第81話 起源のテープ保存
チック・ザ・マンが凍結し、活動を停止した。
リテルが不意に落ちたチック・ザ・マンのハットを拾い、ハットの底にテープがあることに気がつき、セバスチョーにそれが使える場所を教えてもらう。
と、その前に魔人達を安全などこかに移動させなければならない。
チック・ザ・マンがいなくなった地下でも油断は禁物。
リテル達は残りの7871を含めた魔人達を少しずつ悲惨な部屋から引き出す。
ホールンとムロフが誘導して魔人達を上の層へと上げる。
残りのリテル達はセバスチョーに案内されてそのテープが使える部屋へ行った。
その部屋は一度来たことがあった部屋だった。
機械のメーターが針で刺されているあの場所だった。
セバスチョーは手慣れた手つきでテープを機械にセットする。
セットされてから少し経っても何も起きなかったので、カイはリテルに聞きたかったことを聞いた。
「リテルは死んでも蘇るんじゃのう。
特性がリサイクルとはいえ、常識を超えたものじゃ。
怨念もそうじゃが、本当にリサイクルなんか?」
リテルはずっと騙ってきた。
生死の賢者をリサイクルという偽名で師匠の約束をできるだけ守ろうとした。
旅人になったら、この力を使う時は何度もあるとずっと考えてきた。
仲間の前だからと甘えて舌とか出してきたが、そろそろ言う頃になったのかも。
「実は・・・俺、生死の賢者っていうのを持ってて。
生き物の一部を使ったり、生物の特徴を知ったり。
なぜだか蘇ることもできる・・・。
嘘ついてごめん。」
仲間に嘘をついて頭を下げるのは、本当に気の毒だった。
慕ってくれた団長が嘘をついていた、そんなこと・・・。
「リテル、わしは確かに疑問を持ったが、何も謝る必要はない。
わしもまだ一つ、脚力増加というのもある。
これを今、打ち明けれたのはリテルのおかげじゃ。
それに、わしらは協力しあって生きている。
その事実を知っても今まで通りのリテルじゃ。」
ゼヴァもサイダンもカイの言葉に頷く。ついでにセバスチョーも。
気が晴れて、少し目が潤む。
ザザザーと荒れた音が流れた後、男性と女性の話し声が聞こえてきた。
みんなの注目はテープへと移り変わった。
「あー、あー、エートス博士、録音これでできていますか?」
「ええ、ばっちりよ。」
「いよいよですね。3人の魔人の神経、記憶を1つに。
成人男性のアルティ・ヴェル=ドール。
少女のエルガー・ヴェル=ゲーグ。
多少の言語能力をもつ幼児、インテ・ヴェル=レセ。
を・・・、あ、そういえば名前決めました?」
「ちゃんと考えてきたわよ。私、時間に厳しい女って言われない?」
「ええ、そうですね。嫌でした?」
「イヤじゃないわ。
そこで、この子にも時間厳守って感じに教えたいんだよね。
私は何時間も時計を見ながらじっくり考えていたら、時計の音がチクタクと耳に焼き付いたの。
チック タック チック タック。
チックって名前が浮かび上がってきたの。」
「では、名前はチックで?」
「違う、チック・ザ・マン。
どう?働き者の名前じゃない?」
「チック・ザ・マン・・・。
確かに。そうなってくれるといいですね。
エートス博士が二人に増えるとちょっと恐ろしいですね。」
「何が?」
「い、いえ。でで、では肉体との融合を行いましょう。
改めて、エートス博士、お願いします。」
ガコンとレバーが下されたような音を響かせた。
気体が排出される音が度々鳴り、その場にいた人は固唾を飲んで見守っている。
ある時を超えた時、機械の音は停止した。
「・・・成功か。」
エートス博士の呟いた言葉で同じように実験に携わっていた研究員は力が抜けるような声で喜んでいる。
「おお!動いている!
test1ことチック・ザ・マンが生まれた!」
チック・ザ・マンが機械のガラス越しで動くたびに、研究員達のカリカリとペンを走らせるような音が連動する。
するとバキンッと鋭い音を聞いた研究員は手を止める。
再び鋭い音が鳴ると、エートス博士は研究員に指示をした。
「すぐにゲートを上げて、安全を優先しろ!
チック・ザ・マンの力を強く設定したはずだ。」
ここで記録が途絶えていた。
それをじっと聞いていた。
過去の出来事がテープを通して音だけを今に送り出しているのは非常に不思議な体験だった。
もちろん内容も聞いていた。ただ、過去が聞けるというのも驚きだった。
三人の魔人で人体実験?
人の命を軽く扱ってそう。
テープを聞いただけでは色々疑問や感想がでてくる。
さっきの嘘はみんなもうとっくに忘れていた。
リテルはこの時、仲間という言葉の偉大さを改めて実感した。
テープが流れている間にも時は流れる。
コアセンド王国の地下全体を管理する厳密な部屋で、事態は大きく動く。
「test1の機能停止通知が届きました!」
それを言ったのは研究員の一人で、腕を大きく振り、運動不足の人間が全力で走っていた。
走り着いた先は、リテル達とはまだ会っていないが、テクトロジー旅人団を崩壊させた元凶の髭の生えたじじいだった。
「そんなことはない。一度も、テクトでさえ突破できなかった。
情報では子供とのことだった。あいつにかかれば赤子の手を捻るくらい簡単なことだ。」
「規格外、来てしまったのでは・・・?」
じじいは腕を組み、深く考えた。
コツコツと指腹で机をこずく。
「我々の次の行動はすでに決まっている。
奴らが抜け出す前に、あれを決行する。
ジレンマに対する最終手段だ。情報が漏れるより、断然マシだ。」
「すぐに連絡します!」
研究員は扉を突き飛ばして、勢いあまりの速さで壁に当たっていた。
過去の断片を聞けるテープを聞いたリテル達はムロフと合流するため、ムロフが誘導している魔人の後を追い始めた。
階段を登っていると、シャッツが飛び降りてきた。
様子は慌ただしかった。
「す、すぐに、逃げ出さないと!」
シャッツは理由も言う前に、リテルの腕を引っ張る。
当然みんなは戸惑う。
「フードのやつがここが爆発されるって。」
シャッツはリテル達がチック・ザ・マンと戦っている時、青フードと出会っていたようで、青フードはあの死警官に打ち勝ち、地下へ入ったようだ。
シャッツが出会ったのは、地下の浅いところだった。
そこで聞いたのがその爆破予告だった。
ここへ来る際、魔人を引きつれるムロフと会い、このことを知っている。
もう何も気にせず、地下から地上を目指した。
何度も登っていくと、一度大きな鈍い音が地下全体を揺らした。
これが爆発というものか?よろめくほどではなかった。
間抜けな爆発だと思い、一段登る時、地震が発生した。
爆発が原因なのか、自然的な偶然なのか。
わからないが、爆発の何倍も地下を揺らした。
地震に反応するように不気味に高鳴る音が上から鳴り響いた。
機械の音は奇妙な音に切り替わるように突然静かになる。
リテルはすぐに舌でみんなを包んだ。
ゼヴァも体を融解させて衝撃に備えている。
一つの団子が完成した。
背を低く、何がきてもいいように身構える。
足元の床から足が浮いた。
リテル達が浮いたわけではない。地下の床が落ちた。
足元だけでなく周りの機械も一緒に落ちている。地下全体が落ちている。
何十秒も足が床に着かなかった。
全員に冷や汗が垂れる。予測のできないこの事態がどうなっていくのか心配だった。
地面に衝突した瞬間、地下の構造が崩れた。
リテル達は床と天井に板挟みになった。
記憶が飛ぶ前に、最後にゼヴァと目が合う。
液体状のゼヴァだけは動ける状況だった。
しかし薄い空気で何も言えず、そのまま激しい衝撃で辺りは真っ暗になった。




