09 森の調査
完全武装して森へ侵入する。
といっても、オレは普段着に解体用のナイフを差したベルトを巻くくらいだ。
防具と呼べるようなものを持っていないのもそうだけれど、そもそも、手に入れることができない環境にいる。
村には、防具を生産及び手入れできる者が居ないのと、村に来る行商はかさばる防具はほぼ持ってこないのが理由になる。
じゃあ、自作か? となるが、防具になりそうな素材も無いしそこまで器用でもない。せいぜい、布を重ねた厚手のエプロンと手袋くらいか。着てこなかったけど。
「……カリン……きみは、そんな軽装で、魔物が出る森で狩りをしているのかい?」
「そりゃあな。これしかねぇし」
「いや、しかし……」
「あのさあ、うるさいと獲物も逃げるしなんなら魔物も寄ってくるから、黙っててくれないか? 遊びに来たわけじゃねえんだから」
信じられないものを見ているような表情の4人に、呆れ混じりの苦情を叩きつける。
いやむしろ、ヨシュアやミシェルが着ている鎧がガチャガチャ鳴ってるから、獲物は寄ってこねえだろうなとは思うけれども。
「さっそく来た……ふっ!」
……思うけれども、獲物ではなく魔物であれば、この通り寄ってくるわけで。
こちらの音を聞き付けて、樹上の枝を伝ってクロウモンキーが4匹近づいてくる。
それらに、気合いを込めた投石4発。これで終わった。
地上に落ちてきた爪猿は、アイテムボックスに《入庫》する。
「お見事。……疑っていたわけじゃないけれど、本当に狩人なんだな」
「クロウモンキーは、アイテムボックスに入れたの? 使い道は?」
感心しているヨシュアはそのままにしておいて、首をかしげるカティアには答えておく。
「放置すると、血のにおいに誘われて次々と魔物が来るからな。そんで、そういうのは、だいたいは食べられない魔物だ」
「なるほど」
ミシェルが納得したと言わんばかりに大きくうなずいている。
オレとしては、逆に驚きなんだけれど。
痕跡、消すよね? 狩人としては常識だと教えられたんだけど。
でも、複数人で構成されたパーティーなら、においの元とか消さないのか?
浮かんだ疑問をそのままに伝えれば、
「基本的に、燃やすね。血のにおいに誘われるようなのは、火と燃えカスのにおいで逃げていくから」
「面倒なのは、そんな状況でも寄ってくるやつだな」
ヨシュアとミシェルの言葉に、なるほど納得。
オレもなんとなく分かる。枝葉を揺らさないようにこっそり近寄ってくるクロウモンキーとかだな。
しゅっ、しゅっ、ドサドサ。
今のこの状況みたいな感じだよな。
「すごいですね。話しながらでも的確に察知して正確な投石で仕留めるのですね」
聞き役に徹していたフローラが、感心したように言う。
ま、こんくらいは分かりやすい方だよな。実際に、面倒なのは……。
「しっ」
パッと見た感じは目には見えないが、面倒なやつがいたので全力投石。
頭を砕かれてゆっくり落下してきたのは、ハイドスパイダーという、巨大なクモ。
体の色を変えて周囲に溶け込むスキル《擬態》や、気配を抑えて気付かれにくくするスキル《気配遮断》などを持つ、危険な魔物だが、近寄る前に倒せばこんなもんだ。
「すごい」
「見事だ」
カティアとミシェルが、目を丸くしている。
下手すっと気付いてなかったなこの二人。
そんなんで、今までよくやってこれたな。
索敵は、ヨシュアやフローラが得意なのかな?
そう思ってフローラを見てみれば、
「私、神聖魔法の他に、周囲を探る魔法も得意です」
ニッコリと笑うフローラに、多芸なんだな、と言ってみれば、
「それほどでも」
と謙遜していた。




