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普通の兵士になりたかったのに、皇帝直属の隠密として帝国の闇を任されすぎている  作者: ネコミコズッキーニ
2章 手紙を受け取るだけの任務ですよね?

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兄弟との飲みが楽しいかは、それまでの関係性による

「レオン、久しぶりだな」


「エグシス兄さん、本当に久しぶり。こうして会うのは何年ぶりかな……?」


 休暇もいよいよ終わりが見えてきたタイミングで、俺はエグシス兄さんと久しぶりの再会を果たしていた。


 場所は帝都中心区でも少しいいお店が立ち並ぶ場所。親切なことに兄さんはそこでお店を予約してくれていた。


 個室に通されたところでビールの入ったグラスを持ち、乾杯を交わす。


「でも驚いたよ。兄さん、ハーキム領の城塞都市に配属されていたよね?」


 ハーキム領……大貴族であるニコラウス・ハーキムの治める広大な領地だ。あまり仲のよくない隣国と接していることもあり、常に緊張感のある土地というイメージがある。


 エグシス兄さんは、ニコラウスの弟であり軍務卿の地位にあるテオドール・ハーキムに仕える騎士である。


 テオドールは兄の領地に強力な戦力を送るため、軍学校で「これは」と、目をつけた学生を騎士として登用することで有名だ。


 軍学校を私物化していると一部では批判が出ているが、頻繁に行っているわけではないことと、テオドール以外にも似たようなことをやっている者は多いのが実情である。


 同期のレイモンドもオルディア領に仕える騎士となったが、それだって軍からすれば「3年かけて教育した士官が取られた」と思っているだろうし。


「ああ、今も所属はそっちだよ」


「ならどうして帝都に……?」


「ずいぶんと長く勤めていたからね。閣下より6ヶ月の特別休暇をいただいたんだ」


「6ヶ月!?」


 すげぇ……! 帝国軍はもちろん、黒紋監察室でもまず考えらえない待遇だ……!


 騎士の待遇は仕える家や主によってまちまちだ。しかしハーキム家といえば帝国でも有数の大貴族だし、そこに仕える騎士ともなればエリートというイメージが強い。きっと待遇もかなりいいのだろう。


 う……うらやましい……。黒紋監察室よりも福利厚生が整っているのではないだろうか。


「閣下からはいい機会だから、故郷の家族に顔を見せてやれと言われていてね。もう少ししたら帝都を発って、久しぶりにヴァルツァー領へ帰ろうと思っているよ」


「ああ、今なら雪の影響も受けないだろうし……何もなければ1ヶ月くらいで行けるかな?」


 アイゼンブルク帝国の北端には山脈が走っているのだが、ヴァルツァー領はその山脈に面する領地だ。つまり帝都から見ればかなりの辺境である。


 また冬はとにかく雪がすごい。本格的に降り始めたら雪によって閉ざされる領地となり、外界との行き来ができなくなるのだ。


 そのためヴァルツァー領では冬に入る前に、しっかりと越冬の準備を整える。


風駆疾馬ウィンドライナーが使えれば、もっと短い時間で行けるだろうけど……。でも今から向かうとなると、アヴィエスとはあまり長く過ごせないかな……?」


 風駆疾馬ウィンドライナー……地脈に流れる龍気ドラグマを体内に取り込むことのできる、馬に似た生物だ。


 数も少なく貴重な偽馬であり、ものすごく足が速い。


「ん? アヴィエスがどうかしたのか?」


「今年から帝立アストラ学院に通うみたいでさ。たぶんあと2ヶ月くらいもすれば、帝都にやってくると思うんだけど……」


「アヴィエスが帝立アストラ学院に!?」


 おお……驚いている。まぁそうだよな……一番上の兄であるルディオも通っていないし。


 もしかしたら親父はアヴィエスのことを書いた手紙をエグシス兄さんにも送っていたのかもしれないが、送り先はハーキム領になる。帝都に向かっていた兄さんと入れ違いになった可能性もあるな。


「入学は青風の月だから、たしかにアヴィエスとは少ししか一緒にいられないかもしれないな……いや、むしろちょうどいいかもしれない」


「ん? なにが?」


「アヴィエスと一緒に帝都に向かえば、護衛もしてやれるしそのまま帝都を案内することもできる。まぁ帝都に関してはレオンの方が詳しいだろうけど」


 つまり故郷に戻って、そのままアヴィエスと一緒に帝都に向かおうということか。


 そうなるとせっかくの帰郷期間が短くなりそうだけど……まぁそこはエグシス兄さんの考えることだな。


 とりあえず話を変えるべく、エグシス兄さんの近況について聞いてみる。


「実際、ハーキム領での暮らしはどう?」


「どう、とは?」


「ほら、ハーキム領ってアイゼリア導王国と隣接しているでしょ? 小競り合いも多いと聞くし、行ったことはないけど戦いの気配が強い領地というイメージがあってさ」


 俺も任務で帝都外へ出ることは多いが、さすがに遠く離れた領地までは行ったことがない。


 それにアイゼリア導王国は「妖精王の血を引く国王こそが、大陸に住まう者たちを導く義務があるのだ!」とかいう主張を国是としているような国である。はっきり言って物騒極まりない。


 俺は一生縁がない国だろうけど、そんな野蛮な国と隣接して領地を守る兄さんも大変だと思うのだ。


「まぁ実際、何度か戦いにはなったかな……」


「え、マジで」


「本格的な武力衝突というものではないけどね。だがあの国には魔術の使い手も多いし、厄介な連中なのは事実だよ」


 アイゼリア導王国のある場所は、大昔は妖精族が固まっていたという話だからな……。


「だが土地柄もあって、領民はみんな気骨もある。緊張感は絶えないけど、一体感も得られるし、騎士としての生活自体には満足しているよ」


 そう言うエグシス兄さんの顔はとても自信に満ちあふれたものだった。


 軍学校を卒業する前にテオドール軍務卿に騎士として引き抜かれた兄さんだが、ハーキム領での生活で得たものも多いのだろう。


 それに兄さんは昔から俺たち三兄弟の中で最も仙勁オーラが強く、真面目な性格だった。


 きっと「俺の仕事は家族や故郷を守ることにつながっている」と考えているのではないだろうか。


「そういうレオンはどうなんだ? 帝国軍の兵士となって3年は経っただろう? 仕事は順調か?」


「あ……あぁ、もちろん! すごく順調だよ、ほんとほんと!」


「そうか。今はどこの部署に配属されているんだ?」


「んぇ……とぉ……」


 あまり深いところまで突っ込まないで、兄さん! 


 だが落ち着け……たしかヴァネッサ室長からは、こういうときにどう答えればいいのか、あらかじめ回答を準備してもらっていたはず……!


「て、帝都守備軍の中央第一守備隊だよ……」


 こう言っておけば、万が一探られたときもヴァネッサ室長のほうで対処ができるらしい。


 あの人もわりと良い家柄の出身だし、室長という立場と合わせていろいろコネを持っているのだろう。


「へぇ! 中央第一守備隊か! あそこはそれなりに認められた者しか配属されないと聞いている、がんばったんだなレオン」


「え!? い、いや……たまたまだよ! ほら、一般兵なんてころころ配属が変わるからさ! 前は帝都の隅の区画を巡回していたし!」


「そこから中央第一守備隊に抜擢されるとは、さすがだな。レオンは昔から魔獣を相手によく仙勁オーラを鍛えていたもんなぁ……」


「いやいやいやいや! たぶんすぐにまた配属が変わるよ!」


 ぶんぶんと腕と首を横に振るが、ここでエグシス兄さんは真剣な目つきへと変わる。


「レオン。もしよければ、俺からテオドール閣下にお前を騎士にしていただけないか、掛け合ってみようと思っているんだが……」


「っ!?」


 ちょ……何言ってんの、この人!? 俺を……き、騎士にぃ!?


「お前の戦闘センスは、はっきり言って俺よりも上だと思っている。それに仙勁オーラもずいぶんと磨いたのではないか? 実力を計るテストはあるだろうが、きっと閣下はお前を騎士として召し抱えたいとおっしゃると思うんだ」


「ええぇぇぇぇ!?」


「第一守備隊に配属されているというのもいい後押しになる。他の部署に配属される可能性があるなら、なおさらこのタイミングで推薦しておいたほうがいいと思ったんだが……」


 どうやらエグシス兄さんの中で、第一守備隊の評価がかなり高いようだ。


 兄さんなりに俺に気を使ってくれているんだろうけど……たとえ俺が紋影官でなかったとしてもこの話はナシだ。


 そもそも俺はなるべく責任ある立場を避けたいと考えて、ごく普通の帝国兵を目指していた身だし。


「兄さん……戦闘センスが俺のほうが上って、そんなはずないだろ?」


「いや、ヴァルツァー領にいたころ、お前と魔獣の戦いを見て俺は……」


「何年前の話だよ。もうずっとただの兵士をしているし、城塞都市で経験を積んだ兄さんと比べたら俺なんてザコもいいところだって」


 ヴァルツァー領は辺境だけあって、かなり魔獣が多いんだよな……。冬は雪もすごいので、ストライダーたちもめったに寄らないし。


 そのため領民や領主一族が率先して魔獣と戦う土地柄なのだ。俺も幼少期からよく鍛えられてしまった。


「ま、とにかく気持ちだけ」


「そうか……まぁレオンがそう言うのなら無理強いはできないな」


 エグシス兄さんはフッと笑みを浮かべる。もしかしたら「弟は華の帝都から離れるのがイヤなようだ」と考えたのかもしれない。


 とにかくこの話はさっさと終わらせよう。そう考えて俺はカバンから袋を取り出し、それをエグシス兄さんに渡す。


「これは……?」


「せっかく久しぶりに再会できたんだ、お土産だよ」


「お土産……?」


 エグシス兄さんは袋の中身を確認する。そして首を横にかしげた。


「何かの……液体……?」


「武器の手入れ用オイルだよ。それなりに品質のいい物を選んだから、よかったら使ってよ」


「なるほど、オイルか。ありがとう、これは助かるよ」


 兄さんは騎士だし、お土産を渡すのならこういう実用的な物がいいかと考えたのだが……どうやら正解だったようだ。


「あ、そうだ。故郷に戻るなら、アヴィエスのぶんのお土産も持って行ってよ。あぁ、ついでに親父たちのぶんも用意するか」


「そうだな、俺としたことが故郷へのお土産をすっかり忘れていた」


「なら明日、一緒にお土産を選びにいかない? 都合はどう?」


「いいな。うん、明日も大丈夫だ。では家族への土産を選ぶとしようか」


 こうして俺と兄さんは翌日、一緒にお土産を買いに行く。


 購入したお土産を兄さんに託し、数日後。休暇を終えた俺にヴァネッサ室長からの呼び出しがかかる。


 そしてそこで思いがけない任務を言い渡されたのだった。


「え……? お、オルディア領へ……単独潜入任務……!?」

 ご覧いただきまして、ありがとうございます!

 次話から3章となります、よりコメディ色にエンジンがかかってまいりますので、ご期待いただけましたらと……!


 また皆様の応援のおかげで、連載中の日間ハイファンタジー30位以内に入ることができました!

 ありがとうございますっ!


 ポイントによる応援やブックマークは、作品を書き続ける上で非常に強いモチベーションにつながります!

 お手数をおかけしますが、引き続き下記⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎からのご評価およびブックマークいただけますと、大変うれしいです。


 明日も投稿いたしますので、なにとぞよろしくお願いいたします。

 

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