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今までの……

 僕の将来の夢は公共放送であるNHR(日本放送連盟)のアナウンサーになることだった。

 テレビで感情を交えず冷静にニュースを伝える姿に、小学生の僕は思いきり魅入られた。めちゃくちゃ格好よく見えて、僕も大きくなったら、あんな風になるんだと心に決めたのだ。


 それからの僕は友達がテレビのアニメやドラマで盛り上がっている中、ひたすらニュース番組を見ていた。

 クラスで話が合わないのは少し寂しかったけど、知らない知識を吸収する方が友達と馴れ合うより楽しかったのだ。


 今から思えば、可愛げのない頭でっかちな小学生だったと思う。


 そのまま行けばコミュ障になるのは必至だったのだろうけど、転機が訪れたのは中学に入った時だ。

 僕の通った中学には文化部が吹奏楽部と美術部しかなく、楽器演奏も絵を描く才能もなかった僕は偶然読んだ漫画の影響でバスケット部へ入部することにしたのだ。

 そこで僕の性格は陰から陽へと180度の変化を遂げる。


 何と言うか、友達や先輩に恵まれたおかげもあるけど、小学生の時とは別人のように社交的で明るい性格になった。

 で、僕のアナウンサー熱はどうなったかと言うと、引き続きこじらせていた。


 中学の委員会活動で放送委員になったのだ。

 まさに天職!

 僕は水を得た魚のように活動した。


 そして、そこで僕は初めて『Nコン』の存在を知ることになる。


 NHR杯全国放送コンクール、通称Nコン。

 全国放送教育研究会と日本放送連盟が主催する中・高生を対象とする放送コンクールだ。

 大きく分けて、アナウンス・朗読・テレビ番組・ラジオ番組・研究発表の各部門で審査が行われ、地方大会で上位に入賞した個人・団体が東京のNHRホールと国立オリンピック記念青少年総合センターで開かれる全国大会で技を競い合う。

 入賞者の何人かはその後、実際にアナウンサーになったという事実もさることながら、何よりもNHRアナウンサーに審査されることが、僕にとっては重要だった。

 将来の目標に間近で会える機会はそうそうない。



 僕は参加を熱望したが、残念ながら個人での応募はできず、学校を通しての出場しか認められていなかったので、中学生の僕は泣く泣く涙を呑んだ。

 だから高校生になったら、放送部に入って『Nコン』を目指す。それが当面の僕の目標になったのだ。


……なのに。


「あの……ここ放送室ですよね、放送部じゃないんですか?」


「ああ、うちの学校、放送部はないの」


「え、だって友達のお姉さんで卒業生の人が、この学校で放送部だったって……」


「それ、ずいぶん前の話じゃないかな。今の学校放送は基本、放送委員が担当しているし、学校のホームページの部活一覧にも載ってないと思うけど」


 そ、そんな……。


 確かに公立高校の部活は、力のある指導者が転勤したとたん、急に衰えることがあると聞いたことがある。


「どうする、入部取り消す?」


 愕然としている僕に先輩が気の毒そうに聞いてくる。


 あ、優しい人だ。

 どうしよう。

 

 声優? 確かアニメとか洋画の声を当てる仕事だったよな。

 話す技術が学べるなら、とりあえずこの部活でもいいか。


 何よりも、この先輩と一緒なら、どんな部でも……。


「いえ、やっぱり入部します。よろしくお願いします。先輩」


「え、いいの?」


「はい、大丈夫です!」


「わかった。じゃ、も1回。ようこそ声優部に」


 先輩は聞き惚れるような可愛い声と見惚れるほどの笑顔で僕を歓迎してくれた。


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