外科の新人の歩み45 先輩の訪問
外科の新人の憧れの先輩は、秋田を離れ外科の新人に会いに行くため、朝早く出発する。
久しぶりに会えるのね。少しはまともな看護師になれたのかな。。
午後1時を回ったくらいにタクシーで大学病院に到着した。
先輩「へー。割と大規模だわね。結構な街で、この広さ。。いい病院に入ったわね。」
先輩は受け付けで外科の場所を聞き、外科に向かった。
先輩「あのー。」
婦長「はい。どちらさま?」
外科の新人「あーっ!久しぶり〜。早かったですね!」
先輩「あなたの働く姿を見たかったから。」
外科の新人「みなさん!私が看護師を目指すきっかけを与えてくれた看護師さんです。」
先輩看護師「ああ。噂のかた。。凄いわね。お会い出来て光栄です。」
婦長「あなたが。。先輩を育てたんですね!」
先輩「えっ。先輩?」
看護師「ああ。新人さんは、みんな先輩って呼んでますよ。」
先輩「あのー。入ったばかりですよね?」
婦長「みんな尊敬してるから、自然と先輩になって。」
看護師「婦長が先輩って呼ぶからみんな先輩って。。」
婦長「私は、本気で尊敬してるの!」
外科の先輩「もー。。恥ずかしいな〜。」
外科部長「おい、急患が来る。。かなり深刻らしいから。。婦長と新人。入れるか。」
婦長「見守りはあなたお願い。第一手術室はあなた担当して。ああ。彼女の尊敬する先輩看護師さんを、手術のモニタールームへ案内して。」
患者は直接CT室に運ばれ、状況把握をした後、そのまま手術室に運ばれた。部長が体の状況説明をする。
婦長「血圧が、異常に低いです。かなり危険です。」
外科部長「これは。。大量出血しているな。。どこだ。」
外科の新人「腹部の傷が。。部長!肋骨が一本ない。右の肋骨が。」
部長「えっ。何故右側面から撮影が。。正面からレントゲン撮る。離れて。」
婦長「あっ!肋骨が右側に刺さってないですか?」
外科部長「斜めから撮影する。。んー。確かに刺さっているな。他に骨折はなさそうだな。」
外科の新人「重要ではありませんが、右腕の骨にヒビが。」
外科部長「なるほど。右に倒れたんだな。」
婦長「心肺停止です!」
外科部長「マッサージだ。」
外科の新人「輸血の準備します。」
先輩「これは。。さすがに状況が悪すぎる。手術しても。。もう助からないんじゃないかな。。」
慌ただしく外科の新人が動き回り、準備を整えると輸血を開始し、一旦蘇生は成功した。
CTの結果を見ながら、部長と新人が議論している。やがて3人で集まり、手術の段取りを決めると手術が始まった。
先輩「えっ!今、あの子が手術の段取りを決めたわよね。」
外科部長のあまりの技術の凄まじさと、先取りして動く外科の新人に先輩は驚きが止まらない。
外科の新人「いかん。婦長!心肺蘇生だ!」
婦長「わ、分かった。」
外科の新人は2人の汗を拭きながら、2本目の輸血を開始する。
外科の新人は、疑問を感じた。おかしい。動脈としても、あそこのはず。こんなペースで輸血って。何かが変。。
外科の新人「心肺回復。」
外科部長「疑いがある右腹部を、すぐに開くぞ!」
外科の新人「血液を吸い出します。。あっ!先生。やはり動脈が。。婦長変わって。」
外科の新人が、道具を集めて戻ってくると、患者の体を確認する。
外科の新人「先生!静脈に肋骨が刺さってます!動脈は途中で肋骨が傷つけたかと。。静脈のほうが太い血管です。」
外科部長「ヤバい。。んーー。」
外科の新人「まず動脈を繋ぎましょう。臓器の保護が最優先です。その後に静脈を。かなりの出血にはなりますが。。」
婦長「肝臓も出血しています。損傷の疑いが。心肺が再び弱く。。」
外科の新人「輸血追加してよろしいでしょうか?婦長。蘇生頼みます。私が部長と動脈繋ぐまで、患者さんの心臓を保護して!何とかお願い!」
婦長「分かったわ。」
外科部長「気管切開で酸素を送り込む。」
外科の新人「部長。大丈夫です。もう準備出来ています。」
外科部長「助かる。すぐにやるぞ。」
ウソでしょう!なんて素早い。。でも、こんな状態もう助からないわ。どうするつもりなの?たった3人で。。とは言え、この状況では人数いても意味はない。しかし、全員超一流じゃない。。あの子。ものすごい看護師になってる。。
外科の新人「血管止めました。」
外科部長「直ちに動脈を繋ぐぞ!」
外科の新人は全員の汗を拭きながら、次の輸血の準備をして、外科を塞ぐ道具を外科部長の手元に渡す。
そのまま回り込み血液を吸い出しながら、動脈を持ち上げて、血管保護を補佐する。
外科部長「どうだ。止まったか。」
外科の新人「吸い出して確認します。。動脈は止まったようです。」
婦長「心肺回復しました。血圧55の39。。心臓マッサージは続けます。」
外科の新人「部長。血液は私が吸い出しながら、血管出血の確認しますので静脈の肋骨を。」
外科部長「婦長。。やむを得ない。蘇生は一旦いい。静脈の修復を優先する。大量に出血するから、しっかり患部を確認しよう。抜いた肋骨は状態見て最後に繋ぐか諦めるが考える。」
外科部長が肋骨を抜くと、大量に出血する。
外科部長「いかん。血管を。」
外科の新人「わ、私が止めます。損傷が酷すぎます。血管を切除して繋ぎましょう。体力がもたない。とにかくスピードを優先しましょう。先生!」
外科部長「んー。。分かった。君に従う。」
外科の新人「婦長。血液の吸い出しをお願い。輸血用血液を一旦新しいのに取り替えます。」
外科の新人は、すぐに満タンの血液に交換し、輸血を再開すると静脈を持ち支える。
外科部長「血管は止めた。いいな、切除するぞ。」
外科の新人「はい。静脈の出血は見られません。」
外科部長「分かった。」
婦長「血圧若干改善してますが、依然危険な状態です。先輩。汗拭くわ。」
外科の新人「ありがとう。」
外科部長「いいか、繋ぐから血管を絶対に動かすな。頑張れよ。」
外科の新人「だ、大丈夫です。」
部長が素早く血管を繋ぎ終わると、急激に血圧が回復してきた。
婦長「部長、血圧、心拍ともに正常値になりました。以後は異常値の時だけ数値を伝えます。肝臓の損傷はどうしますか。」
外科部長「これなら、縫って、塞げば肝臓ならばすぐに回復すると思う。」
外科の新人は血液の吸い出しを終え、洗浄をして出血の最終確認をすると、直ちに腕のケガと足のケガを確認する。
外科の新人「部長。手は消毒で良さそうですが、足は縫う必要があると思います。」
外科部長「どれ。。君の判断は正しい。私は足を処置する。手は任せた。」
看護師2人で全身の状態を確認する間に、部長は肋骨を慎重に繋ぐ。
外科の新人「うわ〜。部長、すごい技術。」
婦長「あら、珍しいわね。見とれて。。あなた、今日は片付けしないのね。」
外科の新人「あまりにも危険過ぎて、まだ終わったとは思えません。婦長。今のうちに手のヒビの固定しましょう。」
外科部長「ああ。すまん。。先ほどの急患は脳神経外科としてどうだ。。ああ、そうか。。何とか踏みとどまってる。」
外科の新人「どうしました?」
外科部長「頭は大丈夫のようだ。心肺停止が多かったからな。。後遺症が心配だ。」
外科の新人「それは大丈夫。その道のプロである婦長が危険になる前にしっかり循環させてましたからね。」
婦長「よく言うわね〜。あなたが指示したんでしょう。」
外科の新人「でも、何か気になるんですよね。。大事なことに気づいてないような。。なんかいつもと違ったんですよ。」
外科部長「外科の範囲は終わったつもりだが。。内科部長に相談してみるか。」
内科部長がやってきた。
内科部長「おお。部長、今週で終わりか。。感慨深いな。。ん?この患者さん。。前に内科に来てたな。何で運ばれた?」
外科部長「階段を落ちたらしい。」
内科部長「なあ、出血が多かったんじゃないか?」
外科の新人「あっ!それだ!なんか違ったの。確かに言われてみたら。。動脈はともかく。。全体的に普通より出血が多かったと感じました。」
内科部長「脳神経外科はなんと。」
外科部長「CTは問題ないと。」
内科部長「血栓を溶かす薬を出したことがある。MRIで調べる必要があるな。」
外科の新人「つまり階段を落ちた理由が、脳梗塞と。」
内科部長「疑いはあるな。」
外科の新人「でしたら、肺梗塞も疑う必要があります。」
内科部長「分かった両方調べるが。。肺梗塞の場合、たぶん既に亡くなっている。軽い肺梗塞だったとしても、これだけ開いて手術したら。。とは言え内視鏡手術は。。この血管を治したのなら。。治るまでは危ないな。血栓を溶かす薬も今は使うのは危険だ。とにかく梗塞があると、治療は困難だ。内出血が止められない。相当輸血したな。。血栓には良かったかもな。内科に回してくれ。脳神経外科と再検査する。」
外科部長「では、閉じるよ。」
内科部長「ああ。頼む。」
仕事を終えた先輩看護師が様子を見に来る。
先輩看護師「なあ。あなたの後輩はものすごいだろう。」
先輩「ええ。あまりにも凄くて。。でも、あの3人ってすごいチームワークですね。あんな手術は私には出来ません。あんな患者さん。。助かるはずがない。」
先輩看護師「チームワークなら、もっとすごい先生がいるけど。。確かにあの3人だけの場合は、最強のチームなのかもな。前に人がいない時にあの子と手術したんだ。あまりに凄くて。私はただ見てるだけだったよ。あの両部長をコントロールして手術してたんだよ。」
先輩「医学知識は相当ね。成績悪かったと聞いたのに。。」
先輩看護師「ああ。医学知識は先生よりすごい時があるよ。先生の診察の見逃しを防いだのは何回もあった。ただ、あの子、心肺蘇生やらないだろう?一生懸命になり過ぎて、力加減コントロール出来なくなるらしいから避けてるんだ。あれだけは、一番下手って自分で言ってたよ。」
先輩「看護師が血管繋ぐの手伝うって。。あり得ないんですが。。」
先輩看護師「診察の担当やらせたら、あっという間に終わらせるし、採血も検査も正確で手際いい。外科部長いわく、病院ナンバーワン看護師だって。まあ、私も思うよ。あそこまでは長い看護師人生でもいない。それで患者さんには明るくて大人気だし、定年前に出会えて良かったよ。」
先輩「あんな重症は普通助からないわ。私、見た瞬間にダメって思ったから。彼女って、そのチームワークのすごい先生と組んだらもっとすごいのでは?」
先輩看護師「ああ。先生のチームワークの凄さを彼女は認めてるから、あの先生の時は出しゃばらないで従うんだ。考えあっても、先生を立てて判断を仰ぐ。けど、あの子は心の中で方向性は決めている。」
先輩「ああ。確かに見ました。先生が迷った時に、先に提案してましたね。」
先輩看護師「終わったら帰るんだろう?ナースステーションに戻ろうか。」
先輩「新人は明日の準備あるのでは?」
先輩看護師「普通はな。けど先輩のためなら、そんなもの私らがやるよ。もっとも、今日は無理だけど、いつもは知らないうちに彼女が終わらせてしまうよ。戻りましょう。」
内科と脳神経外科で調べた結果。脳梗塞、肺梗塞の疑いはなく、それが原因で階段を落ちたわけではないようだった。
婦長「いや〜。さすがにダメかと思った。」
外科の新人「短時間で動脈止血出来なかったら。。たぶん無理でしたね。部長の技術はすごいですね。でも婦長の蘇生があってですよ。」
婦長「やめてよ〜。あなたの静脈補佐も無かったら無理だったと思う。みんなギリギリ。」
先生「なんか。。ヤバかったらしいね。」
外科の新人「無事終わったから良しです。ねえ、先生。私の尊敬する故郷の看護師さん。」
先輩「えっ。。は、初めまして。。あ、あの。」
外科の新人「あっ、先輩。ごめん。カッコいいのは分かりますけど。。婚約者いるから。。ねえ、先輩聞いてる?」
先輩「えっ。。ああ、それはそうよね。」
婦長「もう帰るわよ。あなた先輩をおもてなししなくていいの?」
外科の新人「そうね。お先に失礼します。先輩。患者さんに紹介してから帰りましょう。」
先輩「ええ。」
婦長「ちょっと、あんた。まだ仕事して帰る気なの?」
外科の新人「挨拶よ。自慢の先輩だからね。」
外科の新人は患者さんに紹介しながら、問題のありそうな患者さんの情報を遅番の看護師に伝えて帰宅した。




