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罪人転生 〜数千回殺され続けたら、あらゆる魔法が効かなくなっていた〜魔法至上主義の世界で、過去の罪を背負いながら最強へと成り上がる  作者: スケ丸
幼少期

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第二話 救世主

あれから、何度死んだだろう。

いや——何度、殺されただろう。

数えるのは、とっくにやめた。千回は超えている。いや、もっとか。


気がつけば、身体は最初にここへ来たときとは比べ物にならないほど大きくなっていた。


「おい、ラザロ。“あれ”、またやれよ」


低く、粘つくような声が降ってくる。

もう、声だけでわかる。

あの時、乳母車の前にいた男。

恰幅のいい中年貴族——


「……はい。グスタフ様」


俺は何も考えず、四つん這いになる。

膝と手のひらを石の床に押しつけ、首を垂れる。


少しでも気に入らなければ、叩かれる。蹴られる。

それだけで済めば、まだ運がいい。


「ははっ……いいねぇ。やっぱりこれだよ!奴隷は最高だ!」


笑い声が、頭上で弾けた。

奴隷。

最初にここに来た時、俺はこの家の子供だと思った。


豪華な屋敷。絵画。赤い絨毯。

貴族の子供として、新しい人生が始まる——そう思った。

でも、そんな人生は甘くなかった。

俺はこのヴァイスグラフ家の奴隷として買われたらしい。


言葉は、この部屋で何度も殺される内に覚えた。

最初は何を言われているのかわからなかった。

でも、子供の体は嫌でも学習能力が高い。

耳に入ってくる言葉を、自然と理解するようになった。


年齢は……十一か、十二か。

正直、どうでもいい。


「ラザロ。お前は顔だけはいいからな」


グスタフがこちらを見下ろす。

舐め回すような視線だった。


最初に見たときは、グスタフは上品な顔立ちの貴族だと思った。

だが今は違う。


歪んでいる。

欲望が、剥き出しになっている。

俺の顔が良いのかどうかは知らない。


そもそも、この部屋から出たことがない。


「ちょっとグスタフ。欲情するのは後にしてちょうだい」


その声が聞こえた瞬間、身体が震えた。

反射だった。


足音が近づく。

軽やかなのに、重い。

——来た。


マレーネ。

俺にラザロという名前をつけた女。

赤子の俺を焼いたあの女。


最初は、魔法だった。


炎で焼かれた。水に沈められた。雷を落とされた。土の槍で貫かれた。

ここに来て数年間、ありとあらゆる魔法で殺された。


ある時期から、物理的な方法に変わった。

ハンマーで頭を潰された。四肢を切り落とされた。

思い出したくないこともあった。

頻度はバラバラだった。毎日の時もあれば、数日空く時もあった。


そして、死ぬたびに——魔法陣の上で、復活させられた。

 

ある日、マレーネに聞いた。

なぜ、俺を殺すのか。

帰ってきた答えは、こうだった。


「楽しいからに決まってるじゃない」


それだけだった。

絶望しても、無駄だった。

抵抗しても、無駄だった。

ただ、殺されて、復活して、また殺される。


そして今日、マレーネが来たということは——また殺されるということだ。


「グスタフ、ちょっと今大変なのよ」


マレーネが近づく。

その瞬間、


「マレーネ様、その猿に近づかないでください」


別の声が割って入った。

仮面をつけた、全身白のコートの剣士。


いつもマレーネの傍にいる。


何度も殺された。


俺だって、マレーネに反抗したことがないわけじゃない。

だが、触れようとした瞬間、こいつに殺される。


それだけだ。


「今は緊急事態なの。それどころじゃない!どいて!」


マレーネが腕を振り払う。

珍しく、焦っているように見えた。


グスタフの耳元で何かを囁くと、彼は顔色を変えた。


「……っ、わかった!」


足音が遠ざかる。

階段を駆け上がっていく。


マレーネも、仮面の男とともに後を追った。


去り際、こちらを見た。

——ほんの一瞬だけ、迷うような目だった。


何だ、それは。

俺は、ただの玩具だろう。


……いや、そんなことより。

今日は、どうやって殺される?


前のは、ひどかった。


同じくらいの年の子供。

笑っていた。優しかった。


一緒に逃げようと言った。

信じた。

だが——刺された。


何度も。何度も。

あれは、もうやめてほしい。

ふと、違和感に気づく。


騒がしい。

上の階の音が、やけに大きい。


走っている。

この屋敷には俺が最初に見てないだけで、大人数住んでいた。

だが、ほとんど全員が走っている。

何が起きている?


そのとき。

「やめてくれぇ!!ぐはぁっ!」


グスタフの声が、階段の上から聞こえた。

恐怖に染まった声。


初めて聞く、グスタフの悲鳴。

何かが、転がってくる。

階段の上から、こちらに向かって。

ゴロゴロと、石の階段を転がる音。

それが、俺の目の前で止まった。

 

グスタフの首だった。

 

目が見開かれている。

口が開いている。

血が、流れている。


「——怖くないのか?」


視線を上げると、男が立っていた。

剣からは血が垂れている。


背が高い。

見上げるほどの長身。


髪は、淡い金色。

暗い地下で、それだけがやけに目立つ。


ゆっくりと、こちらに手を伸ばす。


この部屋には、灯りがほとんどない。

いつも、薄暗い。

 

でも、この時だけは——

男の方が、とても眩しく見えた。

とても、嬉しかった。

理由は、わからない。

ただ——


初めて、誰かが俺に手を伸ばしてくれた。

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