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ゲッケイジュのハコニワ  作者: 闇乃
起首篇
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9/9

シオンの花束を抱えて

 木々が生い茂る森の中を一人の女が歩いていた。

月夜の明かりだけがその森を照らしている。

「ふんふん、ふん、ふんふんふ〜ん」

薄暗い中、女は後ろで手を組み鼻歌を歌いながら森の中を彷徨っている。


 その時、携帯の通知が鳴る。

「今回はどうするのが正解かしら?」

通知を確認もせずに女は独り言を呟く。

「それに……」

続く言葉は弱々しく風に吹かれ掻き消える。

「ふふっ」

女はそんな自分の言葉を振り払う様に小さく笑う。

 そしてそのまま森の中に進んでいく。






 しばらく歩いていた女の視界に旅館らしき建物が映る。

 女はその旅館に向かって歩く。

女は橋で一度足を止めて下に流れている川を眺める。川の水は透明で透き通っていて覗き込むと女の姿が水面に映る。

その水面に映った自身の姿を見つめてどこか遠い記憶を思い出すような憂いを見せる。


 風に揺れ女の長く美しい桜色の髪が靡く。

「深桜様、お帰りになられましたか」

館の入り口から近づいて来た女が橋の中央あたりで黄昏ていた深桜―巫深桜に声をかける。

「えぇ、少し遅れたけどね。それで静華、もう皆集まっているのかしら?」

「はい、幹部陣の皆様は会議室に揃っています」

静華―御門静華が巫に答える。

「そう、それじゃ私たちも急ぎましょうか」

「そうですね」

巫の発言に御門も同意する。

「静華、手を出して」

巫がそう言いながら右手を手の平を上にして御門に向けて伸ばす。

「はい...」

御門は少し照れたように頬を染め巫の右手を左手で握り返す。

「ふふっ、ありがとう」

巫は嬉しそうに笑い御門の手に自身の指を絡めるように握る。

「...」

「行きましょうか」

「...はい」

巫と御門はそのまま館へ向かって行った。

その手はまるで恋人のようにお互いに指を絡め合わせられていた。






 その部屋の中は豪華絢爛な様相を呈した和室だった。

様々な花がモチーフにされている屏風や掛け軸などが装飾として置かれている。しかしこの部屋の中で一番目を惹かれるのはそこに集まっている4人の美少女と美女たちだろう。

街中を歩いている時に彼女たちを目撃すれば二度見してしまう。それほど美しい女性たちだった。


 「待たせたわね、遅れてごめんなさい」

そんな部屋に巫と御門が入ってきた。

「あらあら」

「ふふっ」

「可愛い顔しちゃってる」

「静華ばっかりずるいにゃー」

彼女たちは手を繋いだままの2人を口々に揶揄う。

「いいんです。今日は私が深桜様のお世話係なんですから」

頬を赤く染めながら御門が4人に反論する。

「そうよ、私は皆を愛しているのよ。だからそんなに嫉妬しなくても大丈夫よ」

巫が4人を落ち着かせるように笑って伝える。

巫の言葉を聞き全員が嬉しそうに笑顔を見せる。

「それは、そうと早く作戦会議をしましょう」

「ええ、そうしましょうか」

「そうにゃ」

「そうね」

場の空気に耐えきれなくなった御門が切り出し他のメンバーも頷く。

 そして巫と御門が隣の席に着き、会議が始まった。






 「今回のゲーム、ルールを見てあなたたちはどうのかしら?」

巫が御門の肩に頭を預けてながら問いかける。

「そうだねー、最初に思ったのはいつもより開示されている情報が少ない事かな」

花の刺繍が入った着物を着ている美少女が人差し指で頬を抑えてながら答える。

「あ、それ私も思った。結花も思ってたんだ」

「うん、そうだよ。その中で特に介入が分からないんだよね」

結花―月波結花が考える素振りを見せる。

「鈴鹿たちも同じだよね」

「そうそう、'ゲーム進行に応じ通知'って何って話だよ」

鈴鹿―千星鈴鹿が月波たちに向けて首を左右に振りながら口にする。

「結花と鈴鹿が言っている事も理解出来ます。しかしそれは今考えたところで仕方ない事だと思うわ」

「ふふ、相変わらず八雲は合理的に考えるのね」

「巫様も同じ考えだと思っているのですが違いましたか?」

八雲―水羽八雲が巫に対して堂々とした態度で問う。

「そうねぇ、確かにそうですね。それに関しては私たちが今考えたところでどうにもならないと思います。」

水羽の問いに巫が同意する。

「しかし、結花と鈴鹿の意見も大事だと思います。2人の考えも頭の片隅に置いて置かないと不慮の事態が起きた時に対処出来ませんからね」

巫は月波と千星の意見も尊重する様子を見せる。

「う〜ん、難しいはにゃしは嫌いにゃ〜」

「はいはい、ねこ。ごめんね、こっちにおいで」

「にゃ〜ん」

巫が自分の脚を軽く叩き迎え入れる。

「やったにゃ〜ん」

ねこ―猫宮ねこが自身の頭を巫の脚に置く。

そして甘やかすように猫宮の頭を撫でる。撫でられた猫宮は嬉しそうに身動ぎする。

その様子を御門たちは羨ましそうに眺めている。


 「今回は鈴鹿と八雲、結花とねこの班で動いてもらいますね」

「みーちゃんはソロで行くのにゃ?」

「えぇ、そうね。私は確かめたいことがあるので」

「深桜ちゃんの探し人見つかるといいね」

「ありがとうございます。いつか必ずあなた達に紹介してあげるわね」

「はい、楽しみに待っています」

巫の言う'探し人'を月波、御門は肯定する。

水羽と猫宮も言葉にはしなかったが月波たちと同じく頷いている。

 そんな様子を見て巫は嬉しそうに笑う。

「私はずっと待っていますよ、黒波くん」

そして小さく綺世の名前を呟く。






 会議室には全員が集まっていた。

どうやら俺が一番最後のようだ。

「それでは今回のゲームについて話し合いましょうか」

俺が空いている席に座ったのを確認した未莉亜が会議の始まりを告げる。

「会議って言ってもどうせいつもみたいに各々別行動するんでしょ」

開口一番、伊波が面倒くさいといった雰囲気を含みながら問いかける。

「いえ、今回は2チームに分かれてもらいます」

「は?なんでよ」

未莉亜の端的な答えに伊波が疑問を口にする。

「何か分かれる理由があるのか?」

豪も伊波と同じように思ったようだ。

しかし、いつもは個別行動なのか。

それが今回は2チームに分かれる…か。

今は未莉亜の思考を考えても仕方ないな。

どうであれ俺のやるべき事は変わらない。

「今理由をお教えする事は致しません」

「は?何それ」

「私の考えは変わりません。従ってください」

「ちっ、説明する気はないのね。もういい」

未莉亜の答えに伊波は舌打ちをしてこれ以上の答えは得られないと諦めた。

「分かりました、今はお聞きしません」

「ありがとうございます。ですがゲーム中にお教え致しますよ」

「そうですか、ではそれまで待っています」

「私は計画とか考えれないから未莉亜の言う通りに動くよ」

逢は最初から未莉亜に従うつもりだったようだ。


 「それで2チームと言っていたがどう分かれるんだ」

「今回は黒波さんと舞華さん、それと楓さんのグループ1と逢さんと豪さん、想さん、それから私のグループ2に分かれます」

俺と舞華と伊波か。

どういう理由で分けたのかは分からないが伊波と一緒に行動出来るのはこちらとしても好都合だ。

「え、こいつと一緒ってマジ?」

伊波は俺の方を向き嫌そうな顔を見せる。

「まあまあ、そんな事言わないで下さい。黒波さんは私たちの仲間なんですから」

「そんな事分かってる。ただ、なんとなく気に入らないだけよ」

舞華に宥められながら伊波は俺に毒を吐く。

なんとなく気に入らないと直接言われると少し傷付くな。

ここは一旦、

「伊波この後少し付き合ってくれ」

「は、なんでよ」

「そんなに時間は取らない、いいな」

「嫌」

俺の頼みを伊波はキッパリと断る。

「分かった、今はいい」

このくらいでいいか。


 「お話は終わりましたか?」

未莉亜が首を傾げて俺たちに問いかける。

「ああ、終わった」

「そうですか。それでは会議の続きを致しましょう」

「そうだな」


 そして多少の一悶着はあったが会議が再開した。


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