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普通の兵士になりたかったのに、皇帝直属の隠密として帝国の闇を任されすぎている  作者: ネコミコズッキーニ
3章 ちょっと市場調査をしに行くだけの任務ですよね?

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商務官のお仕事に同行する兵士

「あなたは……」


「レオンです」


「ああ、たしかそんな名前でしたね」


 道中でひと通り自己紹介したのに……。珍しい名前でもないので、印象に残りづらかったのだろうか。


 護衛についていくのは残り1人。だが観光地で遊びたいのか、だれも積極的に手を上げようとしない。


 この2週間ちょいで、みんなランド隊長に染められたのかもしれないな……。


「ハァ、仕方がねぇなぁ。それじゃ俺が護衛につきますよっと」


「仕方がなくする仕事ではありません。本来のあなたたちの任務でしょう!」


「これは失礼。ではこのランド、誠心誠意をもって護衛任務につかせていただきます」


 あと1人はランド隊長自身になった。一応仕事らしい仕事をする気はあったらしい。


「では商会や町の案内などは俺が務めましょう」


 案内人にはレイモンドが手を上げてくれた。ニッと俺に笑みを向けてくる。


「よろしいのですか?」


「ええ、もちろん。それに領主様の騎士がいたほうが、トラブルになったときに何かとお役に立てますよ」


 たしかに……往来でチンピラに絡まれても「こっちには騎士様がいるんだぞ!」と言えば、領主の威光で去って行きそうだ。


「ところでアーミックさんは? 一緒しないんですかい?」


 気になっていた点をランド隊長が聞いてくれる。アーミックの名前を聞いてアリアシアはハァとため息を吐いた。


「商会はわたしに任せる……とのことでした。どうやら昨日はずいぶん遅くまで領主様とお酒を飲まれていたようでして……」


「ほほぉう。そりゃ極上の一本が振る舞われたんでしょうなぁ。いやぁ、うらやましい」


 おお……もうお昼を回っているというのに……。


 真面目なアリアシアからすれば、アーミックの仕事の遂行能力には頭を抱えたくなるのだろう。


「しっかりと皆の模範であるように言い含めておきました。今日はもうお酒を飲まないでしょう」


 アリアシアに説教されて喜ぶアーミックの様子が自然と思い浮かぶな……。


「ではご案内をお願いできますか。えぇと……」


「レイモンドです」


「失礼しました、レイモンド様」


「様付けは不要です。気軽に名前でお呼びください」


 俺、レイモンドにランド隊長、アリアシアの4人はさっそく街へと出る。そしていくつかの商会を巡って帳簿の確認を行っていった。


 商会も「領主様から商務官殿が来られることは聞いておりました」と言い、書記官がすぐに帳簿を持ってきてくれる。


 向こうも毎年定期監査を受けているので、あらかじめ通達が届いていれば慣れたものなのだろう。


 アリアシアはスムーズな動作で帳簿を確認していき、荷揚げ量と出荷量の照合を進めていく。


 また倉庫在庫の確認や商会担当者との質疑を繰り返し、おおよそ1時間で1つというペースで監査を終えていった。


「いやぁ、商務官殿はむずかしそうな話をしておりますなぁ」


「わたしだって学府を出ているんです、これくらいは当たり前です」


「監査自体はもう慣れておられるので?」


「……まだ2回目です。今はこうして先輩に仕事を学ばせてもらっています」


 きっと去年学府を卒業したばかりなのだろう。


 しかし見た感じ、やはり“形式的な監査”の域は出ていないな……。というより、アリアシア自身も形式的な監査しか経験がないのだろう。


 付け加えると、アリアシアをあえて「形式的な監査しか必要のない場所」に送っているのだと思う。まだ新人だから経験をしっかり積ませている段階なのだ。


(あ。もしかして変にアーミックに余裕が感じられるのは……)


 自分の同行者は新人である……よし、これから行く先は形式的な監査で十分な領地で確定だ! とか考えていたのかね。


 まぁそれも仕方がないか。ブラックマーケットを摘発するのは商務官の仕事に含まれていない。


 結果的に見つけ出せる立場ではあるが、ブラックマーケットは禁制品が流れていない限りは帝都でも見逃されているのが現状だ。


 もし今回の監査でブラックマーケットを見つけたとしても、それをどうこうしてやろうという行動には出ないだろう。


 せいぜい領主に報告して、あとはオルディア領でどうするかを考えてもらう……といったところか?


 ヴァネッサ室長の話を聞く限り、必要悪という側面もあるみたいだし。


「次が最後……ヴァルカ商会ね」


「ヴァルカ商会は現状、オルディア領で最も大きな商会になります」


「ええ、領主様に見せていただいた帳簿と台帳でそれはよく理解できました」


 おっと……いよいよ本命か。ヴァルカ商会の支部を目指していると、ランド隊長が声をかけてきた。


「よぉレオン。なんだってこんな退屈な護衛任務に志願したんだ?」


「面白そうと思ったからですよ。それに昨日と今日の午前中で、いろいろ観光しましたから」


「ほう! どこかいい場所でもあったかよ?」


「港はやっぱり面白かったですね。レイモンドに案内してもらっていたんですけど……」


 ここでアリアシアがメガネをかけた奇麗な顔をこちらに向けてくる。


「レオンさん、騎士様に対して呼び捨てなど……!」


「ああ、アリアシアさん。いいんですよ」


「レイモンドさん!? でも……!」


「実は自分とレオンは軍学校の同期でして」


「え!?」


 そういやまだだれにも話していなかったな。なんとなくイタズラに成功した気持ちになるが、レイモンドも同様だったらしい。


「ま、そういうことなんです。実は結構昔からの付き合いなんですよ」


「そ……そうなんですか……。いえ、でもレイモンドさんはオルディア領においては貴族の地位にあたります。やはりただの兵士が無礼な真似をするのは……」


「いえいえ、本当に大丈夫ですよ。自分とレオンは軍学校でも仲がよかったですし」


「ほぉ~。それじゃここで偶然の再会を果たしたってわけか」


 そんな雑談をしているうちに、周囲の景色がどんどん変わっていく。


 具体的には雑多な雰囲気だったのが、静かででかい建物が並ぶ区画へと変わっていたのだ。


「このあたりはオルディーンでも商売に成功した者が多く住む地区になります」


「はぁ~~……見るからに一等地って感じがするな」


「はい。その一等地にヴァルカ商会があるのです」


「少し港からは離れていますよね……?」


 そういえばこれまで回った商会はどこも港からほどよく近い場所に構えられていた。このあたりは港までやや距離がある。


「あぁ、説明が足りていませんでした。ヴァルカ商会のお店自体は港の近くにあるのです」


「…………? どういうことでしょう?」


「今から向かうのはヴァルカ商会のオルディーン支部、その支部長が住む屋敷です。ヴァルカ商会では支部長が帳簿を管理しているのですよ」


「へぇぇ……」


 しばらく歩くと立派な門にかなりでかい屋敷が見えてきた。というか領主の屋敷と比べても、少し小さいくらいの印象だ。


「こ、これほどのお屋敷を建てられたのですか……?」


「いいえ、実はここは大昔の領主様の親族が住まわれていたのです。空き家になっていてしばらくドライガン様が管理していたのですが、その維持費もかなりかかっていたようでして……。そんな中、ヴァルカ商会の支部長が商会の拠点兼自分の住む家として購入されたと聞きました」


 なるほど……もとは領主一族の使用していた屋敷だったのか。


 ドライガンとしても使わない屋敷を買い取ってもらえてメリットがあるし、支部長からしてもオルディア領の領都で立派な家を構えられるというわけだ。


 レイモンドが門番に用件を伝える。門番もレイモンドと面識があったのだろう、すぐに屋敷の中へと案内してくれた。


 そのまま3階へと上がり、奥まった部屋へと通される。


「ようこそ、商務官殿。お忙しいところお越しいただき感謝いたします」


 立派な執務机の奥には糸目でオールバックの男が笑顔で立っていた。その隣には筋骨隆々な大男と、2人の女性が立っている。


 おや……この2人はたしか、初めてオルディーンに来たときに〈海の走者(マリス・コルサ)〉の残党に絡まれていた女性たちだな。


「私はヴァルカ商会オルディーン支部長のモーリックと言います。用件は領主様よりおうかがいしております、監査については喜んで協力させていただきましょう」


 ………………この4人、全員仙勁(オーラ)レベルが高いな。


 それだけじゃない、明らかに「やりなれている」奴に見られる独特の気配がする……!

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