王へ続く扉
アーサーとランスロットは、ガウェインの墓場まで来ていた。
「戴冠式の前に、こいつにちゃんと報告したかったんだ」
「そうか」
アーサーは、しゃがみこみ、ガウェインの墓に触れた。
「ガウェイン、遂に王になるときがきた。貴様のためにもこの王国を守ると誓う。命をかけて」
「ランスロット団長!」
アーサーとランスロットは振り向いた。
そこには背筋をピンと伸ばした男が立っていた。
「ア、アーサー王子、いえ、アーサー王もご一緒でしたか!これは失礼をしました」
アーサーは立ちあがった。
「構わん。何の用だ?」
「戴冠式の準備が整いましたので、会場にお連れしようと思いまして」
「行くか、アーサー」
「ああ」
アーサーが、背筋をピンと伸ばした男の横を通り過ぎかけた時、ふいに立ち止まった。
「そういえば、貴様、城を襲ったとき、ボーマンとロッシュと共に門を開けてくれようとしていたらしいな」
男はさらに背筋をピンと伸ばした。
「は、はい!」
「あの時は、助かった。礼を言う」
そう言ってアーサーは微笑んだ。
「そ、そんな」
男は、照れくさそうに背筋が縮こまった。
「名は何というのだ?」
男は再びピンと背筋を伸ばした。
「はっ!私の名は、モードレッドと申します。今後は、アーサー王に命を懸けて仕える所存であります」
そう言って笑ったモードレッドの顔を見て、アーサーの顔から笑みが消えた。
「それでは、ご案内いたします!」
モードレッドは歩き出した。
「おい、どうした?アーサー」
「ランスロット」
アーサーは、今思ったことをランスロットに伝えようと思ったが、言葉を飲み込んだ。
いや、気のせいだ、疲れているんだきっと。
「なんでもない」
そう言ってアーサーは歩き出した。
モードレッドの笑った顔が一瞬、父の顔に見えたような気がした。
戴冠式の会場である玉座の間の扉の前に、ボーマン、グウィネヴィア、トリスタンとイズーがいた。
「あ、アーサーの兄さん!」
アーサーの手を振るイズーの頭をトリスタンが殴った。
「いてっ!何すんだよ!兄貴!」
「お前なあ、アーサーは今から王様になるんだぞ、それなのに兄さんって」
「兄貴こそ、王様を呼び捨てじゃないか!」
「なんだと!」
じゃれる兄弟を見て、アーサーたちは笑った。
「じゃあ、王子、王になってこいよ」
ボーマンがアーサーに手を差し出した。
アーサーはその手をしっかりと握った。
「ああ!」
「兄さん」
「アーサー」
トリスタンとイズーもそれぞれ手を差し出した。
アーサーは、ふたりのちいさな手をしっかりと握り締める。
「戴冠式が終わったら、両親を探す。必ず」
トリスタンとイズーの顔に笑顔が戻った。
「ほ、本当に!?」
「ああ。約束だ」
「よかったわね。トリスタン、イズー」
グウィネヴィアが、ふたりに微笑んだ。
「グウィネヴィア」
グウィネヴィアはアーサーに微笑んだが、その瞳は潤んでいた。
「長い間、待たせてすまない」
そう言って、アーサーはグウィネヴィアに手を差し出したが、グウィネヴィアはアーサーを抱き締めた。
「あっという間だったわよ?」
アーサーもグウィネヴィアを強く抱き締めた。
そのとき、横にいたランスロットが大きく咳をした。
アーサーとグウィネヴィアは笑いながら離れた。
「ランスロット」
ランスロットはむすっとした顔をしながられ手を差し出したが、アーサーはランスロットを抱き締めた。
「ありがとう。ランスロット」
ランスロットは、驚いていたが、ぎゅっとアーサーを抱き締めた。
「ガウェインと約束したんだ。俺たちがお前を支えるって」
アーサーは、そうかと小さくつぶやいた。
グウィネヴィアが、ごほんと咳をした。
アーサーとランスロットは離れた。
「私が妬けるんだけど?」
そう言ってグウィネヴィアは笑った。
トリスタンとイズーもボーマンも、ランスロットも、みんな笑っていた。
そうだ。
私はこれだけの人に支えられている。
「じゃあ、行ってくる」
アーサーは玉座の間の扉の前に立った。
ふうっと息を吸い、吐いた。
扉を押すと、ものすごい歓声が聞こえた、だが、歓声よりも、アーサーの耳に聞こえたものがあった。
「いってらっしゃい。アーサー」
アロアの声がアーサーには聞こえたような気がした。
いや、きっと聞こえた。
まぎれもないアロアの声が。




