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レイハート公爵夫人の時戻し  作者: 風見ゆうみ


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9   義父母の襲来

 レイハート公爵家とバクタ王国の王城までは、馬車で片道二時間弱くらいだ。

 昨日の別れ際に、イライアス殿下から、離婚ができそうか報告をするように言われていた。ロガンがごねているため、すぐには難しいということなどを手紙に書き、早馬で持っていってもらうことにした。その後、執務室で一時間程、仕事をしたあとは邸の最上階にある書庫へ向かった。

 魔法のことを詳しく知りたくなり、書庫で文献や魔法について書かれている本を探すことにしたのだ。書庫の中は、天井につくほどの高さの本棚がいくつも並び、窓際には本を読むための簡易スペースがある。

 本を太陽光に当てないようにするため、部屋の窓は小さく、昼でも薄暗いため、ランタンの灯りが必要だ。普段ならば、パンナや他のメイドたちに頼んで必要な本を探してもらう。だが、今回は魔法についての本なので自分一人だけでやって来ている。

 ……いや、正確には一人と一匹か。


「ベェェー」


 ふわふわと飛び回りながら、ベェも一生懸命本を探してくれているが、お目当ての本は一冊も見つからない。


「付き合わせてごめんね。休んでもいいわよ」

「ベェー」


 ベェは探すことに飽きてしまったのか、簡易スペースのテーブルの上で、太陽の日差しを浴びながら昼寝を始めてしまった。 寝ている時でもシルバートレイを背負ったままだ。すやすやと眠るベェの姿に癒されたあと、私はまた本探しを再開した。

 一時間後、ざっとタイトルだけ見終えることはできたが、魔法について書かれていそうな本は、一冊も見当たらなかった。

 多くの貴族のように、お父様も魔法使いを嫌っていたのかしら。


「でも、お父様の先祖は魔法を使えたはず。それなのに嫌うのは変よね。いや、それとこれとは別なの?」


 本人が亡くなってしまった今では、答えが見つからない疑問を口に出し、私は大きくため息を吐いた。

 そうだわ。執事はこの邸に勤め始めてかなり長い。書庫の整理もしてくれているから、何かわかるかもしれない。

 時間を無駄にしたと思った時、ベェが目を覚まして、私の所に飛んできた。


「ベェェー! ベェェー!」


 目の前で短い四本足をバタバタと動かして、何か訴えている。

 まだ、出会って二日目なのよ。そんなに簡単に意思疎通するなんて無理だわ。

 ベェは伝わらないと思ったのか、窓のほうに飛んでいき、私を見つめた。ベェの目は一般的な羊と違い、黒目が大きくてつぶらな瞳をしている。

 何度見てもかわいい。

 ベェは必死なのだろうけど、つい和んでしまった。


「ベェー!」


 笑っている場合じゃないと言わんばかりに、ベェはバタバタと前足を動かす。そして、必死に窓の外を見るを繰り返している。

 誰か来たとでも言いたいの? ……これって、意思疎通ができるようになってきたのかしら?

 急いで窓辺に近づき、レースカーテンを開けて外を見た。

 門からポーチに続く石畳の道を馬車が邸に向かって進んでいる。遠くから見てもわかるくらいに、外装が豪奢な馬車には見覚えがあった。

 オウガ侯爵家の馬車だ。

 昨日は私たちの結婚を祝うために、オウガ侯爵夫妻はレイハート公爵家にやって来ていた初夜ということで気を遣い、レイハート公爵家には泊まらず、王都にある高級宿に泊まっていた。そのまま帰るはずだったのに、こちらに来たということは、ロガンが今日の朝に助けを求めて連絡をしていたみたいね。

 思った以上に速く来たわ。

 連絡しようとは思っていたが、もう少し、味方を増やしてからにしようと思っていた。

 ロガンに甘い二人だ。何を言い出すかわからない。

 執事が報告にやって来る前に、エントランスホールに向かう。すると、慌てた様子で執事が対応しているところだった。

 大柄で鼻と顎の下にたっぷりとした髭をたくわえ、気難しそうな顔立ちのオウガ侯爵と女性としては長身痩躯で神経質そうな顔立ちの夫人は、執事に私を出せとわめいている。


「オウガ侯爵、侯爵夫人、私に何か御用でしょうか」

「何か御用ですって? 理由がわからないなんて言わせないわよ!」

「念の為にお聞きしているのです」

「あらそう! じゃあ言うわ! あなた、私のロガンちゃんを追い出したそうね!」 


 夫人が私を睨みつけて叫んだ。

 私のロガンちゃん?

 彼に甘いことは知っていたけれど、こんな呼び方をしていたとは……。これは考えていた以上に話が通じなさそうだわ。


「結婚初日に義妹と関係を持っていたのです。怒って当たり前なのではないでしょうか」

「浮気くらい多めに見ろ、この馬鹿者が!」


 オウガ侯爵は目を吊り上げて私に近づき、太い腕を振り上げた。

 身を引こうとした瞬間「ベェェー!!」といつもよりも大きな声でベェが鳴いた。

 そして、ベェは躊躇することなく、オウガ侯爵の鼻に体当りした。


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