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~清澄白河のマラソンコースで~

「わん!!わわん」


「ん。ビクトル、おはよう。浅井さんもおはようございます。」


「公一くん。おはよう。今日も朝早いね」


東京の東側に位置する、清澄白河駅の近くに自宅を構える藤堂公一は、毎朝の走り込みを日課としてた。11月の早朝は、とても寒く空気が綺麗だ。毎朝のマラソンコースで会う紳士風の壮年の男性は浅井と名乗り、毎朝挨拶する中になって一年ほどたつ。


公一の自宅兼職場であるレストランのビルのオーナーが浅井であったことは、本当に公一にとって運が良かった。一階に飲食店用の空きスペースを見つけたときに、公一はまだ早いような気がしたが、独身で彼女をいない身軽なことからレストランの開業に踏み切った。それがちょうど一年ほど前であった。


浅井は、ビルのオーナーではあるが仲介業者の不動産の担当者から話を聞いていただけで、実際に浅井に会うことはないままレストランの開業に至った。浅井と出会ったのは、開業後に祝いの花束を持ってきてくれた際に挨拶をしたときであった。まさか祝いに来てくれるとは予想していなかったため、公一はとても嬉しく思ったものだ。公一の父親より少し年上である浅井の優しい笑顔に、ほっとしたのもあった。


開業後は、体力づくりのためにも毎朝の走り込みを自分に課していた公一は、いつものコースに犬を連れてベンチに座る浅井に気が付き声を掛けた。祝いのお礼を伝え、公一がレストランを開業できた喜びを素直に浅井に伝えると浅井も自分のことのように喜んでくれた。


穏やかな二人に気質が合ったのか、毎朝の挨拶とお話しタイムは一年続いている。

レストランも順調に売り上げを伸ばしはじめ、ビルの立地と清澄白河という街が年々女性に人気のカフェスポットして特集され始めた時期でもあり、カフェ目的で利用するお客様も公一のレストランにはたくさんいた。ありがたいことに順調に開業できたことに山梨の実家の両親も喜んでいた。一人息子の心配を何年もしていたものだから、両親にはいつか恩返しできればという思いが公一にあった。


レストランの経営は、まだまだ若い公一ひとりでは分からないこともあり、同郷の先輩が東京で花屋をやっていたので、今もよく相談に行っている。


そんな先輩からのめずしいお願いが、そういえば今日だったな。と思い出しながら浅井と別れ、走り込みを続けるのであった。まだまだ今日一日は長い。ゆっくり準備して最高の演出をしよう。



公一の頭の中では、本日の仕込み段階をはじめていた。

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