表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アクアエルド物語  作者: MANAM


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/10

第十話

 機械音が鳴り響く制御室の玉座。東の国の王女ケルマが近くにいる兵に難癖をつけていた。

「あなた! このジュースはどういうつもり⁉︎ 私はこれをワインにして持ってこいと言いつけたはずよ!」

「も…申し訳ありません…なにしろここに醸造施設は無くそのままお出ししてしまいました!」

 困惑しながらも真っ当な理由を告げる兵士に、文句を言いつつジュースを飲み干すケルマ。

「全く…! これだけの機械がありながらワイン一つ作れないなんて! あの男の技術も中途半端ね!」

 グラスを玉座脇のテーブルに乱暴に置くと、大海原を映し出すモニターに一隻のクルーザーの姿を見つける。

「…あのモニターに映っている映像は?」

「は! あれはケルマ様が本国へ要請された第二探査船からの中継映像です」

「ふん…あれ、消してちょうだい」

 ケルマはモニターを見ながら兵士に顎で指示をする。

「は! 了解致しました! 早速第二探査船へ連絡致します!」

 兵士が立ち去るとケルマはグラスにブドウジュースを注ぎ、満足そうに笑みを浮かべ口をつけた。


 マリナの海賊船のブリッジでは東の国の船を発見してどう対応するかセルディがマリナに指示を仰いでいた。

「アネゴどうします? 東の国のあの船…探査船のフリした軍艦ですよ」冷静に分析するセルディ。

「ひゃっはー! ぶっ放しちゃいましょう!」トリガーハッピーラント。

「アホか! こっちがやられるわ! 触らぬ神に祟りなしってね。大きく迂回して離れなさい!」やはり冷静なマリナ。

 探査船から離れるように距離を取ろうとしたその時、マリナの海賊船に向け探査船から機関銃が発砲され始める。

「な…! 奴ら正気か⁉︎ いきなり撃ってくるなんて! それとも俺達が海賊だってバレてたのか⁉︎」

「とにかく逃げるのよ! あんなのとまともに戦って勝てるわけないんだから! 奴らの後方に向かって全速前進!」

「ひゃっはー…」

 セルディはジグザグに航行しなるべく照準が合わないよう逃げ始める。探査船の側面から無数の弾丸が向かってくる。いくつかそれをもらいながらもセルディの操船技術で致命傷を避けつつ艦砲の少ない探査船後方へと回り込むことに成功した。

「よし! こっから引き離しなさい! こっちの方が足は早い! 絶対巻ける!」

 しかし探査船後方にはその船最大火力の大砲が搭載されており、それがマリナの海賊船に照準を合わせる。

「まずいっす!」

 ラントは急いで海賊船の大砲を準備する。そして探査船から大砲が発射され海賊船へ一直線に向かってくる。大爆発が起こり海賊船が立っていられないほど激しく揺れ、マリナはセルディ達に確認する。

「直撃した⁉︎」

「いえ! ラントが奴らの大砲を迎撃して直撃は免れましたが…機関部がやられたようでこれ以上動けません!」

「くそ…! 万事休すか!」

 マリナは地団駄を踏み諦めたように俯いた。

そしてマリナの海賊船は拿捕され、東の国の兵士達が乗り込んで来てマリナ達は拘束され探査船へと連行されて行く。

マリナ、セルディ、ラント、そしてクラマール。

「あれ…イリス⁉︎ イリスがいないぞ…それに料理長も…」

 クラマールは兵士達に聞こえないよう呟きそして探査船の一室へと閉じ込められた。


 襲撃を受ける数分前、海賊船のイリスはノウィスの事で頭がいっぱいになっていた。マリナに世話を焼いていた女性と同一人物なのか、そうだとしたらマリナにどうしてそんなに世話を焼いていたのか。

 考え込むイリスにクラマールが声をかけるが全く聞こえていない様子で、マリナはクラマールの襟首を掴み雑魚寝部屋から共に出る。

「イリスちゃん今混乱してるみたいだから、一人にしてあげましょ」

「その困惑の原因はお前だけどな」

「うっさい! まさか思い出のお姉ちゃんがイリスちゃんのお母さんとおんなじ名前だと思わないでしょ!」

 そこへ船内放送でマリナはセルディから東の国の探査船が近くにいると聞き、クラマールを引っ張りブリッジへ向かった。

 雑魚寝部屋に残されたイリスは話を整理し考え込む。

[考えはまとまったか?]

 共に残ったペロルがイリスに紅茶を差し出しながら聞くが、首を横に振りさらに考える。

[この船は世界中を回った]

 急に脈絡のない話を始めるペロルにさらに困惑するイリス。

[世界中のヒト族を見てきた]

 ペロルはぴょんとイリスの頭の上に飛び乗る。

[だが茶色い髪はマリナとお前以外見た事は無い]

「え…! そうなの⁉︎」

[お前の周りにはいたか?]

 イリスは聞かれて改めて思い出す。祖母のヒウルは黒髪、リサも黒髪、クラマールとシオンは白髪で、セルディの髪色に至っては覚えていなかったが、ペロルの言い様から茶髪では無いようだ。

「お母さんも茶色の髪だった…」

[ふむ。三人お揃いだな]

 ペロルの言葉からイリスは確信する。マリナの思い出の女性と母は同一人物であり、そしてイリス、マリナ、ノウィスには血縁がある事を。

「もしかしたら…お姉ちゃんってあたしの叔母さん…⁉︎ ふふふ! もしそうだとしてもお姉ちゃんはお姉ちゃんだよね」

[おばあさんか。年月が経つのは早い]

 自分が言った叔母さんという言葉とペロルのおばあさん発言に思わず吹き出すイリス。

「お姉ちゃんにも教えてあげよう! もしかしたらって!」

 イリスは勢いよく雑魚寝部屋を飛び出すとブリッジに向かって駆け出す。しかしその時船が大きく揺れ立っていられなくなる。

「な…何…⁉︎ この揺れ…あ…!」

 船が一際大きく揺れるとその反動でイリスは海に投げ出され、そのまま波に呑まれてしまうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ