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透明都市アーカイブ―愛を売った男たち―  作者: 秀人


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第百四十六話 自分の人生

“自分で選ぶ”ということは、失敗する可能性ごと引き受けること。

でも人は時々、“後悔しないため”に生きたくなる。

 昼過ぎ。


 


 


 透明都市には、柔らかい冬の日差しが差していた。


 


 


 黒い店の窓際で、レンはぼんやり珈琲を飲んでいる。


 


 


 スマホは、テーブルへ伏せたまま。


 


 


 美月からは、まだ連絡が来ていなかった。


 


 


 でも。


 


 


 不思議と、前みたいな焦りはなかった。


 


 


 怖い。


 


 


 もちろん。


 


 


 失うかもしれない。


 


 


 選ばれない可能性もある。


 


 


 でも今は。


 


 


 “相手の人生ごと奪いたい”とは思わなくなっていた。


 


 


 その時。


 


 


 店のベルが鳴る。


 


 


 入ってきたのは、高校生くらいの男の子だった。


 


 


 少し不安そうな顔。


 


 


 制服姿。


 


 


 男の子は、恐る恐る席へ座る。


 


 


 アカネが、いつもの柔らかい声で聞く。


 


 


 「どうしたの」


 


 


 男の子は、しばらく迷っていた。


 


 


 やがて。


 


 


 ぽつりと呟く。


 


 


 「……夢、諦めた方がいいのかなって」


 


 


 店内が静かになる。


 


 


 男の子は続けた。


 


 


 「親にも反対されてて」


 


 


 「友達にも“現実見ろ”って言われて」


 


 


 膝の上で、拳を握る。


 


 


 「でも、まだやりたいんです」


 


 


 その姿を見ながら。


 


 


 レンは、ふと気づく。


 


 


 恋愛も。


 


 


 人生も。


 


 


 多分、根っこは同じなのだ。


 


 


 “自分で選ぶ”ということ。


 


 


 その時。


 


 


 アカネが静かに聞く。


 


 


 「君は、どうしたいの」


 


 


 男の子が顔を上げる。


 


 


 アカネは続けた。


 


 


 「失敗するかもしれない」


 


 


 「後悔するかもしれない」


 


 


 「でも」


 


 


 少し間。


 


 


 「“誰かに決められた人生”って、結局どっかで苦しくなるのよ」


 


 


 その言葉が、レンの胸へ静かに落ちる。


 


 


 誰かの期待。


 


 


 誰かを傷つけない答え。


 


 


 正しい選択。


 


 


 そういうものだけで生きていると。


 


 


 いつか、“自分の人生”が分からなくなる。


 


 


 男の子は、俯きながら聞いていた。


 


 


 その時。


 


 


 雪斗が、奥からぽつりと言う。


 


 


 「まあでも」


 


 


 全員が顔を向ける。


 


 


 雪斗は気だるそうに続けた。


 


 


 「自分で選んだ失敗って、意外と耐えられるよ」


 


 


 店内が静まる。


 


 


 雪斗は苦笑した。


 


 


 「人間、一番キツいのって」


 


 


 「“やらなかった後悔”だから」


 


 


 その言葉を聞いた瞬間。


 


 


 レンの胸が、小さく揺れる。


 


 


 やらなかった後悔。


 


 


 それは多分。


 


 


 この物語の人たち全員が、一度は抱えてきた感情だった。


 


 


 感情を閉じ込めていた頃。


 


 


 言えなかった言葉。


 


 


 選ばなかった人生。


 


 


 だから今。


 


 


 苦しくても、“自分で選ぶ”ことへ向き合おうとしている。


 


 


 その時。


 


 


 レンのスマホが震える。


 


 


 静かな振動。


 


 


 レンは、ゆっくり画面を見る。


 


 


 美月からだった。


 


 


 短いメッセージ。


 


 


 【今日、会いたい】


 


 


 その文字を見た瞬間。


 


 


 レンの呼吸が、静かに止まった。

読んでいただきありがとうございます!

今回は、“自分の人生を選ぶ”というテーマを、恋愛以外の視点からも描いてみました。

透明都市の人々は今、“感情を持って生きる責任”を少しずつ覚え始めています。

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