第64話 黒、再び
テクトの帰りを待つロジーとその仲間。
場所を変えて任務所で待機していた。
「なかなか遅いな。
早くとも1時間、遅く一日を想定してたが、2日以上とはな。
連絡を取ることができない以上、待つしかできない。」
「一度、事情を聞いてみるのは?」
と、提案したのはテクトロジー旅人団3番目の男、デベッド=ウェース。
コアセンド王国出身で、この旅人団に誘われた身である。
特性はないものの、魔法が達人にも認められる程に巧みな魔法を4属性扱える。
無属性、火属性、電気属性に加え、会得することが困難な光魔法を使う。
「ああ、そうだな。
事情を隠してあいつだけを呼ぶのは釈然としない。
こうやって呼び出されるのには毎度事情を話してくれたんだがな。」
コアセンド王国の仕方に不信感を抱く。
ロジー達はタワーの前へ行き、理由を聞いた。
が、明確な答えも、いつテクトが帰ってくるのか日時さえ教えてくれなかった。
その答えにロジーは気に食わなかった。
「内容を言え。
隠し事が嫌いなんだ。」
圧迫するように詰問する。
そのプレッシャーに出迎えた者は一滴の汗を流す。
そして口を開けた。
「コアセンド王国の未来について話しています。」
ついに内容を聞けたロジー。
しかしロジーはそれを真に受け取らなかった。
「娘を探して1分1秒を惜しむテクトが2日以上を無駄にすると思うのか?
生まれた国に裏切られるとはショックだ。」
ロジーは黒筆による特性の鉛の槍を生成し、嘘つきを硬鉛の檻に閉じ込めて、中へ侵入した。
ロジー達は中へ入ると、ロジーだけ異妙な雰囲気を醸し出す扉の前に止まった。
「どうした?テクトがいたか?!」
デベッドは言った。
するとタワー内のランプが赤く点滅し始めて、警告を促すかのような音が響き渡った。
侵入したことがバレたようだ。
ロジーは何を思ったのか扉を蹴り破った。
そこはテクトの闘技場だった場所。ただ、テクトがそこにいるわけでもなく、機械の壁が羅列されているだけだった。
そして部屋の奥にはモニターを見ていた髭男がいた。
「部外者が入ってきたかと思えば、まさかロジーだったとは驚いたよ。」
赤いボタンを押すと、警報は止まり蹴破って開いた扉は閉ざされた。
「なぜここへ来たのか知らぬが、奇遇もいいところ。
ただもう返すわけにはいかない。
彼の被験者となってもらう。」
ゲートの扉が幕を上げ、姿を現したのはテクトを襲った張本人。
チック・ザ・マン。
テクトは手も足も出ず、奴に傷一つさえつけることができなかった。
「やはりテクトは巻き込まれてたってわけだな。」
テクトがもしこいつに敗れたのなら、強敵か、はたまたしくじったか。
「デベッド!光魔法で切り口を見つけろ!」
「へぇ?もう敵認定?
まぁするけど。貫光槍。」
デベッドは杖を振った。
貫光槍は光魔法に分類される魔法。
槍のように長い光を放つ魔法で、光魔法は魔物に効果的で、極獣と魔人に対して有効打となる。
魔物は光魔法を受けると、消滅か弱体化する。
人に対しては物理的な攻撃、無属性と同様になる。
そしてデベッドが放った槍はチック・ザ・マンへ当たったのだが。
「効果は薄め・・・
中身は極獣か魔人だ!」
チック・ザ・マンの正体は極獣か魔人のようだが、極獣にしては人の形に似ていて、魔人が変身してたとしても原初の姿とは思えない。
手がかりがつかめない。
「私は、人間です。
人を、前に、突然、魔法を使う、のは、失礼では?
私は地下の管r・・・!ゥグ!ァァ。」
チック・ザ・マンは唐突に頭を手で押さえた。
頭の中で雹が弾けるような痛みに耐えているかのようなうめきをあげる。
「すみませんごめんなさい。」
髭男の方を向いてなぜか謝った。
彼の行動にロジー達は困惑した。
「私は、ロジー=シシャナーレ、その他、テクトロジー旅人団、を排除し、なければ、なりま、せん。
責務を全うします。」
と、ロジー達を襲い始めた。
デベッドがあるだけの魔法を駆使するがどの属性も効き目がなく、怯む姿も見受けられない。
一切通じていない。
「なんでだ?なぜ光魔法だけ反応を示す?」
光魔法にしか弱点がないのか?
にしては光魔法が効いているわけじゃないのか。
デベッドは疑問を持ちながら戦闘を行う。
しかしチック・ザ・マンの軟体の肌は斬撃も打撃も跳ね返す。
攻撃の駆け引きを繰り返していく過程で、二人の部下がやられた。
「ダメだ。何も非の打ち所がない。」
ロジーの身体にはだんだんと疲労が溜まってきた。
機械の熱が部屋に篭って体が疲れやすい・・・。酸素が恋しい。
特性の発揮がしにくくなってきた。
ロジーの魔法の発動に必要な魔法因子もかなり消費してきただろう。
テクトを連れ出す前にくたばってたまるか。




