、常連は全く気にしていない。それが普通だと思っているようだ。令太はそのせいか、常連とはとても仲が良い。優等生で、友好的で、誰にでも気軽に話しかける令太はとても気に入られている。だが、彼らはもちろん知らない。令太はお化けに変身できるという事を。


 そこに、1人の女性がやって来た。この近くに住む女性、畑中純子はたなかじゅんこだ。純子は小学校6年生になる畑中健人の母だ。いつもは健人と一緒にこの店に来ているが、今日はなぜか来ていない。どうしてだろうか? 平吉はおかしく思っている。


「いらっしゃい!」


 カウンター席に座った純子は、ちょっとあきれたような表情だ。どうしたんだろうか? 皿洗いをしている令太もその表情が気になった。


「すじこんねぎ焼きとビールね」

「かしこまりました!」


 昼間からお酒を飲むとは。よほど何かに悩んでいるんだろうか? 家族も従業員も純子の表情が気になっていた。


 すぐに平吉が瓶ビールとコップ、栓抜きを持ってきた。


「生ビールです!」

「おおきに」


 平吉は栓抜きで瓶ビールの栓を開けた。すぐに純子はコップにビールを注ぎ、飲んだ。あっという間にコップに入ったビールが空になる。だが、純子は満足しない様子だ。何があったんだろうか? 平吉はますます気になった。


「はぁ・・・」

「どないしました?」


 平吉は気になったので、純子に話しかける事にした。その隣では達郎がねぎ焼きを焼いている。集中しているが、達郎も純子が気になっている。


「うちの息子、夜遅くまでゲームしてるんよ。で、夜更かしでなかなか朝起きんのよ」


 健人はテレビゲームが好きで、やりだしたら止まらないという。依存症じゃないかと思うぐらいだ。深夜までやっていて、朝早く起きれないという。起きるのはたいてい8時30分だ。小学校が始まる時間だ。その話を聞いていて、令太はとんでもないなと思った。いっつも遅刻していて、怒られているんだろうなと思った。


「ほんまか?」

「おう」


 と、純子は天井を見た。上には平吉の孫、文也がいる。文也もテレビゲームが好きだが、深夜までやるほどではない。メリハリをつけてやっている。決まった時間に起きて、遅刻をしない。それに比べて遅刻ばかりの健人にはあきれていた。


「文ちゃんもゲーム好きやけど、決まった時間に寝るで」


 純子は再びビールをコップに注ぎ、あっという間に飲み干した。よほどイライラしているようだ。今日は友達と一緒にテレビゲームをしていて、来ないという。


「ゲームって、やりだしたらやめられなくなるんよね。みまもりスイッチ使ってもまたやるもん」

「ひどいな・・・」


 平吉はひどいなと思っている。自分だったら注意して、電源を切るなどして、ゲームをやめて寝るように言うのに。どうしてそこまで叱らないんだろうか? 甘やかしているんだろうか? そろそろ喝を入れるべきではと思った。


「どないしよう」


 だが、平吉はどうしようもないなと思っていた。何度注意されてもやるのだ。そして、やりだしたら止まらない。どうすればテレビゲームを深夜までやるのをやめるんだろう。わからないな。


「どうしようもないわ。注意するしかあらへん」


 純子はため息をついた。そしてまたビールを飲む。あっという間に瓶ビールは空になった。


「そやね。ウチ、何べんも注意してんのに、やるのよ。どうにもならんのよ」

「うーん・・・」


 令太はそれが気になっていた。何とかしてやりたいな。でも、どうすればいいんだろう。全くわからないな。どうすればやめるんだろうか? 悪夢を見せるか? それとも、何かに化けて起こすか? はたまた、冷たい手を伸ばして起こすか? 令太は悩んでいた。




 翌週の月曜日の放課後、、令太は職員室に向かっていた。運動場や教室、廊下で遊んでいる生徒もいれば、下校している生徒もいる。だが、令太は1階の職員室に向かっている。健人の事でだ。健人は文也の同級生だ。担任の先生が誰なのかは知っている。机の位置も知っている。先週土曜日の事を言わなければ。


 令太は職員室にやって来た。そこには、6年1組の担任、鈴木魁人すずきかいとがいる。鈴木は机でのんびりとしていた。次の授業の準備はすでにできている。次の授業も頑張らないと。


「失礼します」


 令太は鈴木の元にやって来た。だが、鈴木は気づいていない。スマホを見て、何かに夢中になっている。何に夢中になっているんだろうか? 令太は気になっていた。


「鈴木先生」


 その声を聞いて、鈴木は我に返った。突然、令太に話しかけられた。令太がここに来ている事を全く知らなかった。


「おう、三浦、どないした?」


 鈴木は令太の事をよく知っていた。文也と同居しているいとこだ。時々、週末にへんげ屋の皿洗いをしているし、文也と一緒にいる事が多い。


「畑中健人くん、知ってます?」


 それを聞くと、鈴木の表情が変わった。健人の事をよく思っていないようだ。令太は思った。遅刻ばかりしているから、こんな表情を見せているんだろうか?


「知っとるわ。あの遅刻の常習犯やろ?」


 やはりそのようだ。遅刻の常習犯というんだから、いつも遅刻ばかりしているんだろう。令太は腹が立った。これは何とかしないとな。


「遅刻ばっかりしてるんですか?」


 鈴木は厳しい表情になった。相当頭に来ているようだ。


「ああ。いっつも1限目の終わりに来るんよ。お母さんには注意したんやけどね。その子がどないしたん?」

「あの子、夜遅くまでゲームをして、夜更かししてるらしいんです」


 それを聞いて、鈴木は驚いた。そうだったのか。深夜までテレビゲームをして、寝るのが遅くなって、寝坊しているんだな。鈴木はその理由を全く知らなかった。どこでその話を聞いたんだろうか? まさか、へんげ屋で皿洗いをしていた時にそれをたまたま聞いたんだろうか?


「そやったんか。なんでそれ知ったん?」

「実家の鉄板焼き屋さんでたまたま聞いたんです」


 やはり、へんげ屋で聞いたようだ。と、鈴木はへんげ屋を思い出した。ここ最近、へんげ屋に行っていない。たまには行きたいな。あそこのお好み焼き、とてもおいしいから。


「あー、へんげ屋さんね。あそこのお好み焼き、うまいね。何はともあれ、情報おおきに」

「どういたしまして」


 令太はお辞儀をした。と、鈴木はスマホである物を見て、大笑いしている。職員室の一部の教員も、それが気になっている。


「ハハハハハ・・・」

「何見てるんっすか?」


 令太は気になった。一体何を見て、大笑いしているんだろうか? 吉本新喜劇だろうか? それとも、漫才だろうか? また別の面白い動画かな?


「これ? 早朝バズーカ。朝早くに芸能人をバズーカで起こすやつ。超新塾のアイクぬわらって、これを見て日本で芸人になりたいと思ったらしいで」


 令太は早朝バズーカの事を全く知らなかった。令太は21世紀になって生まれた。早朝バズーカは1990年代のバラエティ番組のネタだ。こんなのがあるんだ。どんな内容なんだろう。とても気になるな。


「へぇ・・・」

「どや、三浦にも見せたるで」


 鈴木は笑みを浮かべている。誘われたからには、一緒に見ないとな。


「ありがとうございます」


 令太は見始めた。見ているのは、オスマン・サンコンが早朝バズーカを食らう所だ。午前6時30分、カモフラ柄の3人の男が家に侵入して、寝ているオスマン・サンコンに向かって3人がバズーカを発射する。その音に驚いたオスマン・サンコンが起きるという動画だ。初めて見たが、なかなか面白いな。


「ハハハハハ・・・」

「おもしれぇやろ!」

「おう!」


 と、令太は思った。この早朝バズーカで健人を起こせないだろうか? 作戦はこうだ。令太はお化けの姿で畑中家に入り、健人の部屋に入る。バズーカに化けて、バズーカを撃って健人を起こすという物だ。早速、明日の早朝、やってみよう。

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