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平凡貴族の日常談  作者: ロイ
18/24

捜査開始

「おはようございます、今日は簡単な試験を行います」


 朝一番に教室でロイはそう告げた。

 試験、全員の顔が曇るが気にする様子もなくカッカッと音を立てて黒板にチョークを走らせる。


「では、この三つの課題を順に見せていただきます」


 ロイが黒板に書いたのは3つのことだった。

 1.光・闇どちらかの属性魔術を行使せよ、光は光源として使えるレベルである事、闇は背後が透けて見えないこと。

 2.炎・風・土・水の魔術を行使せよそれぞれの基準は異なる。

 3.二種類以上の魔術を行使して30分待機せよ、上記1と2の条件を満たした魔術である事。


 これらの問題は、落後者と呼ばれた者たちが行うレベルではない。

 はっきり言ってしまってリリアたちの通う最上級クラスの人間が行うものだ。

 特に3番目の課題に至っては、最上級クラスのトップメンバーでもない限り不可能だろう。

 なおその際にリリアは規格外なので除外する。


「では、スタートです」


 ロイはそう言って生徒たちに魔術の行使を促す。

 生徒たちは号令に合わせて各々魔術を発動させるが、ロイは教壇から一歩も動かない。


「……はい、キッシュさん課題2不可。

ガルザくん課題1不可。

テイクさん課題3不可」


 しかし次々と生徒に不可の判定を出していくロイは、教室の全貌を把握していた。

 少なくとも生徒が何の魔術をどれくらいの威力で行使しているのかくらいは手に取るようにわかった。


「えーと、3つ合格は7人ですね。

では合格者の皆さんは全員別々のグループに入ってください。

そこで僕のアシスタントをお願いします。

流石に全体の底上げはこのあたりで打ち止めでしょうから、ここからは個々の技量を延ばす必要がありますからね」


 課題に合格した7人はそれぞれが話し合い、そして適していると判断した班に向かった。

 そして次の指示をくれと言わんばかりにロイを見る。

 一部の生徒はいまだにロイに反発しているがそれでも技量が上がっているため何も言えないという状況であり、そちらの対処もしなければいけないロイには手が足りなさすぎるのだ。


「では今日は自習とします。

みなさん、今回の合格者からコツを教わってください。

次の試験は来週の頭です。

そこで合格できなかったら……まぁ地獄ですね」


 ロイの言葉にブルリと身を震わせた者たちはすぐさま魔術を行使できる姿勢を取った。

 そして部屋から出ると同時に教室の中から魔術を行使した際に発生する余波を感じ取る。


「……さて」


 一度廊下を見渡し、周囲に誰もいないことを確認してから最上級クラスの方角へ歩みを向ける。

 リリアがどんな授業を受けているのかはもちろん、内向的な彼女が馴染めているかという事も気になる。

 それ以上にあの教室は何かおかしいという直感もあったがそれは外れてほしいと願っていた。


「……意外とうまくやってるみたいですね」


 教室の中央で魔術を行使して見せているリリアを見て呟く。

 同時にその隣にいたレイナとも目があい、小さく手を振られた。


 おそらく大丈夫だという意思表示なのだろう。

 少なくともロイにはそう見えた。


 それならば、と思い踵を返して教員室を目指す。

 捜査とは名ばかりの行き当たりばったりの散歩になってしまっているがそれはそれで問題ない。

 そう思いながら廊下に足音を響かせた。

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