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平凡貴族の日常談  作者: ロイ
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 それからは地獄のような忙しさだった。

 まずロイは兵士たちと並んで、波打ち棘が生え溶解しと散々なことになってしまった地面を均した。

 またリアナは多少の魔術知識があるため、破損した対魔術加工の壁のチェック。

 これは意外と面倒な作業だったらしく、リアナはぐったりとしていた。

 最後に身軽さを生かしたレイナがガラスの張替えを行って、当面の修復は完了した。

 最もこれから大改修を行う必要があり、その手続きにロイが三日三晩不眠不休で書類とにらみ合うことになったが、それでもリリアが責任を取るようなことにはならなかった。


 むしろロイが暴走する前に止められなかったことの方が問題視されたが、最終的にはロイとその婚約者が暴走を止める為に身を粉にして働き後始末までしたという事で無罪放免となった。


「……という事で報告を終わります」


 以上が事の顛末だと報告書を読み上げたロイは、背中に冷たい汗が流れていることを感じながら書類を手渡す。

 その相手はロイ性質の所属する国家、ダイヤ皇国の王であるロドリゲス・サーシャ・ダイヤモンドである。

 国は民であり民なくしては国ではないと豪語する彼にとって、街を一つ消したことのあるリリアは要注意人物であり、また再び同様の事件が起こりそうになった後いうのは聞き流すことのできない事件だった。


「理解した。

此度の件、身心不安定に陥っていたリリアの暴走は不問。

また事情を理解していなかった貴公の婚約者についても不問とする。

しかしその双方を把握していたにも拘らず、このような結果を招いた奇行を罰せなければならない」


「承知しております」


「故に、ロイ・トマス・マーキュリーには全ての任を解き、新たな任を与える」


 すべての任を解く、つまりは今まで携わっていたすべての仕事から身を引けという事だ。

 それは実質的なクビであり、この国の法律上は3カ月間貴族としての仕事を行わなかったものは爵位剥奪さえあり得る。


「ロイ・トマス・マーキュリー、貴公は皇国の魔術学院に教員として着任、またリリアと貴公の婚約者の二人は生徒として入学。

今後暴走を引き起こさないための訓練と社交性の二つを身に着けさせよ。

これは貴族としての仕事であり、おろそかにすることは許さん」


「承りました、このロイ尽力させていただきます」


 内心打ち首さえあり得ると、どうしたものか頭を抱えていたロイにとって今回の処罰は非常に軽いものだった。

 それどころか魔術学院、つまりは魔術について学べる場所へリリアを入学させられること、さらにそれを管理下に置けるというのは非常に喜ばしい話だった。

 唯一の問題といえばリアナとレイナの二人も入学するという事くらいだろう。


 魔術学院は魔術の才能を持った者のみが入学できるが、そもそも魔術の才能が開花する時期は差がある。

 例えばロイが魔術を使えるようになったのは彼が15の時だが、リリアは4歳で魔術を使えるようになった。

 過去の例ではリリアは最年少だが、最高齢は84歳で魔術に目覚めた者もいるらしく、学院も年齢の上限は設定していない。

 代わりに18歳から入学できるという下方限度は定められている。

 これは魔術を扱うには心身ともに成長した状態でなければならないという定説に基づいている。

 それ故に、リリアは入学する事が出来ていなかったが此度国王直々に命令が下されたためその常が覆された。


「それにしても教員か……向いてないよなぁ」


 家族の待つ屋敷へ帰る馬車の中で一人愚痴る。

 しかし本人だけは気付いていないが、トリス、アレン、ロイ、レックス、リリアの誤認の中で最も人を育てることに向いているのはロイだ。

 そもそも本人曰く他の兄妹と比べて平凡、普通の観点でも凡才と称しているが貴族内ではそれなりの才能があり一部では万能とまで称されいている。

 だからと言って兄妹たちはそれだけで勝てるほど生易しくなく、むしろ特化している分ロイが押し負けてしまう。

 故に自分の力をどう使えば効率が良いか、という事を知り、相手を知り、どうにか五分の戦いに持ち込んでいるロイだが、その分考えるという行為に慣れており、教育という形で兄妹にそれを伝える事にも慣れている。

 そのため教員というのはある意味ではロイの天職ともいえる。


「とりあえずリリアを基準にするのは無意味ですよね……あれは規格外ですから」


 向いてないとは口に出しながらも教員としてどのような教材をそろえればいいかを考え始めたロイに、御者は何も言うことなく馬を走らせた。

 その道中何度かこの人の基準は少しずれていると思いながらも。

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