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のんびりと

いつも通りミナのところにクエスト完了の手続きへ行く。


「あれ、凄いですね…。もうランクアップですか」


渡したカードを見てアイシャが少しビクリとしたがもう慣れたというようにあっさりと復帰した。このカードは経験値の一部を吸って討伐した魔物の数もカウントできるようになっている、相変わらず便利だ。

他にも受けている依頼がきちんと完遂されたか確認できるらしいが仕組み自体は世界が決めているらしく学者もよくわかっていない。


「ランクアップか」

「はい、クエストのクリアの他にもモンスターを倒してもポイントが僅かに貰えるので。スライムのクエストは危険度が低いため貰えるポイントが少ないのにもう上がるなんて」


なんだか隣のアイシャが少し青ざめている。体調でも悪いのだろうか。アイシャもなんだか首を傾げている。


「スライム討伐だけでは数が合わないといいますか、もしかして何か強い魔物のテイムでもされましたか?」


そういうことか、テイムは経験値になるが討伐ほど入るわけじゃない。それは魔物自体が死んでいないからということでギルドカードに記録も残らない。これはまずい、適当にごまかすか。


「何匹かスライムを捕まえては逃がしてを繰り返したんだ、ギルドポイントはテイムでも記録されるとは思わなかったぞ」

「なるほど、ではギルドカードの更新を行うとしましょう。少々お待ちくださいね」


そう言って彼女はギルドカード2枚をカウンターに置いてあるリーダーに差し込んでボタンを押した。大した時間もかかることはなく完了の合図としてベルが鳴る。


「ふう、完了です。これでお二人は……」


先ほどとは違い、今度は完全に固まってしまった彼女だったが俺が目の前で手を振っていると復帰したようだ。後ろで待っている人たちも何事かと一瞬思っていたようだが復活した彼女を見て安心したように興味を失った。


「お二人は今日からCランク冒険者です、後でちゃんとお話を聞かせてくださいねレンさん」


彼女の可愛らしい微笑みからに不思議と気圧されて俺はこくこくと首を縦に振る。この辺り声のトーンを落としてくれたおかげで周りには聞こえていないようで助かる。


「ああ、今日もまた昨日と同じ時間でいいか?」

「ええ、楽しみにしてますね」


なんだろうか、出会って2日しかたっていないのに全く頭が上がらない。もしかして俺は尻に敷かれるタイプなのだろいうか……。少し考え込む俺の横で俺のピンチになったらクスクスと笑っているアイシャには後でお仕置きしたほうがいいかもしれない。

Cランクともなると受けられるクエストの幅が大きく広がった、今なら盗賊団の殲滅やオーガの討伐、貴族の護衛も受けられるだろう。そんなことを考えながら暇つぶしに掲示板のクエストを眺める。これはランクによる制限が大雑把で少し変わったクエストが多いようだ。


「流石に今日はミナと待ち合わせがあるから遠出する依頼は受けられないしな」

「それなら納品以来でも受けたら?ここにエリクサーの納品なんてふざけた依頼が貼られてるし」


冗談めかして彼女は言うがエリクサー程度で達成できる依頼ならば俺は受けるぞ。依頼主は……。


「アイシャ、これ受けるぞ」

「え……」


混乱している彼女を待つのも面倒なので手を握って引っ張っていく。途中落ち着きを取り戻したと思えば今度が照れて文句を言ってきたが結局手を離さない時点で俺を責める権利はない。ちょっとだけ暖かい気分になるが今はやましい感情は一旦奥に追いやって急ぐとしよう。


「おっさん、足りなかったのか」

「お、ルシエ。あのお兄ちゃんがお前と母さんと姉ちゃんの命の恩人だぞ」


店のドアを開けて中に入ると前とは違ってニコニコ笑顔なおっさんを見てこれは誰だと混乱する、アイシャはそもそもここに来たことがないので余計に状況が呑み込めていない。

この店主は厳ついから昨日は不機嫌そうな印象を与えていたが今見るとただの親ばかだ。おっさんの傍にいるちっこい女の子はこちらを見た後に恥ずかしがってはいたものの言いたいことがあったようで近づいてくる。


「お、おにいちゃん。風邪を治すお薬くれてありがとう」


おっさんとは似ても似つかない可愛らしい女の子が満面の笑みでお礼を言ってくる。恐らくお母さんが相当な美人さんなのだろう、将来が期待できそうな顔立ちと子供らしい純粋な目をしていた。

彼女の言う薬とはエリクサーのことだとするなら、この依頼は。


「おっさん、俺を呼ぶためにあの依頼を出したな」

「おう、あんたまだエリクサーを持っていたみたいだったからな。こんな初心者向けなんて言われる街に留まっていてエリクサーを即用意できるのはあんたくらいだろう、依頼を出す時も変な顔されたしな。悪かったな、疑っていて、それと……助かった」

「気にするな、こっちはあの時の取引でこいつを買えてハッピーだから問題ない」


神妙な顔のおっさんが腹立たしいのでお互いに利益があったことを強調した俺の発言におっさんの面がスケベ親父になったので頭をひっぱたいてやる。アイシャも赤くなって反応しないでくれ、こういうのは反応するとセクハラに磨きがかかるのだ。


「くく、うぶな嬢ちゃんだな。大事にしてやれよ」


俺はこのおっさんをかなりぞんざいに扱い全財産を巻き上げたつもりだったんだが何故こんなに好感触なのだ、理解できん。大事な人を救ってくれたことは事実でもきっちり料金は取ったのだがな。

そもそも奴隷なのだから大事も何も俺のせいで彼女は既に不幸である、最悪ではないだけだ。


「お姉ちゃんはお兄ちゃんの恋人なの?」


この6歳児もうそんなことに興味があるのか、女の子の成長は早い。アイシャはあたふたして答えないが首輪に何の制限もかかっていないのだから好きに言えばいいのに。


「アイシャは俺の奴隷だな、俺のサポートをしてくれる」

「へーなんだかパパとママみたいな関係だね」


やめてやれ、アイシャの耐久度はもう0だ。すっかり顔を赤くして沈んでいる、本当に羞恥責めに弱いな。ちなみに奥さんとお姉さんは体調は良くなったが大事をとって今は休んでいるらしい。このちびっこはいいのだろうか。別にステータスをみるに健康らしいからいいか。


「にしてもおっさん、この子の幸運高いな」

「ああ、幸運はレベルに関係ないからよくうちに幸運をもたらしてくれるよ。商売人に向いてるだろ?それ以外にもユニークスキルの効果が商人向きなんだ…将来はいい商人になるだろうな」


果たして女の子が商人になりたがるかは別だが冒険者になるよりマシだろうな、それにしてもこのスキルは優秀だな。


名前 ルシエ

種族 ヒューマン

性別 女

年齢 6

レベル 2

<センス>

生命 C

魔力 D

知力 B

筋力 F

精神 A

器用 E

敏捷 D

幸運 S

<スキル>

【豪運】

本来の運よりも更に幸運に恵まれる。ユニークスキル。

【商売の天賦】

商売事に対して才能がある。ユニークスキル。

<魔法適正>

火,光


なんという商売特化、実数にするとLクラスの運の良さだろうな。おっさんよりこの子が店長のほうが店もいい感じになる気がしてならない。彼のステータスは平凡そのものでユニークスキルが1つもないからな。

それにしても今回の俺は完全に無駄足だったわけだがこのおっさんどうしてくれよう。俺がちょっといたずらを考えているとまだ俺の近くにいたルシエがにこっと微笑みかけてきた。こいつこの年にして男の扱いを分かってそうで末恐ろしいな、だが今回はその笑顔に免じておっさんに何もしないでおいてやろう。

幸い時間もまだあるのでこのちっこいのと話をするとしよう。アイシャはおっさんと何やら話をしているようだが俺がいちいち間に入る必要性はなさそうだしな。


「ルシエは将来何になりたいんだ?」


俺はさっきのおっさんの話から会話をつなげることにする、これならばこの年特有の漠然としているが壮大な夢を話してくれて俺を楽しませてくれるに違いない。


「お兄ちゃんのお嫁さん」


空気が……凍った。

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