第4話 その④
隠世がフィグを呼びに行っている間、陽はブラックジャックをしていた。
陽の他にテーブルには二人いる。
一人は女性で黒地に黄色の差し色が入った蜘蛛の仮面を着けている。着ているドレスは少々露出が高めだ。
もう一人は差し色さえない茶色の熊の仮面を着けている。着ているのもシンプルに黒のスーツだ。
今はゲームが終わった所でディーラーが場を整えていると、もう一人やって来た。
黒と銀で塗られた、狼の頭骨を模した仮面を着けた男性だ。こちらは袴を着ている。
席に着くなり狼面の男性は赤色チップ五枚(二十五万)、緑色チップ一枚(二十五万)を卓に置いた。
「Change, please」
ディーラーは返事をすると、回収して白色チップ五〇枚(五〇万)を狼面の前に置いた。
「Thank you」
男の後ろに同じ袴を着た鴉の仮面を着けた男性がついた。おそらく護衛だろう。
狼面は陽に向かって軽く会釈をした。陽も一応会釈を返しておいた。
「Placeyour bets」
陽を含めた四人は卓の指定された場所にチップを置いていく。
ブラックジャックは勝てば倍になるので高額チップは禁止されている。
ゆえに全員置いたのは白チップ(一枚一万)だ。
陽は六枚、蜘蛛面は十枚、熊面は五枚、狼面は二枚だ。
「No more bets」
ディーラーはトランプカードをカードシューから出し順に配って最後に自分の所に置いた。それを二巡して全員に絵柄を上にして二枚ずつ配った。
しかし、ディーラーの二枚目は裏にして置かれている。
蜘蛛面はAと11、ブラックジャックだ。
熊面は4と3、陽は2と9、狼面は8と10、ディーラーは6と?だ。
蜘蛛面は、嬉しそうに鼻息を漏らした。自身の手のひらを左右に振った。これはスタンドのサインで「これ以上カードはいらない」という意味だ。
熊面は卓を二回叩いた。これはヒットのサインで「カードを一枚追加」だ。
ディーラーがカードシューから出す。8だった。
熊面は再度二回叩いた。次は9だ。これで合計は24。Burstして負けた。
熊面が舌打ちをしている間にディーラーはカードと賭けチップを回収した。
陽はとりあえず一枚貰うことにした。絵柄は統一で10だ。今なら何が来てもBurstすることはない。
来たのは6。これで17。陽は少し考え後スタンドすることにした。
17ならA~4が来る確率より5~Kが来る確率の方が高い。もう一枚貰ってBurstするよりこのまま待ってディーラーが自分より低いことを願ったほうがまだいいと判断したからだ。
狼面は卓を二回叩いた。来たのは2。これで20。当然スタンドだ。
プレーヤー全員が最終決定したので今度はディーラーの番だ。
裏だったのは4。表だった6との合計は10。
カードシューから出すと4。誰かから唾を飲みこむ音が聞こえた。
再度カードシューから出すと5。合計19。
勝者は蜘蛛面と狼面となった。カードを回収し、使用済みケースに置くと勝利した二人に賭けられた枚数と同じ枚数を渡した。
「Placeyour bets」
指定の場所にチップを置く。
今度は初手から17だ。スタンドして待つことにした。
このゲームはディーラーがBurstして全員勝利した。
何回かゲームしていると陽は狼面側の視界の端で何かが反射しているのに気がついた。
目だけを動かしてそれを見ると正体がわかった。
狼面が器用に親指から順番にチップを渡していて同じように親指側に返している……と思ったら不定期に小指から手の平に回して親指の方に回していた。確かマジシャンがやるコインロールという技だったはずだ。
ずっと反射していたのは黒チップだったのかと納得した。
そのあと二ゲームほどして止めることにした。
「I’m out. Color up, please」
陽の目の前には白チップが七〇枚程置かれている。
ディーラーは返事をしてチップを回収した。
「へぇー下りるんだ? あんだけ負けたのに」
ブラックジャックでの戦績はあまり良くなかった。勝ったり負けたりで先程ルーレットで稼いだ金額を半分まで減らしてしまった。
陽は狼面を一瞬だけ見た。
「ご心配なく。あなたこそ自分の心配したらどうですか?」
狼面は目を細めた。
「かわいこちゃんに心配されるのはきもちいーね」
陽は後ろから隠世の気配が近づいてくるのを察知した。
「待ち人が来たので失礼します」
「このゲームを暇潰しにするなんて、わるい女だね」
狼面が冷たく笑ったので、陽も冷たい声で返した。
「そういうトコロでしょ」
話していると陽の前にディーラーから緑色チップ(二十五万)が2枚、赤色チップ(五万)が4枚置かれた。
陽はチップ回収すると後ろに来ていた隠世に渡した。
「Good luck.」
そう言い残して隠世の腕に自身の腕を回してその場を後にした。




