第55話 滾る変異
変異とは極獣や魔物に起こる謎の現象である。
変異は極獣や魔物の力や知能を上げる。
周期的に変異の発生は増減し、予期はしにくい。
しかし人類が極獣に寄り添った結果、極獣夜行を解析した。
ある程度周期を先読みすることができたが、自然界ではそうもいかない。
不規則に増減する変異が一気に増加してしまうと、急速に周囲を巻き込み、極獣夜行が発生してしまう研究結果が・・・。
カガガの櫓の上に置かれた極上の肉は国を見下すように置かれて、次に夜空へ火のついた矢が四方に飛んだ。
これは狼獣への合図と夜に隠れる鳥を威嚇するための儀式だ。
矢が飛んで、矢の火は消える。
すると森全体の全てのものが風に吹かれるはずだった・・・。
「イナサちゃんが来ない。
今日は少し遅れているのか?」
櫓に掲げられた肉を見つめ、少し経った。
下で見守っていた全員が首を傾げた。
だんだん国中に不穏な雰囲気が流れる。
フギレもこの状況に何かが変だと気づいた。
「妙な風の匂いがする。
とっても嫌な臭いだ。」
フギレはその風の元へ飛んでいった。
フギレが飛んでいき、風の元にいたのは狼獣。
何の変哲もなかった。
「イナサちゃん、今日は祭だぞ。
君の大好きな・・・。」
にこやかに狼獣へフギレは話していたが、妙に感じる気配が顔を強張らせた。
狼獣の口からよだれが垂れている。
しかし飢えているような様子はない。
「どこか具合が悪いのか?」
狼獣はフギレの正面に立つ。
フギレを見つめ、体は震え、息が荒くなってくる。
その次の瞬間、狼獣は森を呻くような咆哮で轟かせた。
「何だ!?」
狼獣の姿は豹変し、尻尾の毛は逆立ち、暴れ始めた。
暴走する狼獣は辺りの木々を斬りつけ、フギレにも無作為に攻撃をした。
「この時を待っていたぜ!!」
シュトルフが木陰から飛び出してきた。
そして狼獣の背中へ跨り、赤くゆらめく糸が狼獣の全身へ取り巻いた。
「何をしてる!
イナサちゃんに触るな!」
「俺はこの国が嫌いだ!お前も、国王も全員な!
そう今、極獣夜行を始める!」
シュトルフ=イーレンの特性は従熱。
熱を持つ物を操作できる特性。
体温と水温を基準に判断する。
体温を持つ物を全て操れるわけではなく、ある程度の温度を参照して操れる精密性が変わる。
シュトルフに操られた狼獣の体温は変異により、常に高温状態。
つまり操作性はほぼ思うまま。
従熱された狼獣はフギレを置いて森へ去った。
狼獣と入れ替わるように極獣夜行で活性化した極獣が森を侵略してきた。
空からは鳥獣、地上からは複数の極獣、地中を通って王国へ向かった。
王国の中にいたリテル達や国民は異変に気づき、身構えた。
「リテル、なんじゃこの地響きは?!」
カイは慌てて聞いた。
リテルの生死の賢者には大量の極獣が感知された。
「たくさんの極獣がここに向かってくる。」
「嘘ー!?」
カガガは櫓の上で国の全体を見下ろした。
北には雷の一角を突き刺し、地を這う鳥獣トニトル・ムグー。
東には大気を汚し空を覆う蝶、昆獣プレスト・フィラ。
西には仰け反りを許さぬ鉄壁を纏う蟹、殻獣トリケラ・シールズ。
南には威風を放ち疾風の権化の猪、牛獣リアー・デタイル。
四方から幾頭の極獣が強襲を始めた。
カガガは櫓の上から今の状況を話した。
「直ちに動け!
王国への侵入を許すな!」
リテル達はカガガに従い、リテルとサイダンは北へ。
シャッツは西へ、ゼヴァとカイは東へ、ムロフとホールンは南へ別れた。
北門に到着したリテルとサイダン。
森道を全速力でドタドタと鳴らして駆けてくるのは鳥獣、トニトル・ムグー。
とさかは電気を帯びていて、その鋭く縦一線に伸びた緑の電気はリテルとサイダンを目掛けて走ってきた。
このまま避けると、門を通ってしまう。
電気に少し怯えながらも、舌で鳥獣のバタバタ回る足を掴んだ。
鳥獣は勢いのまま転げて、地面を削った。
「ジ、ギェー!!!」
鳥獣が大きく叫ぶと、森の奥から応答するように叫ばれた。
奥からドタドタ、バタバタと複数の足音がこちらへ向かってくる。
そして顔を出したのは、何列にも並ぶトニトル・ムグーの姿が。
「この数は流石に対処できない!
避けなきゃ、致命傷だ!」
リテルとサイダンは左右に避ける準備をした。
「待たせたな!オイカゼ団のお頭さん!
この門を通らせぬ!
地宴謳歌!」
上空から飛び出して参上したのはジエド=ハグラ。
グローズ旅人団の一員で地を出現させることができる特性、共地。
ジエドは地面を力一杯に叩くと、彼の足元から、彼を持ち上げるように、リテルと門を隠すほどの大きな地面が隆起した。
それでも隆起した地面に鳥獣は怯むことなく頭を突き刺した。
「この鳥獣の電気程度なら防ぐ見込みはある・・・いや、待て!
奴ら意図して頭を刺してないか?」
鳥獣の奇妙な行動にジエドは考える。
「そこに雷が落ちる!!離れて!」
「何?!」
サイダンはジエドにそこを離れることを指示した。
雷が落ちると予想した根拠は、逆立った髪の毛。
髪の毛が逆立ち、静電気が発生する現象は付近に雷が落ちるサインというのを知っていたからだ。
ジエドは身を投げて離れた。
次の瞬間、ジエドが隆起させた地面に巨大な雷が落ちた。
その地面は砕け、地面を砕くほどの威力に驚いてしまう。
砕けた先に見えた鳥獣はとさかの電気が弱まっているのが見えた。
「今が反撃の時。
今こそ壊滅させろ!」
到着した兵士と共に鳥獣達を斬った。
「これで最後・・・」
この一面の鳥獣を一掃した。
そして不審に思われないよう、リテルは木の後ろで倒した鳥獣の場所に行った。
この場所なら生死の賢者で取り込んでも明るみに出ることはないだろうと、取り込んだ瞬間・・・
「何を・・・してますか?」
リテルの心臓が仰天した。
振り返ると、長槍の兵士がいた。
顔は銀の防具で隠れていて見えないが、ひとまず誤魔化した。
「それにしては不自然な血痕ですね。もし・・・」
「おい!お前は早く隊列に戻れ!他を待たせるな!」
兵士のリーダーにその兵士は連れ戻された。
俺の心臓がバクバクだ。




