第41話:『亡霊の咆哮・東雲グループの暗転決算』
東京、大手町。
東雲グループ本社ビルの最上階にある役員会議室では、SG優勝戦の「裏配当」で得た巨額の利益を祝う祝杯が挙げられるはずだった。
「佐伯健太は消えた。ハヤブサもゴミになった。これで福岡の利権は我々のものだ」
常務が冷酷な笑みを浮かべ、シャンパングラスを掲げたその時。
モニターに映し出されていた監視カメラの映像に、ノイズが走った。
「……何だ? 映像が乱れているぞ」
次の瞬間、スピーカーから爆音が響き渡る。
それは、かつて彼らが福岡の水底へ沈めたはずの、あの忌まわしい**「61号機の排気音」**だった。
報告:生存という名の「赤字」
「報告します! 深夜の平和島に……佐伯健太が現れました!」
血相を変えた部下が飛び込んでくる。
「馬鹿な! あの事故で生きていられるはずがない! 右腕も使い物にならないはずだ!」
「それが……片手です。奴は、左手一本でボートを操り、現役時代を超えるタイムを叩き出しています! しかも、あの『パグ』も一緒です!」
常務の顔から血の気が引く。
彼らにとって、佐伯健太はただのレーサーではない。自分たちの不祥事を次々と暴き、闇に葬ってきた「特命係長」としての恐怖が、今、亡霊となって蘇ったのだ。
焦燥:崩れゆくシナリオ
「……すぐに始末しろ! 今度こそ、息の根を止めるんだ!」
「無理です、常務! 奴の周囲には、なぜか東京支部の霧島麗華、さらには女子アナの古閑まきこが常に張り付いています。迂闊に手を出せば、マスコミと競艇界全体を敵に回すことに……」
東雲グループが積み上げてきた「不正の帳簿」が、健太の生存というたった一つの事実で、ガラガラと音を立てて崩れ始める。
一方、健太の自宅では
健太は左手でマウスを操作し、東雲グループの株価チャートを眺めていた。
傍らでは、スエが「特命」の任務を終えて、満足げに新しいガムを噛んでいる。
「……スエ。連中、相当焦っているみたいだな。……株価に『動揺』の色が出ている」
健太のPC画面には、東雲グループが隠蔽していた「海外へのマブイ不正送金ルート」が、古閑まきこの協力によって完全に特定されていた。
「……右腕が治るまでの3ヶ月、待ってやるつもりだったが。……向こうから焦ってくれるなら、前倒しで『強制捜査』といこうか」
健太は眼鏡を指で押し上げ、不敵な笑みを浮かべた。
明日、復帰戦の公示が出る。
それは、東雲グループに対する「最後通牒(倒産宣告)」となるはずだ。




