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平凡貴族の日常談  作者: ロイ
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リリア救助

「……久しぶりにやらかしましたね」


 ロイは訓練場の外に設けられた避難用の塹壕に身を隠しながらぼやく。

 以前ロイが横暴な貴族にからかわれた際は、街が一つ消し飛ぶのではないかというほどの魔術を行使して、三人がかりで抑え込むことになった。

 その時は代償としてリリアは三日三晩昏睡、ロイは両腕の骨折、アレンは愛用の剣の破損、トリスはろっ骨にひびが入ることとなった。

 その際ロイが一番重症だったのはリリアに抱き着いて、どうにか止めようとしたせいであり、リリア自身は魔術の反動と、ロイに抱き着かれたことによる極度の緊張が原因だった。


「あの、これどうするんですか」


 過去の惨事を知らないリアナが不安そうに尋ねる。

 頭を抱えながら、どうするかと天を仰いぐ。


「目をそらさない」


 しかしそれも直ぐに指摘され、渋々リアナに視線を戻した。


「以前止めた時は怪我人が数百人、死者こそ出なかったけれど再起不能が1人、それからこの訓練場が20個くらい収まりそうな町が一つ地図から消えました。

その時は持ちうる財力と権力総動員で対処したため大きな問題にはならなかったのですが……」


「それは……どうなの」


「僕とトリス兄さん、リリアは疲労と怪我でひと月はまともに動けませんでした。

アレン兄さんは愛剣が折れた事によるショックで半月、処理に追われた父さん母さんを中心とした方々は不眠不休で働き続けた結果丸々7日間寝続けてました」


 ロイの口調は、当時を振り返るようななつかしさを感じさせたが爆音の響く現状はそれどころではない。

 いつ人が死んでもおかしくないうえに二度も街を消し飛ばしたとなれば責任問題も免れない。


「魔力の量だけ見れば今のリリアは……当時の8倍くらいでしょうかね」


 魔力量、書いて字のごとくその個人が保有する魔力の量でありその大小によって魔術を行使できる時間、規模、威力が変わってくる。

 リリアの場合常人の数倍の魔力を持っており、わかりやすくいうなれば一般市民は手榴弾、リリアはミサイル程度の差がある。


「それはそれは、随分絶望的な数字ですね」


「そうですね、なんにせよこのままではこの町とマーキュリー家が歴史から消える可能性があります。

どっかの誰かさんの不用意な一言が原因で」


「……あれは、言いにくいですがリリア嬢が直情的すぎるのでは? 」


「否定はしません」


 あえて否定する事でもない、そう割り切ったロイは一度会話を区切る。

 そして手にしているものを見てため息をつく。


 睡眠薬、それも強力なもので一粒飲めば丸一日は眠り続けるであろう代物だ。

 以前リリアが暴走した際に、同じようなことが起こった際のことを考えて用意していたものだ。


「原因は僕の監督不行き届き、そしてリアナ殿の不用意な一言、レイナ殿は連帯責任という事で」


「私の理由が適当すぎませんか」


 ロイの言葉にレイナが反応を示す。

 しかし何を言っているんだといわんばかりにロイは首をかしげた。


「婚約者と実の妹が引き起こしたことですよ」


「……縁を切ろうかしら」


 二人を見比べて、ため息をつきつつも持っていた武器を握りなおす。

 そして、覚悟を決めたかのように腕をまわして塹壕から顔を出してすぐに戻る。


「命がけですけど……まあいいでしょう。

策を聞かせてください」


「正面突破」


「実家に帰らせていただきます」


 ロイの言葉にレイナが抗議の声を上げる。

 しかしそれを無視してロイは立ち上がり、顔面でリリアの魔術を受け止めることとなった。

 本来なら即死物の威力だが、ロイは気にした様子もなく訓練場の中のリリアがいるであろう方向を見つめる。


「僕は血縁者ですからね。

魔力の方向性が似通っているのでこの程度の魔術ならほぼ無力化できます。

……結構痛いですけどね」


 そう鼻血を流しながら言ってのけるロイに、リアナは愕然としていた。

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