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リンドウは手を伸ばす  作者: 長坂青空 加良奈志翠 山葵大福
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第3話 ③

odeli(オーデリー)での捜査を終えた藤池隊・桜井隊は昼過ぎに文警局に戻って来た。

昼食を食べ終えたら押収物の確認とデータ入力作業をしなければならない。

「そういえば今回、日野副隊長はどうしたんです?」

河辺が思い出したように藤池に訊いた。

「有給を取っています。父親の七回忌に参加すると。しかし、副隊はいないと困ることがありますので今回は一時的に篠田を任命しました」

「日野副隊長のお父上は裁定室の方でしたね」

「あれは痛ましい事件でした」

桜井はodeli(オーデリー)と日野の父親の事件を自然と関連付けた。

「…………そういう事。だから今日だったのね」

桜井は数秒開けて藤池に訊いた。

「御仏前はまだ間に合うかしら」

「それは当人に訊いてみてください、お心遣いありがとうございます。……失礼します」

藤池は部下を引き連れて建物へ消えていった。

それを見送りながら河辺は桜井に気になっていたことを訊いた。

「隊長、一つ聞きたいのですが」

「何かしら?」

「本当にSauvalie(サーヴァリー)の化粧品をお使いで?」

桜井はその質問にきょとんとした反応した。

「ふふ、あれは嘘よ。私が外国の化粧品を使うわけ無いでしょう? 使うのは昔から国内製造のみ。街で女の子達があんなことを言っていたから、おかげで山下を持ち上げるのに助かったわ」

「あれ、全部聞きかじっただけなんですか」

河辺は改めて自分の上司が恐ろしい人だと感じた。

「あ、隊長、あとでちゃんと文警局の系列病院に行ってくださいね。解毒剤を飲んだとはいえ毒物を摂取したんですから」

「あー、忘れそうだわ」

「忘れないでください」


「山下、これはどうやって手に入れた?」

火山は昨日逮捕した山下と取調室で対峙していた。

今朝の早い段階から桜井隊から共有された情報を基に山下を問い詰める。

取調室の扉の前には昨日山下を受け取ったという公安がいる。

非常にやりづらい。

机から押収したカタログを取り出して山下に突きつける。

「山下、これはどうやって手に入れた?」

山下は答えない。取り調べが始まって一時間。同じ質問を繰り返して火山はイライラしてきた。

「BCMか、個人か、それとも他の手段か……どれだ?」

山下は依然として答えない。

「答えろ! 山下!!」

火山は山下の胸ぐらを掴んで立たせた。

「火山さん! 容疑者への暴力はお止めください!」

公安に止められ、火山は舌打ちをして放した。

腕を組んで山下を見据える。

「……このカタログの武器見本は絵だそうだな。正規創作者はこれを違法だと分かっているからな、十中八九、非正規の仕業だろう。非正規創作者を庇っているとすれば、仲間と見なして等級付けをする事になるが」

火山の言葉に山下が反応した。

言葉は出なかったが、息を短く吸った音と分かるくらいには身体が跳ねた。

「そ、それはあまりにも横暴です!」

「何?」

「黙秘をしているだけで等級付をするなんて……処刑すると言っているようなものです」

火山は何を今更と呆れた声を出した。

「そう言ったんだが?」

「あんた達文警局は、人の心が無いのか⁉」

今度は公安が火山の胸ぐらを掴もうとしていると、マジックミラー越しに見ていた他の公安が止めに来た。

「やめろ木村! 文警局を敵に回すつもりか!」

同僚か、部下か上司か、そのいづれかであろう二人に木村は羽交い絞めにされて連れ出されて行った。

「火山さん、口を挟んでしまい申し訳ありませんでした。ここからは私、加藤が同席させていただきます」

遅れて入って来た加藤が火山に頭を下げた。

「アレに言っておけ。犯罪者に心を許すなと」

「伝えます」

「アレを処分するかはお前達に任せる」

加藤はさらに頭を下げて言った。

「寛大な処置をありがとうございます」

加藤は数拍開けて頭を上げた。

「さて、続きだ。山下」

火山が向き直ると山下は肩を震わせていた。

「……ぅ」

やっと口を開いて発した言葉はあまりにも小さく一瞬聞き間違いかとも思った。

「聞こえないが?」

「っ言う」

やっと話す気になったかと火山はため息をついた。

「これの入手先と入手方法は?」

「それは──」

話し始めるのと同時に扉がノックされた。

加藤が扉を開けると飛鳥が入って来た。

「しつれーします。隊長ー」

「なんだ」

飛鳥は山下をチラリとみると用件を話した。

「僕が担当していたあの秘書、吐きましたよー。取引ルート」

山下は豆鉄砲を食らったような顔をしている。

「信憑性は?」

「吐いたのは僕が知っている非正規創作者ですから。百%間違いないかなと」

「で、誰だ?」

「トール」

山下はガタンと立ち上がった。

反応からしてどうやら当たりのようだ。

「ただ、『どこに居るかは社長しか知らない』との事でしたので、お知らせにきまーした」

「ご苦労」

火山は立ち上がって飛鳥を見た。

「飛鳥」

飛鳥はどこか楽しそうに返事をした。

「こいつの取り調べ、出来るな」

頷きもせずに、にこーと飛鳥は笑顔を返した。

「残りの取り調べは我が副隊長が引き継ぐ」

加藤は短く「はっ」と答えて敬礼した。

「隊長? トールの居所(いどころ)を聞けばいーんですよね?」

「そうだ。俺は本部に戻り隊を整える。場所が判明次第、出撃。お前は道中で合流しろ」

「はーい」

返事をして座る飛鳥に火山は封筒を渡した。

「短時間で終わらせろ。手間取るなら等級付けても構わん」

山下は短く悲鳴を上げた。

「りょーかーいでーす」

火山が取調室を出ていくのを笑顔で見送ると、飛鳥は山下に身体を向けて座った。

「さーてーと!」

飛鳥は手を組んでその上に顎を乗せた。

その様子が山下には薄気味悪く思え、後ずさろうとしたが、加藤に押さえられて強制的に座らされた。

「山下さん、だっけ? 僕と楽しいお話をしよーよ」

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