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リンドウは手を伸ばす  作者: 長坂青空 加良奈志翠 山葵大福
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第2話 その⑨

四人がそう話している間、プエラは自分が出来ることは何か、と思考を巡らせていた。

「(こういうときは、深呼吸……)」

深く息を吐き、隠世から教えてもらったことを思い返す。


プエラは隠世に指導を受けていた。今は気配の感知だ。

プエラはソファーに座って目をつぶり、隠世はプエラの真後ろに立っている。

「まずは空気の動きを感じろ。俺はどこにいる?」

「私の真後ろです」

「正解だ。十秒後、何処にいるか当ててみろ」

「はい」

隠世は足音なく右や左に動き、最終的に斜め左前に立った。そして、エアガンを取り出すとプエラに向けた。

「…………左側の斜め前。あと、もしかして何か向けてます、か……?」

「見てみろ」

プエラは目を開けて隠世の方を見た。

全て見事に当たっていることに安堵した。

「何で何か向けてるって分かった?」

プエラは感じたことを言語化してみる。

「えっと……隠世さんじゃない、物が動いた気がするんです。なんて言うのか……生命体と無機質の物が同時に動いておでこに風が当たったような気がして」

プエラに指導を始めてわずか2日足らずでそこまでモノにすると思っていなかった隠世は内心驚いた。

「家出して約半年、お前が誰かの庇護無しに生き残れた理由がそれだな」

プエラは混和しながらも首を傾げる。

「お前は気配察知能力が高い。だから今まで生きてこれた。……これなら今日からでも護身術に移行出来るな。あと、」

隠世はずいっとプエラと距離を詰める。初日では完全に恐怖で身体を震わせる距離だが、一向にその気を感じない。

「お前の男性恐怖症はもう治ってる」

「……えっ?」

「とういか、たぶん太った男が恐怖の対象だっただけで元々男性恐怖症じゃ無い。仮に男性恐怖症だったらこんな短時間で俺に慣れる筈が無い。恐怖のあまり、男=怖いと条件付けがされてたんだ」

「あ……」

「お前は勘違いしてただけだ。あとは自分に自信を持て。この俺が指導してるんだからな」

プエラの顔に歓喜が満ちる。

「はい!」


「(私が、今出来る事……)」

プエラは思考と視界を動かす。

「お、おい! お前らの上を出せ!」

それを邪魔したのは男の声と首に押し付けられるナイフだった。

ソウトリの集団が困惑している中、藤池と火山、飛鳥が出てくる。

「我々が聞こう。要求は何だ?」

火山が訊く。

「っ取引だ!」

「わー(ろく)でもない取引な予感ですねー。おそらく……」

「オレ様を見逃せ! それまでこいつは人質だ!」

「ほら、やっぱり」

火山は深々と溜息をついた。

「人質ごと撃て」

それを聞いて藤池は小さく息をのむ。

       ☓ ☓ ☓

幼馴染の陽の実家で、陽の両親が、ソウトリの武装集団に囲まれ、銃殺される。

陽がの前に出ないように必死に止める自分。

       ☓ ☓ ☓

「お待ち下さい火山隊長。あの者は男と関係無い者です。それを一緒に射殺するのは──」

考えるまでもなくそう口にしていた。

「関係無い。非正規創作者は等級関係なくいずれ処刑される。死ぬのが今か少し先になるだけだ」

「僕も隊長にさんせーでーす。どーせ死ぬんですからここで死なせてあげた方が本人の為では?」

男は自分が望んだ回答が返ってこないので明らかに苛立っている。

「何をグダグダと話している! こいつがどうなっても良いのか!?」

火山は藤池を一瞥したあと、右手を上げた。

赤い腕章をした銃専門隊が前に出てきた。

「合図したら人質ごと撃て」

「了解」

「お……おい! 冗談だろ?」

複数人から銃を向けられた男は狼狽えている。

「君より人質の子の方がれーせいーだよー? 今、永眠させてあげるから少し落ち着いて―」

プエラはソウトリと男の会話からついでに射殺されることを察した。

「(……ん? 隠世さん、何して、あ)」

視界の端で隠世がどこかを指していることに気がついた。

指した方向は陽がハンドサインを送った方向だ。

そこの五階辺りがキラキラと光っている。

光り方して誰かがこちらに合図を送っているのだと思った。

下ろしている右手を微かに動かす。隠世であればこれでわかってくれると知っている。

「どうやら、今からウチらがすることがわかったみたいやな」

手鏡で光を反射させていた西瓜は言った。

「ホント視力いいよな。いくつだよ」

電菊はそこらへんからお借りしてきたライフルのスコープを覗いて言った。

ちなみに、電菊の視力は2.0あるがさすがにこの距離は、何かしら道具がないと見えない。

「大丈夫だ、大丈夫」

そう、隠世が言ってくれている気がした。

「(私にできる事……)」

プエラは生物以外の気配を感じ取れるように神経を研ぎ澄ませる。

「っクソが! こんな所で死んでたまるか! SUNの誘拐も失敗した! あれが成功していればオレは大先生になれたのに! オレは、オレは、これ以上失敗する訳にはいかないんだ!」

ほぼ耳元で叫ばれたが、プエラは気を散らさない。

そんなことをすれば、死へ一直線だからだ。

「……やれ」

火山は再度右手を上げる。

しかし、それが男に当たることはなかった。

それよりも先に電菊が男の足スレスレを狙って発砲したからだ。

想定外の射撃に全員の注意が逸れる。ただプエラだけがその瞬間を待っていた。

男が弾に驚いて首からナイフが離れるのを見計らって、男の腕を掴んで背負い投げする。

「がぁっ!」

背負い投げと同時に電菊が銃を撃ち落とす。

「っ! 周囲を警戒しろ‼」

藤池は指示を出す。

対して火山は冷静に携帯していた拳銃をプエラに向ける。

「そこのお前、両手を挙げて投降しろ」

プエラはぴたりと動きを止めた。つうっと冷や汗が伝う。

プエラは何かが動く気配を感じて後ろに下がるのと同時に火山は引き金を引いていた。

後頭部を狙っていた軌道はズレてプエラの耳に当たる。

「ぅっ……っ!」

プエラは今まで感じたことがない痛みで(うずくま)る。

再度、火山がプエラを撃とうと構えると、手榴弾が投げ込まれた。

そこから白い煙が噴き出して一瞬で視界が奪われる。

視界ゼロの中で、感じ慣れた気配が近づいてきて、その気配に抱きかかえられる。

「よくやった」

「かく、よ……さん」

隠世は煙から抜け出し、陽と合流する。そのまま脱出路へ向かいながら共有する。

「撃たれた所はどこ」

「左耳耳輪。弾は貫通してるが痕は残るだろうな」

廃遊園地(ここ)から早く出て手当をしなきゃ」

二人は脱出路に急いだ。

日曜日の投稿は予定通り行います

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