10 家の掃除と孤児院の協力
ギルの家の入り口は一つだけだ。
道から馬ごと馬車が家に入れるようになっていた。入り口すぐは倉庫にも使っていたらしいく、土間のようになっている。そのまま土間が庭まで続いていて、馬ごと馬車が庭に行ける。庭には馬小屋があり、馬の餌になったのか庭は草が一面に生えていた。
庭に続く土間の左側に竈があった。外へ出なくても使えるように井戸もあり、ロープで汲み上げるつるべ式だ。右側は食堂だろう。階段もあって、二階に上がると書類(木管)が積み上がっている。事務室にしていただろう大きな部屋と二つのこじんまりした部屋があった。小さい部屋の一つは子供部屋だったようでベッドが小さい。もう一つは物置となっていて、ここも物が積み上がっていた。
そうそう馬車は商業ギルドで買い取ってもらった。馬もいないし、バーバラは馬を操れない。ギルの血もいっぱいあったし、ギルには感謝しているが、ちょっと………。仕方ないよね。
家はまだまだ住めるけど、少しほこりがたまっていた。結構広いし一人で掃除は大変そうだ。聞きたいこともあったし、メアリーに相談した。
「ギルドに依頼することはできるけど、今日中は無理よ。友達に手伝ってもらえないの。あと、トイレはね。家の北側にちゃんとあったわよ。頑張れ。」
この異世界に友人はまだいない。一番親しいのはマックスにメアリーだ。そこで東区の孤児院に頼むことにした。今から報告がてら行くことにして、メアリーとは東区に入ってすぐに別れた。ただ
「くれぐれも用心しなさい。」
と言われた。
トイレは確認したらあった。ただの穴がちょこんとあった。何も言えなかったわ。
トイレ事情を引きずりつつ、
「こんにちは。」
「ア、バーバラじゃない。元気だった。」
声をかけてくれたのは一番優しくて一番年長のドロシーだ。
頼みたいことがあるので院長先生をお願いする。先生は院長室にいると言う。
コンコンコン。
ドアをノックする。
「どうぞ。」
中に入ると、
「バーバラ、元気でしたか。」
「はい、ご心配お掛け致しました。実は・・・。」
孤児院を脱走してからのことを報告した。大体はマックスに聞いていたようで『うんうん』と聞いてくれた。
お掃除の件もお願いしてみた。
条件は①これから②五歳以上何人でも③家の掃除と庭の草むしり④報酬はお金または物品。
「いいですよ。十歳の子が一人で住むんです。問題がないか確認がてら全員で行きましょう。」
全員の言葉に反応していると、
「あの子は15歳を過ぎたので独立しましたよ。」
ほっとした。結構根に持っていたようだ。
ギル(私の家)には全員分の清掃用具はないだろうと、各々雑巾やら箒やらを持って集団移動だ。幸い東の孤児院は南区の家に近いところにあった。子供の足でも無事到着した。
小さい子供たちは庭の草むしりだ。料理が好きな子たちは台所や一階の掃除だ。他の子は二階の掃除だ。掃除の前に掃除しやすいから家の家具等をすべてマジックバッグへ収納する。力のある男の子たちは井戸から水を汲み上げる係だ。総勢15名以上だ。はかどる、はかどる。
お掃除をしながらギルさんの家の荷物の確認をしていたら、奥さんとお子さんらしい骨の入った箱を見つけた。その箱にギルさんも入れた。後で庭にお墓を建てようと考えている。墓石の代わりに果物の木を植えようかと思う。何の果物がいいか買い物がてらお店を見て回ることにした。
ギルさんとは会ったことがないし遺体も見ていない。でも、なんだかこっちの家族みたいな気がしている。お父さんと呼ぶには抵抗があるから、お兄さんみたいな存在かな。イヤ、息子かなあ?なんて勝手に思い込んでいる。
「もう少しこのままで我慢してください。」
バーバラは、手を合わせる。
掃除があらかた終わったので、お茶にする。お茶と言ってもお湯を沸かすだけだけだ。でも、何とギルさんの家には本物の茶葉があった。シスターがここでのお茶の入れ方を教えてくれた。日本と同じだった。
「おいしい!!」
でも、小さい子供達は、苦いらしく一口でやめた。お茶でほっとしていると
「一人では物騒ですね。」
院長の言葉にうんうんとうなずくシスターたち。本人のバーバラも心細いとは思っていた。そこへ、突然、
「私が泊まります。泊まりたいです。」
手を上げたのはドロシーだ。シスターが泊まるのは院の仕事に差しさわりがある。男の子を泊まらせるわけにはいかない。年長者のドロシーはもうすぐ15歳で成人する。結果、ドロシーが夜だけ来ることに決まった。
ただ、穴だけのトイレは使いたくない。院長に相談したら、
「平民はあんなもんです。ただ宿屋や孤児院など多くが寝泊まりするところは外から見えないようになっています。」
でも、排水はどんなところでもちゃんとしているようだ。だから勝手にトイレや水まわりは移動できない決まりがあるらしい。トイレの周りに壁を作ることは結構簡単で便器も設置できるユニットがあると教えてくれた。
院長は知り合いに工務店があるので紹介状を書いてくれた。明日行ってみよう。お風呂も欲しい。明日お店の人に聞いてみよう。明日の予定はトイレの設置依頼で、午後は南門で魔法の練習をしよう。
今晩は、まだ宿屋に帰る。
その前に冒険者ギルドのアルバイトだ。
読んでいただいて、ありがとうございます。




