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普通の兵士になりたかったのに、皇帝直属の隠密として帝国の闇を任されすぎている  作者: ネコミコズッキーニ
3章 ちょっと市場調査をしに行くだけの任務ですよね?

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レイモンドと見回る港町

 レイモンドは俺の同期で軍学校を士官コースで卒業した男だ。


 しかし先日、同じく同期のユリウスから「レイモンドはオルディア領の騎士となった」と聞いたところだった。


 そして今回の任務、行先がオルディア領と聞いたとき、もしかしたら会えるかもしれないと思っていたのだが……まさかこんなに早く再会できるとは。


「レオン、せっかくだ。街を案内しながらいろいろ話そう」


「おお、助かる」


 そんなわけで俺はレイモンドと街に出る。みんなは兵士に案内をしてもらっている中、騎士様に案内されるとは……。


 街をぶらつき、どこに何があるのかを聞きつつもお互いに近況を話していく。


「へぇ、帝都で同期会か! いいなぁ……俺も参加したかったが……」


「いや、さすがに同期会のために帝都までは来られないだろ」


「みんな元気か?」


「ああ。バニィはちょっとわかんねぇけど、とくに変わりなくやっているよ」


 屋台で串焼きを買い、食い歩きをしながら港のほうに足を向ける。


「でもいいのか? 騎士様がこんな時間から遊んでいてよ」


「この地に慣れない帝国兵士を案内するという仕事中だ。ドライガン様の許可も得ている、何も問題ないさ」


「ああ、そういやあれ、よくうまいこと許可を取り付けたもんだな」


 きっとレイモンドもこうして俺と会話する時間を作るために、俺たちの世話係を買って出たのだろう。港につくとそこは街とはまた異なる活気があった。


「へぇぇ……すげぇ眺めだな……! 船も人も多いし……!」


 こっちにも露店が並んでおり、魚を捌く音や値段交渉している人たちもいる。


 また異国人も来るので揉め事も多いのだろう、兵士たちも多く巡回している様子だった。風に乗ってスパイシーな香辛料の香りが鼻腔を刺激してくる。


 面白かったのは、魔術を使う者がいたことだ。彼らは手のひらをかかげてちょっとした火球を打ち上げ、周囲からはおひねりをもらっている。


「はぁぁぁ……すげぇな。魔術をこんな普通に使う奴がいるなんて……」


「ああ、帝国では妖精族の血を引く者は貴族が多いけど……他国では庶民にも多く妖精族の血が混じっていて、ああして見世物代わりに魔術を使う奴もいるんだよ」


「ほおぉぉ……」


 この世界には人間以外にも鉄精ドワルン樹精エルネス潮精マーレといった種族がいる。彼らは「妖精族」と一括りにされるが、人と違って魔術が使用できるのだ。


 そして人との混血児にもその素養は引き継がれる。皇帝一族には樹精エルネスの血が入っているので、素質ある者は魔術が使えるのだろう。


「他国かぁ……こうして港で異国情緒が感じられると、どんなところなのかちょっと行ってみたくなるな」


「ああ、その気持ちはよくわかる。俺も騎士として領都オルディーンに来てから、何度もそう思ったし」


「そういや子どもの頃、俺ストライダーに憧れていたんだよ。もし兵士になっていなかったら、他国でストライダーをしていたかもな」


「はは、レオンがストライダーか。想像つかないな」


 そもそも帝国では地味な存在だしな……。しかしストライダーは魔獣討伐の他、古代遺跡に潜ることもあると聞く。


 それに高ランクのストライダーのパーティは、仙勁オーラレベルも高く高難度の魔術の使い手もいるらしいし。


 ま、さすがに今はストライダーをやりたいとは思っていないが……。


「あ、そうだ。ちょっと教えてほしいことがあるんだけどよ」


「なんだ?」


 一応、俺には本命の任務もあるからな。さっきは聞くことをやめたが、レイモンド相手なら世間話としていろいろ聞き出せるだろう。


 うぅ……友人なのに仕事として情報を引き出そうとしている俺、客観的に見るとなかなかつらいところがあるな……。


「ほら、昨日の騒動のことだよ。あのマフィア崩れたち、2人の女性に対してヴァルカ商会がどうとか言っていただろ? なんか関係ある商会の名前なのかと思ってよ」


 そう……これがさっき、ドライガンに聞こうか迷った質問だ。


 レイモンドはさすがによく知っているのか、「あぁ」と答えてくれる。


「外国の商会だよ」


「へぇ? 外国の……?」


「ああ。どうやらドライガン様の厚意によって、特別にこの街のみ支店を出しているんだ」


 外国の商会が……領都オルディーンに支店を……?


「そういうの、できるもんなのか?」


「実際にできている以上、帝国法では問題ないんだろうね。それにヴァルカ商会は支店を出す前から、かなり交易量が多かったと聞く。ここに支店を置くことで物流の拠点として活用できたり、価格競争や品質管理など、メリットがあるんじゃないか?」


 そういやドライガンは年々取引量が増えていると言っていたな……。


 大きな商会としては、そのままこの地に支店を置いて、より商売に弾みをきかせたいのだろう。


「それって領主様から見てもメリットなのか?」


「もちろんそうだろう。雇用が生まれるし、税収が増えて他国の価値ある交易品がより入りやすくなるのだから」


 おお……少し見ない間にレイモンドがかなり経済に詳しくなっている気がする……! 


 そもそも士官コースまで上がったんだ、そこでもいろいろ学んではいるんだろうけど。


「ん……? じゃなんだってマフィア崩れどもは、そのヴァルカ商会の関係者らしき女性たちにちょっかいをかけていたんだ?」


「さぁな。ヴァルカ商会はこの街でも有名だし、金でも持っていると思ったか……あるいはさらって、身代金を要求しようとしていたんじゃないのか?」


「どっちもありそうだなぁ……」


 港を歩きながら倉庫の数や位置を確認していく。


 いや、かなり広いな……地図でもないとなかなか慣れなさそうだ。


 レイモンドはマフィア〈海の走者(マリス・コルサ)〉を潰したと話していた。ブラックマーケットのこととか知っていたら教えてほしいが……さすがに踏み込みすぎか。


「なぁレイモンド。この街って〈海の走者(マリス・コルサ)〉以外にマフィアはいないのか?」


「ん……?」


「一応、護衛としてやってきた真面目な帝国軍兵士だからな。初日からあんな騒動を見たし、他に気をつける奴らがいるのか気になってよ」


 俺の話を聞いて納得したのか、レイモンドは質問に答えてくれる。


「マフィア未満な小さなグループならいくつかあるが、大々的にマフィアとして幅を利かせていたのは〈海の走者(マリス・コルサ)〉くらいだな」


「そうか……ん? マフィア未満な小さなグループ……?」


「不良どもの集まりという認識で大丈夫だ。前までは〈海の走者(マリス・コルサ)〉の下っ端みたいなことをしていたようだが、ボスがいなくなったことで今はずいぶんと大人しくなっている」


 半グレ集団みたいなものか。まぁこの様子だと、〈海の走者(マリス・コルサ)〉を解体したことでオルディーンは平和なようだな。


海の走者(マリス・コルサ)〉残党からすれば悔しい思いもあるだろうが……少なくとも領民はドライガンに感謝している様子だった。


 商務官に対する協力姿勢といい、今のところ脱税しているような人物には見えないな。


 というかこの時点で俺は任務の一つ……「商務官と領主に癒着がないか見張る」というものを意識の外に置くことにした。


 荷揚げ量と税収が合わないケースはよくあるとヴァネッサ室長も言っていたし、そのことはドライガンも認めていた。隠す理由もなく、いくら調べられても構わないということだ。


「ま、そういうことならせっかくの機会だし、この平和なオルディーンを観光させてもらおうかな」


「ああ、存分に楽しんでいくといい。帝都で兵士をやっていると、なかなかこうした機会もないだろ?」


「そうだな」


 おそらく単独行動は比較的取りやすい。観光しつつ地理の把握を進め、明日にでも情報院のエージェントと接触を図るか……。


「そういやフィローザがさ。なんかやたら酒飲むようになってたんだよ」


「ほんとか!? 想像つかないな……」


「いやほんとほんと。もう飲みっぷりがすごいのなんの……」


 こうしてオルディーンでの2日目が過ぎていく。この時の俺は他の兵士たちと同じく、観光気分が盛り上がってきていた。




 そして3日目。2人の商務官は本来であれば今日から外に出る予定だったらしいが、ドライガンより渡された資料があまりにも分厚かったらしく、まだ精査しきれていないらしい。


 そのため午前中はずっと屋敷に籠るとのことだった。アリアシアがげんなりした様子で口を開く。


「……もしかしたら昼過ぎから外に出るかもしれません。午前中は好きにしてください」


「お、ラッキー」


「ただし! 領民のみなさんに迷惑をかけないように、ちゃんと帝国軍の正規兵としてのモラルをもって……!」


 午前中空いたのはちょうどいい。俺は情報院のエージェントと接触を図るべく、屋敷を出たのだった。

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