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からくり競艇〜サラリーマン、魂のフルスロットル〜  作者: 水前寺鯉太郎
プロ駆け出し編

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25/42

第25話:『特命レーサー・深夜の監査』

江戸川のピットが寝静まった深夜。

健太は昼間の疲れを見せるどころか、鋭い眼光でハヤブサの影に潜んでいた。

傍らには、普段の「フゴフゴ」とした愛嬌を消し、静かに鼻を鳴らすスエ。

「……スエ、来たぞ。あの『匂い』だ」

暗闇から現れたのは、整備士の制服を着た見慣れぬ男。

男が再びハヤブサの動力部に触れようとした瞬間、健太の体が音もなく動いた。

「……深夜の残業サービスにしては、手が込みすぎているな」

「なっ、佐伯!? なぜここに……」

男が懐からナイフを抜こうとしたが、健太の動きの方が速かった。

かつて**「特命係長」**として、数々の不祥事をもみ消してきた過去があった。

健太は男の手首を掴み、無慈悲に捻り上げた。

「……ぐあああッ!!」

「その細工、誰に頼まれた。……お前の『背任行為』、今すぐ監査してやる」

眼鏡を外し、ネクタイを額に巻く(代わりにレーシングスーツの襟を正す)健太の姿は、もはやおじさんレーサーではない。

圧倒的な「プロの始末屋」のオーラ。

「ひ、東雲しののめグループの……常務だ……! お前が昔、経理で暴いた横領の……復讐を……!」

「……やはりな。過去の清算が済んでいなかったか」

健太は男を突き放すと、そこへ現れた中島和樹と霧島麗華、そして薮本明子が男を取り囲んだ。

「……佐伯。あんた、ただの経理マンじゃねえな。その身のこなし、職人のそれですらねえ」

中島が呆れたように、しかし敬意を込めて呟く。

「……昔、ちょっと『特命』で動いていた時期がありまして。……趣味みたいなもんですよ」

健太は再び黒縁眼鏡をかけ、穏やかな「おじさん」の顔に戻った。

翌日の準優勝戦

事件は表向き伏せられたが、東雲グループの刺客はまだ潜んでいる可能性がある。

準決勝。健太は1コースの**井上忠興(兵庫)と、4コースの神崎裕次郎(群馬)**という、一筋縄ではいかないベテラン勢と激突する。

「佐伯さん。レースに情は禁物ですよ」

井上が、スタートからじわじわと健太を追い詰める「足を溜める」戦法で圧をかける。

だが、健太は笑った。

「……井上くん。俺は昔から、粘り強い奴の『綻び』を見つけるのが得意でね」

健太は、昨夜の襲撃で得た「怒り」を、ハヤブサの出力へと完璧に変換。

特命係長時代に学んだ**「相手の視界から一瞬で消えるフットワーク」**を、ボートの挙動で再現した。

1マーク。健太はあえて井上に差させる隙を見せ、その瞬間にマブイを逆噴射。

井上が溜めていた足を空転させ、その隙間を「特命の隠密旋回」で貫いた。

決着:そして決勝へ

ゴールラインを駆け抜ける健太。

その背中には、もはや「新人」の面影はない。

企業の闇も、水上の濁流も、すべてを飲み込んで進む「特命レーサー」の風格。

「……お見事。……でも、夜の『特命』は、私にだけにしておいてよね」

麗華が、少し頬を赤らめながらピットで健太を迎えた。

「……霧島さん。それは、公私混同というやつですよ」

健太はスエを抱き上げ、不敵に笑った。

そして健太は優勝戦に挑みます

そこには、東雲グループが送り込む「最後の刺客」が、レース場全体を巻き込む巨大な罠を仕掛けて待っていた。

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